第488号 「電力事情考」 その2 

2011年5月14日 (土) ─

 東電の原発事故の補償問題については、被害者救済と電力の安定供給さらには国民負担の軽減を考えるべきではありますが、一方で東電に関係する債権、株式市場などに与えるインパクトも考慮すべきとのマーケットサイドの議論もあり、幅広い国民的コンセンサスが求められます。しかし、この補償問題は実は今後の我が国のエネルギー政策に大きく影響し、またその方向性を固定化してしまう可能性も忘れてはなりません。この時にこそ、あらためてエネルギー政策の本質的な議論が求められています。そしてその上であらためて今後の原子力政策の議論が俎上に乗るべきだと考えます。

◆原子力立国計画
 原子力政策の推進を、国が率先してきたのは言うまでもありません。06年に資源エネルギー庁がまとめた「原子力立国計画」では、基本方針に「中長期的にブレない確固たる国家戦略と政策枠組の確立」が謳われています。つまり、国家でなければなしえない大きな課題の解決が原子力発電推進には求められるということです。 

 その一つが発電所の立地問題であります。発電所周辺の公共施設整備を促進し、地域住民の福祉の向上により電源立地のメリットを地元に還元することで、発電所の立地を促進する目的で、74年に制定されたのが電源三法です(電源開発促進税法、特別会計法、発電用施設周辺地域整備法)。この電源三法による電源三法交付金を自治体へ公布することにより発電所建設に対する地域の理解を得て、国は立地問題解決を図ってきました。 

 そしてもう一つの課題が、使用済み燃料の中間貯蔵、再処理、放射性廃棄物の処理・処分などのバックエンドと称される問題です。取り扱う物質の放射能レベルが高く、かつそれが長期間減衰しないため、これらの物質を人間の居住空間から長期間にわたり安全に隔離しておく必要があります。たとえば再処理で発生する高レベル廃液を固めたガラス固化体は30~50年間一時貯蔵した後、地下数百メートル以上の地層に埋めて処分する計画になっています。地下処分する地層は地殻変動などを考え安定した地層が選ばれることになっていますが、予測できない天変地異の可能性について不安を表明する意見もあります。このようにバックエンド問題も国家の課題として取り組まなければならないことは明らかです。

◆担うのは事業者か、国か? 
 しかしながら、06年の「原子力立国計画」においても、「国、電気事業者、メーカー間の建設的協力関係を深化」としながらも「関係者間の真のコミュニケーションを実現し、ビジョンを共有」することが求められるとの基本方針での記載があります。  

 これは言い換えれば、国、事業者、メーカーの三者が十分に連携されておらず、ある意味三すくみ状態に陥り、最終責任の所在があいまいになっていることの当時の資源エネルギー庁の認識の表れにほかなりません。つまり、前政権下においても責任の所在を明らかにしないままに原子力政策が進められてきた証左でもあります。原子力政策を考えるにあたっては、実はこの最終責任の所在を明らかにすることが求めらます。 (了)    

スタッフ日記「奈良と国会議事堂」 
 少し距離があるため、奈良にお住まいの方からすれば、国会議事堂はなかなか気軽に来られる場所ではないかもしれません。でも、じつは国会議事堂には奈良ゆかりの物がたくさんあるのです。
① 赤じゅうたん
廊下に敷かれている赤じゅうたん。「赤じゅうたんを踏む」と言えば「国会議員になること」を表すように、国会議事堂の象徴とも言えるものですが、このじゅうたんは奈良で作っているのだそうです。つまり「ザ・議事堂」は奈良で作られているということですね。

② 御休所
御休所(ごきゅうじょ)とは天皇陛下が議事堂にお越しになられた際、お入りになる大変豪華なお部屋です。室内には大きな鏡があって、4本の柱が据えられているのですが、この柱は漆を薄く塗って乾かし、バームクーヘンのように重ねたもので、唐招提寺や興福寺の仏さまと同じ作り方をしています。

③ 中央広間
中央広間は議事堂の真ん中のギザギザ屋根の真下に当たりますが、この高さを説明する際「法隆寺の五重塔がちょうど入る」というのが決まり文句です。他県の方だとピン!と来ない顔をされる方もいらっしゃいますが、奈良の皆さんにはとてもわかりやすい喩えのようです。 
 また、壁の四隅に描かれている「日本の代表的な四季の絵」では吉野の桜がモチーフとして使われており、「奈良づくし」ともいえるのが中央広間です。

 もう少しありますが、それはお越しになったときにご説明させて頂きますので、いつでもまぶちすみお事務所にご連絡ください!(シズ)

第488号 「電力事情考」 その2