第621号 「安倍流平和主義」を危ぶむ 

2014年1月11日 (土) ─

 経済政策で評価を得てきた安倍政権も2年目を迎え、参院選大勝による「ねじれ」解消後、巨大与党による専横的な政権運営や、保守色の強い「安倍カラー」の政策が目立つようになってきました。

◆南スーダンPKOの弾薬譲渡 
 特定秘密保護法案の強行採決で幕を閉じた先の臨時国会後の先月23日、南スーダンで行われているPKO(国連平和維持活動)で、自衛隊の弾薬1万発が、国連を通じて韓国軍に譲渡されました。 
政府の説明は、①弾薬の譲渡は、PKO法25条に定められた「物資協力」にあたる、②韓国軍280人と1万5000人の避難民が、数千人規模の武装した暴徒に囲まれ、「緊急の必要性・人道性が極めて高い」ことから、武器輸出を制限する「武器輸出三原則」の例外にあたる、というものです。 

 しかし、政府は、1991年のPKO法の国会審議で、「物資協力」に、「(武器や弾薬は)含まれていない」と答弁しており、今回の弾薬譲渡は、従来の法的枠組みを超えるものです。また、「緊急の必要性」についても、韓国国防省報道官が「必要になる場合に備えて予備的に借りたものだ。(銃弾は)不足していない」と述べるなど、日韓での食い違いが生じています。 

 緊急性・人道性があったにせよ、政府の説明は、疑問点が多く不十分です。個別的事情による「例外」でも、それは先例としてルール化されていきます。安倍首相は、「積極的平和主義にのっとっておこなった」と述べていますが、「積極的平和主義」の名のもとに、十分な説明なく、なし崩し的に、これまでの日本の平和主義を変容させることは許されるものではありません。国会での政府のしっかりとした説明を求めます。

◆靖国参拝と米国の「失望」 
 政権発足1年の先月26日、安倍首相が靖国神社に参拝しました。最大の問題は、中韓の反発のみならず、米国が「日本の指導者が近隣諸国との緊張を悪化させるような行動をとったことに失望している」と、異例の声明を発表したことです。 

 米国は、ケリー国務長官とヘーゲル国防長官が昨年10月に来日した際、靖国ではなく、身元不明の戦没者らの遺骨を納めた千鳥ヶ淵戦没者墓苑で献花するなど、日本が中韓との緊張を高めることを懸念するメッセージを発していました。今回の声明は、それらの働きかけにも関わらず、参拝が行われたことへの失望と解釈できます。 

 日中間では、尖閣問題や防空識別圏の設定等で緊張が高まっており、日本の領土・領海を守るためには、米国との連携は欠かせません。今回の安倍首相の決断で、日本が外交戦略上、失ったものは極めて大きいと言えます。 

 安倍首相は、「再び戦争の戦禍に人々が苦しむことの無い時代を創るとの決意を伝えるため」に参拝したと説明しています。しかし、その決意とは裏腹に、現実には、「安倍流平和主義」は、秘密保護法制の強化、PKO活動の拡大、東アジアの緊張を問題視しない姿勢等、懸念すべき方向に突き進んでいます。 

 国民の懸念を受け止め、巨大与党を制する役割が、野党第一党の民主党の存在意義と自認し、今年も国会で厳しく与党に対峙して参ります。(了)

 

スタッフ日記「伝統と革新」 
 明けましておめでとうございます。皆さまは正月休みをいかが過ごされたでしょうか。 

 ちょうど今週は各地で「とんど焼き」(一般的にはどんど焼きと言うようです)が行われ、しめ縄・しめ飾りなどの正月飾りや、書き初めで書いた物を持ち寄って焚きあげる光景が色々なところで見られるかと思います。 

 私も年末に正月飾りを買いに行ったのですが、ふと通りがかった花屋さんの店内に、しめ縄のワラで編まれ、ユリやバラなどをあしらった華やかなリースを見つけました。 

 正月用にしては紙垂(読み方:シデ・しめ縄などについている稲妻のような形をした白い紙)やダイダイの実、ユズリハ、ウラジロ(シダの葉)など一切ありません。 

 これはなんだろう?と不思議に思い聞いてみると、「しめ縄リース」といって洋風の家にも合うようにしめ縄をアレンジをしたものとのことでした。 

 こんなお飾りがあるのか、と帰って更に調べてみると、リースのワラの色が黒・赤・ピンク・紫などカラフルなものや、ワラを編まずに束ねてリースにしているもの、ドライフラワーやリボンを使い、パッと見ただけでは正月飾りとは分からない豪華で大胆なデザインのものなどもありました。輸入住宅の木製ドアや洋風の黒い玄関に映えるため、今かなり人気が出ているのだそうです。 

 伝統は革新の連続、とどこかで聞きましたが、伝統的なものの意味や理由をしっかりと知り、それを大切にしながら理念を継いで新しいものを提案していく。―頭を柔らかくして今年も頑張ろう。カラフルで華やかなしめ縄リースを見ながらそう思いました。(お松)

第621号 「安倍流平和主義」を危ぶむ