第489号 九電力体制と発送電分離 

2011年5月21日 (土) ─

 今回の原発事故並びに事態対処更には東電の補償問題に端を発して、電力の供給の在り方そのものがエネルギー政策の中心課題として議論されようとしています。とりわけ、「発送電分離」については18日に菅総理が「議論すべきだ」と発言されたことにより、02年に実現しなかった真の電力自由化議論が再燃することも予想されます。しかし、一方でコストや実現性にも目を向ける必要があります。この国の現実に見合った、新たなエネルギーの在り方が問われています。

◆九電力体制 
 明治15年、銀座にアーック灯がつきました。国民が初めて電気による光を実感した瞬間でした。その4年後に東京電燈㈱が発足しこの国の電気事業が開始されます。昨今のベンチャービジネス時代到来時と同様に、その後全国に電燈会社が設立され明治30年末には39社に及びました。明治末から大正にかけては技術革新により設備規模の増大、送電網の拡大が進み企業の統廃合がなされます。大正10年ごろには五大電力会社が全国の8割近いシェアを有するようになります。しかし、激烈な価格競争の中、中小零細の電力事業者は増大の一途をたどり、昭和の大戦前までには実に電力会社は800社にまで及びます。 

 大戦突入直前の軍部による電力管理法で国家管理となるまでの半世紀、電気事業はまさに競争により成長したといえるでしょう。戦後、GHQの命令(ポツダム政令)により現在の九電力体制ができたのですが、今日までの長きにわたり地域独占企業として、安定供給の名の下、競争のない経営を行ってきたとも指摘されています。

◆異周波数問題 
 今回、この電力供給体制を抜本的に見直す良い機会でもあると思います。もちろん、真に国民にとって有益な電力の供給を目指すことが目的であることは言うまでもありません。とりわけ東西日本を二分する周波数問題(静岡県浜松市市の天竜川以東50Hz、以西60Hz)は、我が国の電力融通に大きな影響を及ぼしています。異周波数系統間の電力融通を周波数変換所に頼るのか、あるいは周波数の統合を図るのかの抜本的な対策検討が必要です。実は、かつては東西だけでなく九州においても異周波数の混在がありました。しかし、昭和26年の九州電力発足時に国により60Hzに統一された経緯があります。電力融通を考えるときに、この異周波数問題を置き去りにしてはなりません。

◆発送電分離
 市場競争によって電力の供給を安価に行える仕組みの一つとして発送電分離が話題となっています。確かに九電力体制による寡占状態が電気の高コスト体質を維持させてきた原因とも言われており、更には発送電一体の系統運用が九電力体制維持の要となっていたのも事実です。他方、我が国の極めて高度な系統運用について、一顧だにされなくなることも問題でしょう。ドイツでも系統運用を維持しつつも、発送電の融通をする仕組みを実行しています。今後新たなエネルギー政策を考えるに当たっては、コストや安定供給に加えて、安全性、分散性(災害への耐性)など、様々な視点が重要ではないでしょうか。幅広い議論がまさに、求められているのだと思います。(了)

スタッフ日記「未来への航海」
 「1週間後の天気はわからないが、3ヵ月後の季節はわかっている」正確な言葉は忘れてしまいましたが、ある有名な社会学者の言葉です。 

 政権交代以来、一方で積み上げてきた政策を実行しながらも、他方、閉塞感の充満する社会の期待にこたえられていない状況に、怒りや失望感がひろがっています。内を見れば各地での地域政党の伸長、否応なしに進んでいく経済のグローバル化、20世紀の繁栄の残滓として私たちの国に残された財政赤字という負の遺産。外を見れば欧州で深化する国家統合、中東・アフリカ諸国で進む社会変革、そして人類文明単位で考えていかなければならない環境問題。今、私たちはこの国の形を根本から変革していかなければ、新たな時代についていけない状況になっています。 

 政治に携わるとき難しいのは、これら大きな歴史の季節とも言うべき時代の変化をしっかりと意識しながら、同時に目の前の待ったなしの課題に日々取り組んでいかなければならないことです。また、残念ながらこの世界には、やもすれば理性よりも力を反映しがちな権力闘争がつきものです。ただ大切なことは、日々刻々と変わる天気に大きな期待と大きな失望を繰り返し、そのことに振り回されることではなく、こんなときにこそ、腰を落ち着けて社会全体で議論をしっかりとやっていかなければなりません。時代のうねり、震災を始めとした多くの困難。日々の天候の中でただ揺れ流され続ける漂流者ではなく、私たちは嵐の中で、未来を目指す航海者たらんと努力し続けなければなりません。(チュー)

第489号 九電力体制と発送電分離