第490号 天然ガス供給とシェールガス

2011年5月28日 (土) ─

 福島第一の原発事故対応が連日報道に上がっているために、新たなエネルギー政策については、「原発」の是非をめぐる電力中心の議論になりがちですが忘れてはならない重要なエネルギー供給源があります。そして、今回の震災では「仙台の奇跡」として、その重要性が再び注目されることになりました。それは、天然ガスであります。

◆仙台の奇跡
 震災直後の津波により、仙台港にある仙台市ガス局のLNG(液化天然ガス)受け入れ基地が機能停止となりました。仙台市全域を含む36万戸へのガス供給が停止しました。基地の復旧には最低でも1年以上かかる見込みでありましたが、わずか一カ月で復旧完了を遂げました。こうしたガスエネルギーのいち早い復旧と安定供給は、エネルギー界では「仙台の奇跡」と称されました。もちろん、北海道から九州までの27ガス事業者の応援によるオールジャパン体制の復旧作業が功を奏したことは言うまでもありませんが、最も重要なことは広域ガスパイプラインが東北においては新潟から仙台へと敷設されていたことでした

◆日本のガスパイプライン 
 我が国のガスパイプラインは2006年8月末で約2700kmと欧州から比較すると極めてぜい弱です。網の目のように張り巡らされた欧州、米国と比較すると首都圏から九州までは単一ラインのみであり、また首都圏から西へは10か所が計画中も含めて寸断された状態となっています。今回の震災対応については、新潟県が天然ガス産出地であった歴史的経緯から、パイプラインが首都圏のみならず太平洋側の宮城県にまで行き渡っていたことが復旧の最大のポイントとなりました。しかし、我が国の都市ガスは都市ごとに発達したため、広域パイプライン網が発達しておらず三大都市圏すら分断された状態です。とりわけ、中部地域は東海沖地震が懸念されますが、万が一の場合の供給パイプラインは現時点ではないのが現状です。仮に伊勢湾岸のLNG基地が被災した場合、仙台のような代替の供給手段がなく、供給途絶の危機に直面します。約230万戸の需要家やトヨタなどの主要産業に長期にわたり影響を及ぼす可能性が指摘されています。その意味で、産業部門の天然ガスシフトが一方で進む中、都市間を結ぶ広域パイプライン網の整備が必要であり、これまでの民間事業者任せではない、公共事業的な位置づけが求められると考えます。

◆シェールガス革命
 このように、新たなエネルギーへの転換・併用もより積極的に図っていかなければなりません。そんな中、米国のオバマ大統領が震災後の3月30日に米国を取り巻くエネルギー情勢について演説をしました。そこでは、原子力発電の安全性確保を大前提としつつその重要性は変わらないとしたうえで、エネルギー安全保障の強化のために石油依存の引き下げ、ガス開発の促進を掲げました。それが、シェールガス(頁岩層に含まれる天然ガス)の開発です。米国が世界一の埋蔵量を誇る新たなエネルギーとして重要であることを改めて認識したとの表明でもありました。各国がまさにしのぎを削って新たなエネルギー消費構造のイニシアチブを取ろうとしています。我が国も、早急な戦略の立て直しが求められます。        (了)

 

スタッフ日記「慣れたり、慣れなかったり」
 議員会館の表示板や駅のディスプレイ、今東京のいろんなところに「東京電力の電力使用状況」の案内があります。供給能力のうち何パーセントが使用中かというのがリアルタイムで表示され節電を訴えています。

 明かりが消えた繁華街、営業中にも関わらず看板の消えているコンビニ・レストラン、輪番停電をしながら操業している工場、そして各家庭での節電。電車や駅等の空調も入っていません。暗い街はなにか寂しいと感じることもありますが、いざこの状態で2か月過ごしてみると段々と慣れてきて暗さも気にならなくなってくるのが不思議です。当たり前と思っていた明るさ、快適さというのは、実は余分なものだったのかなぁとしみじみ考えたり。   

 田舎出身なので、なにかの度ごとに地元を思い出すのですが、田舎の夜は暗いものだし、暑いときは暑い、寒いときは寒いと当たり前に過ごしていました。同じことが今出来ていないんじゃないかと思います。田舎と都市部は街の構造も違うし、同じようには過ごせないのかもしれません。ただ、今こうしてそれぞれがちょっとずつ我慢しながら過ごすことを、電力状況が回復した後も続けていけたらきっと日本は良い方向へ進めるんじゃないでしょうか。 

 ただ、去年の夏を思い出すと、やっぱり都会の夏は暑いんです!田んぼの水の上を抜けてくる風とは比べようもない都市の熱気。あの夏がまた来るのかー、慣れることは出来ないだろうなぁとエアコンの掃除をして夏に備えて準備万端にしているのはやっぱりダメですかねぇ。(SCハマー)     

第490号 天然ガス供給とシェールガス