第765号 離婚と親子の関係

2016年11月26日 (土) ─

 現在、通称「親子断絶防止法案」の国会提出を目指し、活動している超党派の議員連盟があります。

 私はその活動に関与していませんが、「離婚後の親と子の関係」というのは、大変重要な問いであると考えています。

◆議員立法の動きの背景
 この法案の目的は、両親が離婚などで別居していても、子どもが、離れて暮らす親と面会交流の機会を持てるようにすることです。

 現在、国際結婚をした夫婦の離婚については、我が国も批准している「ハーグ条約」で、子どもを一方の国へ連れ去ることを防ぎ、面会の機会を確保するよう各国への要請がなされています。

 一方、国内では、離婚などで子どもと離れて暮らす親が、裁判所に子どもとの面会を求めて調停を申し立てるケースが10年で約2.5倍に増加しています。

 また、離婚協議で親子の面会交流等の取り決めが行われるのは全体の6割ほどです。 つまり、離婚などで一度離れてしまうと会う機会をなかなか持てない親子は少なくないのです。

 法案に賛成する方々は、面会交流によって子どもが両方の親からの愛情を実感できれば、人格形成や成長にプラスになるなどの理由から、機会の確保を求めています。
 
◆当事者の声を尊重し議論を
 一方、当事者である親の方々から「慎重に考えるべき」という声もあがっています。

 たとえば、母親が夫のDVのために離婚を選んだ場合、父親との面会交流には精神的苦痛や危険を伴うことが考えられます。さらに、そのDVが子どもへの虐待も伴っていたとしたら、面会が子どものためにならないことは明らかです。

 法案では、DVや児童虐待のなどの事情がある場合には「特別の配慮」がなされなければならないとしています。

 しかし、具体性のない「特別の配慮」という言葉だけで、怖い思いをされた方の不安が消えるはずはありません。

 また、それぞれに事情が異なるにもかかわらず、一律に面会交流を促すことの良し悪しは慎重に議論されなければならないポイントです。

◆親子を社会が支える必要
 私自身、6人の子どもを育てた親の立場で実感するのは、子どもの幸せを願わない親はいないということです。

 したがって、慎重派の方々も、子どものためになると思えば、面会交流を必ずしも否定するものではないと思います。

 現在、こうした親子を支援するため、相談に乗ったり、面会時に付き添いをしてくれる「家族問題情報センター」などの機関がありますが、数が少なく、1回数万円の費用がかかると言われています。

 国としてまず取り組むべきは、そうした専門家よる支援を少ない負担で受けられるような体制づくりです。

 何の対策もなく、面会交流を当事者に義務付けるだけでは、ただの負担の押し付けにもなりかねません。

 親と子を社会が支える国を作ることは、私の政治理念の出発点であり、今もその思いは変わりません。これからもしっかり向き合って参ります。(了)

 

スタッフ日記「有り難いこと」
 「ありがたい」とは、人への感謝を表す言葉ですが、もともとの語源は「有り難い」で、有ることが難しい、めったにないこと、という意味だそうです。

 人間、めったにないことにでくわすと、喜びや感謝を覚えるところから、人への感謝の言葉へと変わっていったのだと思われます。

 こうした心理を刺激するのが、「何年に1回」「何十年ぶりの~」という枕詞ではないでしょうか。

 最近では11月14日のスーパームーン騒動がありました。 軌道の関係でいつもよりも満月が14%も大きく見えるということで、天気予報でも取り上げられていましたが、ふだん見慣れているお月様でも「月が68年ぶりに地球に最接近!」と言われると、「有り難さ」を感じて見てみたくなるのでしょう。

 その他、オリンピックやワールドカップの盛り上がりも4年に1回の「有難さ」のたまものかもしれません。

 また、古寺などで開催される「33年ぶりに秘仏公開!」といった行事には、拝観者が殺到しますが、めったに見られないものを見るのは「有り難や、有り難や」ということなのでしょう。

 「有り難いこと」に出会える確率は、年齢とともに低くなっていきます。自分の寿命から逆算して次に見るのは難しいなと気づくと、見てみたい気持ちは高まります。

 私は子どもの頃、ハレーすい星を見逃したので、次は見てみたいと思っています。ただ、76年に1回しか地球にやってこないので、前回の1986年から数えると、次回は2061年。実に45年後です。非常に「有り難い」すい星なので、見られるかどうかは微妙なところです。(アタリ)

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