第1023号 原発事故 幻の遮水壁計画

2022年3月12日 (土) ─

 東日本大震災と福島第一原発事故から11年が過ぎました。しかし、今なお3万8千人を超える方が避難を余儀なくされ、原発廃炉作業がいつ終わるのかも見通しが立っていません。

◆なくならない汚染水
 現状、福島第一原発では汚染された建屋の地下に地下水が絶えず流入し続け、日々汚染水が発生しています。政府は建屋周辺を氷の地中壁、凍土壁で覆ったことによって、一時期までに比べれば汚染水の発生は減少したと説明していますが、根本的な解決には程遠い状態です。汚染水を処理した水を貯めたタンクは原発敷地内で増え続け、政府はやむなく海洋放出する方針を示していますが、漁業関係者の不安は解消されていません。

◆幻となった遮水壁計画
 汚染水の発生と海洋流出については、事故当初から長期的に大変な問題になると認識されていました。福島第一原発は山を切り開いて建設されており、地形上、大量の地下水が流入することは明らかで、それをシャットダウンしなければ絶えず汚染水が発生し、海に流れ込み続けることが想定されていたのです。

 私は原発事故直後に首相補佐官に任命され、地下水の流入と海洋への到達についてのデータを分析し、なんとしても汚染水の発生をいち早く止めなければならないと考えました。そして、そのためにはコンクリートの地中壁で建屋周辺の地下を覆い、物理的に完全に地下水の流入を止める必要があると主張したのです。

 これに対し、東京電力は技術面や資金調達の困難さを主張し、遮水壁計画に難色を示し、浄化装置による汚染水処理で対応しようとしていたのです。

 私は、土木屋としての知見から、技術的に遮水壁建設が可能であると確信しており、東電が債務超過を恐れて資金を出せないのであれば、一時的に国費投入を行い措置を講じて放射性物質の海への流出を止めるべきだと考えていました。しかし、当時の菅総理が退陣の意向を表明したことにより、政権の求心力は失われ、施策の実施が困難になっていきました。結果、東電や経産省の慎重な姿勢により計画の推進は中断され、間もなく私は首相補佐官を解任されました。

 その後は、後任責任者により遮水壁計画そのものがうやむやとなり、完全に遮水できない凍土壁計画へと変わってしまいました。いまだ汚染水問題が住民の皆さんを悩ませているのは、私を含め当時の政府の責任でもあり、悔しさとともに、申し訳なさも痛感しています。

◆事故の教訓を忘れず
 今、ウクライナ戦争では、ロシアによるチェルノブイリを始めとした原発への攻撃と占領などにより、再び原発事故が発生する可能性が生じています。原油高やロシアからの天然ガスなどの資源供給が途絶する可能性を受けて、原発を今後の中心的エネルギーとしてフル稼働させるべきだとする意見も出始めていますが、今一度、原発事故の惨禍を思い出し、冷静に対応することが必要です。

 事故から11年を迎えた今、当時の教訓を踏まえ、いまだ残る汚染水問題、そして原発の廃炉及び原発に依存しない社会の構築に、今後も全力で取り組んでいかなければならないと決意を新たにしています。

 

スタッフ日記 「ならメシ」

 奈良市が行っている「ならメシPROJECT2022」をご存知ですか?

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 私は、はぐくみセンター、奈良市役所へ2度行きました。午後5時すぎ、お腹がすいた頃に訪れると、奈良のすでに知っている飲食店や、名前は聞いたことがあるけれど今まで行けていかったお店、歴史あるお弁当・仕出し屋さんが、テーブルいっぱいに自慢の料理を並べていました。

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第1023号 原発事故 幻の遮水壁計画