第840号 有権者欺く参院選挙改革

2018年6月23日 (土) ─

 14日、自民党は参議院議員の定数を6増やし、比例代表選挙の候補者に「特定枠」を設けることを軸とする公職選挙法の改正案を国会提出しました。

◆選挙法改正急ぐ「事情」
 与党は当初6月20日に会期末を迎える予定だった通常国会を7月22日まで延長することを決定しました。表向きは、働き方改革法案やIR、通称カジノ法案を確実に成立させるためとの説明がなされています。しかし、私は、自民党にとって今国会で最も優先的に成立させる必要があり、会期の大幅延長の決め手となったのは参院選挙改革案であると考えています。

 自民党は参院でも安定多数の議席を有していますが、現役議員の抱える「お家事情」は複雑です。来年夏に改選される参院議員は、第2次安倍政権発足間もない2013年の自民党が圧勝した選挙で選ばれた議員であり、2016年の前回参院選では野党が善戦したことを考えると、自民党が今回も勝利できる保障はありません。そして、一票の格差是正のため、「鳥取・島根」と「徳島・高知」は一つの選挙区として選挙が行われることになり、前回これら全ての県で議席を得た自民党議員も、どちらかが選挙区を譲らなければならない状況です。

 こうした複雑な選挙事情を背景にして出てきたのが、今回の参院選改革自民党案です。定数を6増やして現有議席の維持を図り、そのうち4を比例代表に充て、さらに現在は比例候補者個人への得票数によって順番に当選を決めているのを、党が自由に順位を決めることのできる「特定枠」を導入することによって、選挙区を譲る候補者の比例優遇が可能になります。自民党としては参院選をちょうど1年後、そして総裁選を秋に控え、選挙調整は党内の重要関心事で、今まさに何としても法案を成立させる必要があるのです。

◆有権者欺く選挙改革は廃案に
 このように、今回の参院選改革案は、自民党の党内事情による選挙制度の私物化の様相を呈しています。また、内容も到底正当性を認めることは出来ません。

 国会議員の定数に関して、安倍総理は野党時代の2012年に、当時の野田総理と衆院の議員定数削減を約束し、不十分ながらも衆院では10人の定数減が行われました。その本質が身を切る改革にある以上、参院が今、定数を増加させる必要性はありません。

 また、個人の得票数の多い順から当選を決める参院の現在の比例選出の仕組みは、多数代表制という民主主義の基本に沿うものであり、有権者にとって不透明な党内部の意思決定により比例順位が決定され、事実上当選者が決まってしまう制度を取り入れることには慎重であるべきだと考えます。

 さらに、合区の導入と予想される今後の拡大は、一票の格差是正にとどまらず、都道府県制を採る我が国で、国政における地域の代表をどう捉えるかという本質的な問いを投げかけており、憲法の文脈でも議論されるべきです。

 自民党も憲法改正案で合区の解消を掲げておきながら、本質的な議論から逃げ、当座の党内事情の解決に都合の良い選挙改革案を短期の審議で強引に成立させようとするのは、有権者への大きな欺瞞と考えています。身内の都合で私物化された選挙改革案は絶対に許さないとの世論を広く喚起して参ります。(了)

 

森ちゃん日記「SNSによる災害対策から」
 18日早朝に発生した大阪北部を中心とする地震は、通勤・通学時間を直撃しました。県外就業率が高い奈良県にとって、交通アクセスが遮断され駅が人で埋め尽くされる光景は、大都市圏での災害対策に新たな課題を突き付けられています。

 奈良県庁では7:58災害対策本部が設置され、被害状況の情報収集に追われました。県内の被害は軽傷が4名、建物の一部損壊が3棟、エレベーター閉じ込め7事案、文化財被害3件などが報告されました。

 特に県内には歴史的文化財が多く点在しており、日常的に多くの観光客が来県されます。そうした中で観光客の視点から全国初の外国人専用の避難所として開設された「猿沢イン」などの防災対策をはじめ、観光エリアでの災害対策の重要性を感じます。

 特に今回、情報発信の場で大きな役割を果たしたのがSNSです。大阪では、災害時緊急の無料wi-fiが開設され、避難方法や学校の休校を始め、あらゆる緊急事態速報が発信されました。しかし、誤った情報も拡散された事例もあり、緊急時における情報のあり方について行政を中心とした情報発信力が問われます。今後、災害時における防災拠点に「駅」がどのような役割を担うことができるか、隣接する商業施設のあり方も含めた新たな枠組みによる街づくりが必要だと考えます。

第840号 有権者欺く参院選挙改革