第843号 豪雨水害 問われる防災

2018年7月14日 (土) ─

 全国を断続的に襲った豪雨による被害は拡大を続けており、多数の犠牲者が出る平成最大の豪雨災害となりました。6月には大阪で地震が発生するなど、自然災害が立て続けに発生する中、改めて防災のあり方が問われています。

◆「想定外」は通用しない
 今回の水害に対しては、大雨の被害が生じつつある中、安倍総理も出席して自民党の宴会が開かれていたことや、政府対策本部の設置が遅れたことに対し、対策が後手に回ったという批判が出ています。

 事前に大雨が予想されていたにもかかわらず、政府には、「たかが雨」という甘い見通しがあったことは否めません。しかし、気候変動の影響から、昨年の九州北部豪雨など、年々豪雨災害の被害は拡大しており、もはや水害について「想定外」の釈明は通用しない状況だと思います。

◆防災のあり方

 豪雨災害を受けて、河川整備など、大規模公共事業のあり方も問い直されています。かつて民主党は「コンクリートから人へ」というキャッチフレーズを掲げました。単なる利益誘導に過ぎない無駄な公共事業を削減するという意味では、その方針は決して間違ってはいないと思いますが、言葉が一人歩きして、治水事業などを全く否定するような印象を与えてしまったきらいがあると思います。

 私は、従来の自民党型のハコモノ公共事業は否定しつつも、客観的な災害予測に基づいた適切な防災事業については、厳格な財政規律には必ずしも捉われずに推進していくべきだと思います。
そして、国の防災事業の中身も、ダムや堤防といった人工物の整備だけではなく、山の保水力を高めるための植林や、気候変動を抑えるための温室効果ガス削減などの、環境政策と一体化し、長期的な視点を持った防災を進める必要があると思います。

◆ソフト面の対策も充実を
 そして、防災は自治体や地域社会における対策も重要です。

 自然災害の全てを未然に防止することは不可能な以上、地域に出来ることは、防災のソフト面で力を入れていくことです。例えば災害危険地帯を示すハザードマップを、これまで想定外だった雨量を基準に新たな基準で作成しなおし、それぞれの地域住民に配布することで危険性の周知を図ることや、避難指示、避難勧告を出す基準を緩和したり、タイミングを前倒しすることなどが考えられます。

 また、地域における防災への関心を高めるために、自治会で災害を想定した連絡網を整備することや、小中学校の教育に地域防災の授業を取り入れることも考えられます。

 今回の豪雨災害では奈良県においても行方不明者が出ています。平成23年には県南地域で台風による甚大な水害も発生しています。奈良市や生駒市においても、山肌を切り崩して開発された新興住宅地が多く、場所によっては豪雨による土砂崩れの危険性も考えられ、防災の不断の見直し・再構築は必要不可欠です。私も、元国土交通大臣として、また、地域に生きる者として、国と地方における防災のあり方について引き続き提言を行って参ります。(了)

 

森ちゃん日記「広域防災視点を」
 西日本で甚大な被害をもたらした豪雨災害は、京都や大阪でも48時間で降った雨量が観測史上最大となり、県内でも吉野郡で1時間に100ミリを超える猛烈な雨を記録しました。大和郡山在住の男性が田んぼの様子を見に出掛けたまま行方不明となり、私も地元消防団の一員として捜索を行いましたがいまだ発見に至っておらず、一日も早く日常を取り戻せるよう国、県による復興への道筋と、今後災害への意識が個人レベルで浸透していくこと、隣接する地方自治体との連携を伴った広域防災対策の必要性を強く感じております。

 日常で私達が災害に対しどう意識をしているかが問われる今日、緊急のエリアメールやハザードマップでの備えだけでは不十分だと痛感しています。特に、今まで危険な地域だと認識されてこなかった用水路や小川付近での洪水浸水対策は、河川の本流と比較して考慮されてこなかった一面があり、ハザードマップの見直しも含めた検討が必要です。また、普段住んでいる土地とは違う地域で災害に遭遇した場合の対策など、観光地奈良として独自の対策も必要です。しかし、個人の災害意識が最も重要であることには間違いなく、地域の中で隣近所への声かけ、高齢者世帯の把握など、地域の繋がりを保つ広域的な街づくりが求められます。

第843号 豪雨水害 問われる防災