第861号 総理の改憲戦略を探る

2018年11月17日 (土) ─

 臨時国会では外国人労働者拡大問題が大きな論点となり、与野党が厳しく対立していますが、一方で来年の参院選をにらんだ水面下の動きが始まっています。今回は総理の今後の政権戦略を考察します。

◆トーンダウンする改憲論議
 先月表明された消費税増税と、外国人労働者拡大問題が注目を集める今国会で、総理が今国会にも提出したいとしていた憲法改正案には表立った動きが見られません。逆に、自民党の下村博文憲法改正推進本部長が、衆議院憲法審査会の幹事を辞退する方針を固めたと報じられるなど、与党側からも性急な改憲論議を遠ざける動きが見られます。国民生活に直結する課題の前に、一見、憲法改正論議はトーンダウンしたかに見えます。

◆狙うは総裁任期延長か
 もちろん、安倍総理の悲願は憲法改正にあり、自らの任期中に何としてでも成し遂げたいという意思は変わっていないと思います。ただ、現実問題として今国会中に何の動きもなければ、来年は統一地方選、天皇陛下退位と即位、参院選と大きな行事が連続する中で、改憲発議のための時間の確保は厳しくなります。また、20年は東京オリンピックが開催され、21年は安倍総理の任期終了の年で、後継者争いが激化して政権が死に体となり、改憲どころでは無い事態が予想されます。

 そこで、私は、来年総理が衆参ダブル選挙に打って出て、勝利することによって政権基盤を盤石にし、自民党総裁としての任期を1年延長した上で改憲を実現させようとしているのではないかと思っています。86年、当時の中曽根総理は任期満了が近づく中、衆参ダブル選挙に踏み切り、圧勝をテコに自民党総裁任期の1年延長を勝ち取って、後継者指名の影響力を確保しました。安倍総理も、来年の選挙で勝利することで、総裁任期を22年にまで1年間延ばし、参院選や統一地方選の無い21年にじっくりと憲法改正を実現させ、同時に後継候補を決めるキングメーカーとして君臨しようと意図しているのではないかと想像します。

◆消費税増税凍結で解散か
 そして、総理が来年に衆参ダブル選挙を断行する場合、大義名分となるのは消費税増税の凍結だと見ています。先月の消費税増税明言以降、カードによるポイント還元などの的外れな影響緩和策が次々発表され、国民の増税への批判は高まっています。一方で、政府の説明は、「リーマン・ショックのようなことが無い限り」、消費税増税を実行するとの留保を付けています。米国の株価の過熱度は天井値に近く、世界的な株安が来年初から年央にかけて起きる可能性はあります。総理は、そのタイミングで突如消費税増税の凍結を表明し、その是非を争点として衆院を解散してダブル選挙に打って出ることではないかとの疑念がぬぐえません。国会召集も1月4日と囁かれ、それであれば参院とのダブル選挙が可能な日程になります。

 もしそうなれば、現時点で消費税問題に有力な対案を示せていない野党が惨敗するのは必至です。その為にも、消費増税ではない財源確保を含めた政策パッケージが必要です。持論の消費減税論も、その一環であり、こうした発信を続けて参ります。(了)

 

森ちゃん日記「観光地ならが誇るブランド」
 「奈良にうまいものなし」。その言葉の真意を観光業界の方に直接伺ってみたところ、ここ数年で全国から予約が殺到するような名店も県内に増えつつある、しかしSNSをはじめとした情報発信力が追い付いていない点を挙げていました。外国人観光客が大型バスでファストフード店やファミレスに駆けつけている光景もあるらしく、全国に誇る観光地としては100名以上を収容できる大型の飲食店が少ないことも指摘されていました。奈良県特産の定番のお土産がこれと言ってないことも、これからの課題であると伺いました。また、近鉄奈良駅周辺では、スマートフォン片手に食事場所を探す外国人観光客を多数目にすることからも、飲食業界においての深夜営業への促進や、観光客が求める観光地への変革が求められます。

 奈良を訪れ、見て、食べて、買ってもらう。既存の考えに捉われることのない、新たな観光地として情報を発信する力の必要性を感じます。奈良は日本の食文化発祥の地であり、お茶や清酒、饅頭などの発祥の地としても知られています。歴史に裏付けられ受け継がれてきた伝統の味は、全国の観光地でも創り上げる事はできません。どこへ行っても奈良の名物はこれと言える、やまとブランドが日本の食のルーツとして世界へと発信することが求められています。

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