第764号 予断許さぬ日ロ交渉

2016年11月19日 (土) ─

 アメリカ大統領選でトランプ氏が当選したことは、日ロ関係にも少なからぬ影響を与えています。

◆米露関係の変化
 まず、大きな変化が生じているのがアメリカとロシアの関係です。 ウクライナやシリアでの紛争問題をめぐり、オバマ政権がEUと共にロシアでの経済制裁を強化するなど、米ロはここ数年難しい関係にありました。

 その結果、ロシア経済は大変厳しい状況へと追い込まれましたが、この状況を一変させたのが、トランプ氏当選です。

 トランプ氏は選挙中から、プーチン大統領を持ち上げ、ロシアとの関係改善を口にしていました。当選後は、早速プーチン大統領と電話会談を行い、米ロ関係の改善を図ることで一致したと報道されています。

 この一連の動きを受け、米ロ関係は好転が予想されています。

◆総理の解散戦略に影響か
 一方、日ロ関係での最大の課題は北方領土問題です。

 ロシアが、経済協力の交渉なしに領土問題の進展は困難、と考えている可能性が高い以上、我々にとって日ロ経済協力は重要なカギとなるはずでした。

 ところが15日、その日ロ経済協力の対日窓口であったロシアの経済発展大臣が、ワイロを受け取った容疑で捜査当局に拘束され、表舞台から姿を消しました。

 来月には日ロ首脳会談が予定されています。まさにその直前に、こうしたことが起きた背景には、ロシアの対日交渉に対する温度感の変化があるといっても過言ではありません。

 米ロ関係が好転し、経済制裁の緩和の可能性も見えてきた以上、領土問題を切り札に日本からの経済協力を取りつける必要性が小さくなった、とロシアが考えるのは自然です。

 元々、ロシア側の示していた譲歩のハードルが高いことも考え合わせると、今回の首脳会談での北方領土問題の交渉は相当に厳しいものとなると考えられます。

 この状況は国内政局にも影響を与えています。

 日ロ首脳会談で北方領土問題が進展すれば、安倍総理はそれを「成果」として示し、年明け早々に衆議院を解散し、総選挙に打って出ようとしていたと思われます。

 しかし、その「成果」が手に入らなければ、総理の描いた「解散シナリオ」にも変化が起こることは当然の流れです。

◆4島すべての返還に向けて
 ロシアは今後も、経済協力を見返りに様々な揺さぶりをかけて来ると見られます。しかし、我々は、相手のペースにひきこまれないことが肝要です。

 私は北方対策担当大臣時代の視察で、洋上から島を眺めるだけではなく、元島民の方々や、関係者の皆さんの返還に向けた思いを直接伺ってきました。自分のふるさとに足を踏み入れることが許されない、先祖の墓参りにすら行けない、という悲痛な気持ちは察するに余りあります。

 現在、原則である4島一括返還論の他にも、2島先行返還論など様々な案が出ていますが、最終的には4島すべての返還がなされることを大前提に、国会審議や、水面下での動きも含めて引き続き取り組んで参ります。(了)

 

スタッフ日記「逃げるは恥だが役に立つ」
 「逃げるは恥だが役に立つ」というドラマがヒットしています。

 新垣結衣さん演じる少々こざかしい主人公が、ひょんなことから星野源さん演じる超草食系の男性と契約結婚を始める、というラブコメディですが、主演2人のかわいらしさとドキドキ感満載の飽きさせないストーリー展開のおかげで、初回から視聴率が上がり続けています。

 聞きなれないタイトルは、ハンガリーのことわざ「Szégyena futás de hasznos」の日本語訳で、「無理に前に進むより、時に逃げたほうが良い結果を生む。大事なのは生きてゆくこと。自分の戦う場所を選べ」という意味なのだそうです。

 ところで最近、福島から避難してきたお子さんが学校でいじめにあっていたニュースが話題になっています。幸い彼は生きることを選択してくれましたが、いじめで子どもが命を絶つケースは少なくありません。

 もし今つらい思いをしているお子さんたちがいたら、この「逃げるは恥だが役に立つ」という言葉をぜひ覚えておいて欲しいと思います。

 「いじめられている」と誰かに打ち明けることや、学校を休んでしまうことはとても勇気のいることです。場合によっては恥ずかしく思ったり、「まわりに迷惑をかけてしまう」と遠慮する人もいるかもしれません。

 でも大切なのは自分が生き延びることです。すぐに状況が改善したり、必ずよいことがあるとは限りませんが、とにかくどんな手を使ってでも生きて、いつか自分が堂々と戦える場所を見つけてもらいたいと心から願います。(シズ)

第764号 予断許さぬ日ロ交渉