第860号 財政再建に増税は必要なし

2018年11月10日 (土) ─

 9日、東京で私が定期的に開催している朝食勉強会に旧知の間柄である飯田泰之明治大学教授を招き、日本の財政と経済について講演して頂きました。

◆増税で財政再建は不可能
 飯田教授の講演では次のような話がありました。

 財政再建の方法としては、名目経済成長、歳出削減、増税の3つしかありません。そして現在、政府は社会保障の財源確保と財政再建の方策として、消費税を始めとした増税に主眼を置いています。

 しかし、増税路線は経済成長率を低下させるばかりか、景気の悪化によって財政再建の政治的頓挫を招き、結局失敗に終わるのが世界の常識であり、アルゼンチンやギリシャの破綻もまさにこの例でありました、そんな中、増税しながら財政再建と言っているのは世界で日本だけであります。逆に、1%の名目経済成長は1.1%の税収増をもたらし、緩やかな経済成長を長期間続けることで、財政再建は十分可能だとのことでした。

これは増税によって財政再建は成し得ず、短期的な税収増のために無理な増税路線を採るならば、かえって財政破たんを招くという私の持論とも合致するものです。経済成長を図りつつインフラ整備など必要な投資は行い、長期的に財政を安定させることが必要だと改めて確信しました。

◆消費増税の悪影響
 さらに、経済政策で強調されていたのは、過去の消費増税による悪影響です。消費税が導入された89年、5%に増税された97年、8%に増税された14年ともに、増税実施とともに消費支出は低迷し、特に14年は低迷が顕著で長期化しました。消費増税により3%の実質消費の減少が生じたとのことです。消費増税により、3%も消費が減少するというのは非常に深刻な影響です。また、増税による消費の停滞は長期にわたって継続するため、必然的に景気の後退を招きます。この点においても、消費増税こそ経済にとって最大のマイナス要因であるという私の持論に合致する説明でもありました。

◆代替財源の検討
 消費増税を行わない場合の代替財源にまで踏み込まれ、相続税や固定資産税の改正を指摘されました。相続税の課税強化によって、逆に生前に資産を使おうというインセンティブが働き、消費を活性化させる可能性があるということです。また、都市部の土地の固定資産税を上げることで、土地の価格上昇によって利益を得ている資産家に一定の負担を求めることは公正である旨も述べられました。

これらについては、私には、先祖から受け継いだ資産に過度の課税を行うことで、農村のコミュニティなどの持つ歴史的価値が崩れてしまうのではないかとの疑問があり、少し議論のあるところではあり、今後の検討課題でもあると感じています。

 今回の勉強会は、今後の政治活動と、経済政策を練り込むために非常に示唆に富んだものでした。

 安部総理の来年10月からの消費増税明言以来、私が主張してきた消費税減税の必要性について、各種報道、雑誌で取り上げて頂ける機会が増えています。皆さまの関心が高い増税の是非と経済政策について、今後も更にブラッシュアップして提示して参ります。(了)

 

森ちゃん日記「インバウンドから見える地域経済」
 奈良県の宿泊統計調査によると、昨年の県内宿泊者数は280万2060人に上り、前年比で7万5770人増加したことがわかりました。これは、平城遷都1300年祭が開催された年に次ぐ過去二番目の多さで、ここ数年での外国人観光客の急増から、県内宿泊施設のホテルを中心とした新規開業が進んだことが要因とされています。調査の対象は県内477のホテル、旅館、簡易宿泊所で、その内訳に民泊は含まれていないことから実際の宿泊者数はさらに増えている試算です。

 宿泊者数の増減を主要観光地別に見ると奈良市は8.9%増ですが、明日香・橿原で1.6%減、吉野地区では28.6%減となっており、今後、奈良市へ一極集中する観光客の動向を、県全体へと波及させていくためにも、季節ごとに変わる地域の魅力を年間通じて発信する工夫や、交通アクセスを含めた広域的な観光政策が必要とされます。

 また、過疎地では事業主の高齢化に伴う休廃業や経営の悪化が、簡易宿泊施設や旅館での宿泊数減少に繋がっていることからも、既存の団体客向けサービスから個人客向けへのシフトを進めることと、ネット文化が中心とされる外国人観光客向けサービスの向上を、新しい視点から強化していくことが求められます。

第860号 財政再建に増税は必要なし