第862号 ゴーン会長逮捕の深層とは

2018年11月24日 (土) ─

 19日、日産のゴーン会長が有価証券報告書の虚偽記載の容疑で逮捕されました。単純な、「カリスマ経営者による権力の濫用・不祥事」とは違った側面が、この事件の奥底にあるように感じます。

◆自動車業界にみる覇権争い
 自動車業界は激しい国際競争下で、各国の国策と一致した動きの下、グローバルな再編が続いてきました。そんな中、我が国を代表する自動車メーカーのトヨタは、米国でのリコール問題で矢面に立たされる窮地に陥ったことも記憶に残っている方も多いと思います。当時は穏健なオバマ政権であったにも拘らず、米国対多国籍自動車産業のバトルが激化したときでもありました。タカタのエアバッグ問題などもクローズアップされ、米国政府に起訴されるなど責任を追及されました。

 この7年間、我が国の自動車部品メーカー39社の関係者64人が、米国内刑務所に収監されるという事態が起こっています。この異常事態も、日米の自動車産業覇権戦争によるものであり、ファルクスワーゲンの排ガス規制逃れの摘発は、米独の覇権争いの一事象でもありました。米国は当時、日本の自動車産業に対しては、日本国内で行われていた価格調整を日本の当局である公正取引委員会が問題はないと結論づけていたにもかかわらず、「反トラスト法」の摘要を掲げて、企業社員を次々に刑務所に送り込んできたのです。そして、今回のゴーン氏の逮捕は、まさに日仏による覇権争いが激化した中での一コマではないかとも推察されます。

◆例を見ない日仏政府の対応
 日産の専務は、20日、管官房長官を訪ね、現状を報告したとされています。官房長官に民間企業の役員が自社の状況について説明に行くのは極めて異例なことであり、またローラン・ピック駐日フランス大使も同日、小菅の東京拘置所に出向き拘置中のフランス国籍を持つゴーン容疑者と接見しています。大使館は「フランス人が外国で逮捕された時は、保護の目的で領事か大使が面会するのが通例だ」と表明していますが、これも通常の対応とは言いがたいものです。巷間言われているように、ゴーン氏がフランス政府の意向を踏まえて、仏ルノーへと統合していくことに対して、日産側が激しく抵抗した結果の逮捕劇となれば、日米間の覇権争いと同様に、日仏間にも激烈な争いが今後展開される可能性があります。

◆グローバル資本主義の歪み
 今回の逮捕劇でも、役員報酬についての有価証券報告書の虚偽記載で刑事立件できるかどうかは現状極めて不透明でもあり、海外子会社の不動産利用に関しても不当使用を倫理的に指摘されても刑事告発に至るかどうかはまだわからないところです。役員報酬をごまかして脱税を行ったと立件できるのであれば、所得税法違反を適用するはずですが、ほとんどを国外で暮らすゴーン氏には困難であったろうと思われます。今後は、SAR(株価連動報酬)に関する違法行為が明らかになるかが鍵と言われています。

 東芝の不正問題の時には監査法人とは別の不正を指南する税務アドバイザーの存在が問題視されましたが、今後、この「日産事件」に関しても税務アドバイザーなる大手ファームが関与していた可能性もあり、グローバル資本主義による富の収奪が、極めて歪んだ形で行われようとしていたかが問われます。単なる、「堕したカリスマ」問題ではない深層に切り込んでいかなければならないと考えます。(了)

 

森ちゃん日記「全国初の市民参加型防災」
 11月18日、奈良県と京都府の県境に位置する大型商業施設イオンモール高の原で医療資格のない一般市民や消防団員が競技者となって、仮想の災害現場での医療活動について学び、的確な対処を競う市民メディカルラリー2018が全国初で開催されました。

 大規模災害時における救急・救命活動が、行政や専門家、医療従事者によってすぐさま広範囲で活動できるとは限りません。そんな中で、私たちがいまこの瞬間に災害と直面した時に“できること”を考え行動に移す、そんな選択肢が、地域住民の心の安心にも繋がる取組みだと感じ、消防団員の一員として私も参加してきました。

 災害によって直接的ではない災害関連死は、東日本大震災で3500名以上、熊本地震でも200名と多数発生したことからも、大型商業施設や、国内外からも多くの観光客が集積する観光地エリアでの災害対応というものが重要性を増しています。災害関連死は、防ぎえる災害という観点からも、医療は資格がないとできないという古い考えから、家庭や地域でできることを広く理解し、実践していくことが需要です。今回のメディカルラリーが全国へと発信していく災害に強いまち奈良の一歩となると感じています。

第862号 ゴーン会長逮捕の深層とは