第851号 集中型社会の脆弱性 

2018年9月8日 (土) ─

 台風21号、北海道地震と災害が相次ぎ、甚大な被害が生じています。被害にあわれた方に心よりお見舞い申し上げるとともに、一日も早い復旧に向けて私も微力ながら力を尽くしたいと思います。

◆集中型システムが生んだ大規模停電 
 北海道地震では、道内全ての火力発電所が稼働を停止し、295万戸に及ぶ大規模停電が発生しました。政府の説明では、道内の電力完全復旧には1週間以上かかるとされています。大規模停電の原因は、道内最大の苫東厚真火力発電所が地震で損傷して稼働停止し、需給バランスが崩れて、他の発電所が連鎖的に稼働を停止したところにあります。 

 今回、東日本大震災でも露呈された、大規模・集中型の電力供給システムの脆弱性が改めて明らかになった形です。東日本大震災から7年たった今、当時の教訓が果たして活かされたのか改めて反省する必要があります。 

 北海道については、北海道と本州をつなぐ送電線の容量が限られていること、電力ネットワークが網状になっていないこと等の課題が従来から指摘されてきました。東日本大震災後に当時の民主党でも提言してきた通り、電力政策については、特定の発電所に機能を集中させて送電する「集中」型のみのインフラから再生可能エネルギー等を利用した小規模な発電と送電網を地域ごとに整備していく「分散」型のインフラ整備が必要です。

◆原発と自然災害 
 北海道地震では、停電により、泊原発が一時、外部電源を喪失しました。その間、非常用電源で使用済み核燃料の冷却が行われました。仮に想定通りバックアップシステムが稼働したとしても、今後に向けて本当に課題がないのか、改めて、地震や自然災害に対する原発の安全性が検証されるべきです。 

 また、原発に関しては、2日の報道で、電力各社が核燃料のリサイクル事業の費用を計上せず、事実上断念していたと伝えられています。改めて将来の原発の姿についても考えなければならない時だと思います。

◆空港のリスク管理 
 今回の災害では、空港の脆弱性も浮き彫りになりました。関空は、台風により滑走路や施設が水没し、全面復旧には相当の時間を要する見込みです。これまでも、土質の専門家の間では、関空の地盤沈下に関する懸念が示され、水害に弱いと指摘されてきたところであり、愛知のセントレア空港など他の海上空港も同様のリスクへの対策を検証すべきです。 

 北海道では震源地に近い新千歳空港が損傷を受け、閉鎖を余儀なくされました。北海道の空港利用は新千歳に集中しており、航空インフラは麻痺状態です。空港は単なる交通インフラを超えて、増える訪日観光客や物流にとって欠かせない社会インフラになっています。私も取り組んできた問題ですが、北海道では、7つの空港を一括して民営化し、それぞれの空港がネットワークを形成して運営を図る事業が進展しています。 

 一つの空港に機能を集約させるのではなく、災害の際に各空港が便を融通し合うなどのリスク管理が期待できる運営体制を各地域で整備すべきです。空港もまた、「分散」型の思考を活かしたインフラ整備が必要だと思います。(了)

 

森ちゃん日記「自主防災の地域格差をなくせ」 
 4日に近畿圏を襲った台風21号、そして、6日未明には北海道厚真町を震源とする震度7の地震があり、私たちはどのように災害に強いまちづくりに努めていくべきなのか、日常の中で災害に対して向き合っていくべきなのか、あらためて天災がすぐ目の前にあるものとして日々の暮らしに大きな課題を投げかけています。 

 奈良県内においては今回の台風による甚大な被害はなかったものの、奈良市内の公立小学校では前日より避難所が開設され、高齢者を中心に自主避難が行われました。市役所職員と自治会とが連携し、情報収集の拠点を早期に設置することで、事前の安全確保が優先されました。地域によっては、一人暮らしの高齢世帯へ自治会から直接連絡をとり、隣近所の声かけから避難を決めた方もいたそうです。こうした地域では、日頃の自治会活動が活発であることが挙げられます。住み慣れた地域でも、大雨や地震の際にどこに危険が潜んでいるのか、また、どこに避難をすれば良いのか、こうした当たり前のように思えることを広く周知し、行動に移してもらうことは簡単ではありません。 

 日頃からできることをやるという住民意識を持てるかどうか、一人一人の声かけが時として命を救う防災に強い地域の第一歩だと感じます。

第851号 集中型社会の脆弱性