第763号 トランプショック

2016年11月12日 (土) ─

 現地時間8日、アメリカ大統領選挙の投票が行われ、ドナルド・トランプ氏が当選しました。

◆格差が逆転勝利の背景に
 アメリカは世界最大の経済大国と言われていますが、巨万の富を得ている富裕層はごくわずかで、国民の実に7人に1人は貧困層です。

 こうした状況を「富の偏在」と呼びますが、貧困層が年々増加していることを考えると、富の偏在は確実に進行しているといえます。

 また、富裕層と貧困層の格差は「二極化」と呼んでもよいほど拡大しており、中間層の多くも将来に不安を抱えています。

 立候補時点では泡沫候補と見られていたトランプ氏が、共和党の大統領候補となり、世論調査で常に民主党のヒラリー・クリントン候補に支持率でリードされながらも、最終的に勝利した背景には、こうした不満や不安がありました。

 急進的な改革を主張するトランプ氏は、社会に対する不満を抱え、積極的な「変化」を求める有権者の支持を集めました。多くのメディアの事前調査と選挙の結果が食い違ってしまったのは、普段であれば投票を棄権していた人が、実際に投票所に足を運んだからだと考えられています。

 トランプ氏は勝利演説でこの動きを「ムーブメント」と表現しましたが、同じように社会の疲弊を背景にした逆転現象はEU離脱を問うイギリスの国民投票でも見られました。

◆日米関係への影響
 トランプ大統領の誕生で、今後の日米関係も大きく変わるかもしれません。

 TPPは、トランプ氏が強硬に反対しています。日本では、承認法案が衆議院を通過し、審議はこれから参議院に移りますが、現状と今後の見通しを踏まえた慎重な姿勢で臨まなくてはなりません。

 また、安全保障については、トランプ氏が在日米軍に対する我が国の負担増を主張しており、難しい対応が迫られる可能性があります。

 加えて、万が一、アメリカの政治が混乱するようなことがあれば、世界のパワーバランスが崩れ、中国、ロシアの影響力が拡大することも考えられます。

 トランプショックにより世界が不透明感を増す中で、日本としては状況を冷静に分析した上で、的確な対応を取ることが求められます。
 
◆分断ではなく共生の政治を
 アメリカに比べると小さいとはいえ、我が国においても富の偏在と経済格差は年々進行しつつあります。

 生活保護の受給世帯は過去最高を更新し続けており、年金の生活最低保証機能も不十分なままです。

 また、非正規労働者の低賃金の問題、そして長時間労働による過労死や自殺の問題についても解決の糸口が見えません。

 格差の拡大は、社会の分断へとつながります。こうした問題の一つひとつに真正面から向き合うことが、「格差」の存在を背景とするトランプショック後の政治に求められています。

 私たち民進党は「共生」を結党の理念として掲げています。国民が格差により分断されることのない「共生社会」の実現を目指し、政策を練り上げて参ります。(了)

 

スタッフ日記「私にとっての生涯の一冊」
 先日新聞に「生涯の一冊」というコーナーがあり、様々な本が取り上げられていました。

 私にとっての「生涯の一冊」を挙げるとすれば、スタインベックの「怒りの葡萄」です。高校生の頃、縁側に寝そべって夢中で読んだ記憶があります。

 舞台は1930年代のアメリカ、大恐慌と異常気象で家や畑を失った農民のうちの一人とその家族が主人公の物語です。一家は職と夢を求めてオクラホマからカリフォルニアに移住しますが、そこでも過酷な運命と厳しい現実に振り回されるのでした。

 激動の中、バラバラになりそうな家族を「家族さえ一緒なら、苦難も乗り越えられる」と必死につなぎとめるお母さんの姿に私は心を打たれ、また同時に、貧しくも懸命に生きようとする人たちを苦しめる社会のあり方に怒りを覚えたものでした。

 雑誌の記者だったスタインベックは、そうした社会の状況も織り込みながら、丁寧に家族の姿を描きました。全米では「風と共に去りぬ」の次に売れたと言われているそうですが、作品に対する評価は賛否が分かれます。でも、書かれてから90年後の今も胸に迫る作品だと私は思います。

 アメリカではトランプ大統領が誕生しました。これまでは私生活や過激な発言がよく取り上げられてきましたが、今後はたくさんの人々の暮らしを預かることになります。

 1930年代とはずいぶん状況が違いますが、いつの日も社会に翻弄されるのは名もなき人たちです。そんなことを考えながら、これからのアメリカがどうなってゆくのか注目していきたいと思います。(チュウ)

第763号 トランプショック