第1022号 ウクライナ戦争と核兵器

2022年3月5日 (土) ─

 ロシアによるウクライナ侵略から1週間が経ちましたが、停戦の道筋は見えず、戦争は長期化の様相を呈しています。

◆外交交渉の失敗
 昨年末以降、急速にロシアによる軍事侵攻の危機がクローズアップされた感のあるウクライナ問題ですが、ロシアはすでに8年前にウクライナ領クリミア半島に侵攻して、紛争が始まっていました。国際社会はロシアを非難し、経済制裁を課したものの中途半端なものに留まっており、この時点で徹底的なロシア封じ込めの動きを作れなかったことや、独裁色を強めるプーチン政権の本質を見据えた外交にあたらなかったことが、結果としてロシアを思いあがらせてしまい、今回の全面侵略につながったと言えます。

 日本外交との関係で言えば、領土に対して強硬的な姿勢を取り続けるプーチン政権との北方領土返還交渉は、巨額の共同経済活動推進の合意等に留まり、具体的には何の進展も無いまま、手玉に取られていただけでした。

◆危険な核兵器共有論
 ロシアの暴走によって始まったウクライナ戦争を受けて、日本も一刻も早くアメリカと核兵器を共有することで、一体化した核防衛体制を整備すべきだという主張が湧き上がってきています。

 しかし、核兵器を共有するということは、その保管や運搬、ミサイルなどの攻撃手段を共有することにつながることは言うまでもありません。核兵器は自国内で防衛のために使用することが想定されておらず、敵国を壊滅させる目的を有するものである以上、その共有はわが国の専守防衛のあり方そのものを一変させ、一気に周辺国との緊張が高まる恐れがあります。

 しかも、圧倒的に片務的な関係にある日米関係の現状を考えると、共有とは名ばかりで、アメリカの指揮の下に核兵器を管理する体制になることは必然で、軍事的一体化により、紛争への対応や平和外交で日本独自の立場を貫くことは不可能になるでしょう。

 安倍政権下で成立した安保法制の本質は、アメリカ軍の指揮の下に自衛隊が一体化し、世界の紛争に派遣することを余儀なくされるところにあると考えていますが、核兵器共有論はまさに、その延長にあるものです。極めて危険な発想と言えるでしょう。

◆核兵器無き世界への決意を
 今、日本が為すべきは、核兵器武装ではなく、むしろ非核三原則の立場を堅持し、核の使用をちらつかせるロシアへの怒りと非難を世界的な世論へと高めていくことです。ロシアへのさらに強力な経済制裁で圧力をかけ、侵略や核の使用が国際社会での決定的な孤立と滅亡を招くことを意識させることが必要です。そして、サイバー攻撃への対応強化など、現実的な防衛の強化、難民受け入れや人道上の医療支援の充実など、独自の外交を展開すべきです。

 一方で、追い込まれた独裁者が自暴自棄となって核兵器を使用する可能性もあることを踏まえ、交渉のチャンネルを残し、停戦合意への支援を続けるという現実的対応も必要となるでしょう。非核三原則の立場を貫き、核兵器無き世界への決意を示しつつ、現実の危機に対応することは十分可能と考えます。

 

スタッフ日記 「興味あることを通して」

 私の興味のあることの一つに『防災』があります。日本は災害大国と言われていますが、皆さんは、約4年前の大阪府北部地震を覚えていますでしょうか。

 大阪出身の私は実際にこの地震を経験し、電車に閉じ込められたことで帰宅困難者になり、便利な都市が災害時には脆弱になることを実感しました。これは人生で一番怖い体験で、あの揺れを思い出すだけでも鳥肌が立ちます。

 この地震の影響で私は2時間ほど電車の中に閉じ込められました。国土交通省のデータでは、最も早い鉄道再開は地震発生から1.5時間後の午前9時半でした。早い復旧に重点をおくと、乗客を安全な所に誘導できる設備や乗客の安心を促せる声掛けが必要だと感じました。また、震災直後は携帯電話が使えず、友人や家族との連絡にも苦労したので、呆然と立っていることしか出来ませんでした。

 この経験から、自分だけではなく、都市で生活や活動する人々の意識や行動を変えない限り、真の防災に強いまちは実現できないと感じました。大切なのは、地域の避難経路・避難場所を把握している人、災害時でも助け合いの環境を作れる人をさらに増やしていくことだと思います。

 私は2年前から、日本で唯一防災を専門に扱う社会安全学部というところで学んでいます。危険地域にいる人の避難を確実にする方法、助け合いを維持するために必要なこと、いかに防災に興味を持ってもらえるかという点など、答えなきところに防災の面白み、困難さがあります。大学で学んだ知識をもとに、奈良県の地域性を活かした防災に強いまちづくりを考えていきたいです。  (マトリックス)

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