第459号 ゼロ金利の中身

2010年10月9日 (土) ─

 日銀は5日の金融政策決定会合で、政策金利を現在の0.1%から0~0.1%に引き下げることを決定しました。ゼロ金利を容認する金融緩和は4年3か月ぶりです。また、国債、社債や不動産投資信託(REIT)など5兆円規模の資産の買い取りも決定しました。

 今回の緩和を好感して株価が一度は300円程度上げました。一方為替は円安には振れず円高になりました。7日のNY為替市場で円相場は一時82円11銭まで上昇しました。約15年4か月ぶりの円高水準です。通常、金融緩和を行えば円安に振れるものですが、なぜか円高に振れています。要因はいくつか考えられます。一つは米国の雇用関連の民間統計が大幅な悪化を示し、米経済に対する先行きの懸念から、米連邦準備制度理事会(FRB)が追加の金融緩和に踏み切るとの観測が強いことと、G7を週末に控え、政府が為替介入に踏み切りにくいとの見方があることです。大方のメディアはこのような見立てです。また、一方で次のような見方もできます。今回の金融緩和が実質的にはそれほど大胆な緩和ではないと市場が見ている可能性があるのです。

今回、日銀が発表した『「包括的な金融緩和政策」の実施について』を良く読んでみると、注書きで「補完当座預金制度の適用利率、固定金利方式・共通担保資金供給オペレーションの貸付利率および成長基盤強化を支援するための資金供給の貸付利率は、引き続き、0.1%である。」としています。「実質ゼロ金利」は必ずしも額面通りには受け取れないと見ることもできるのです。また、今回の資産買い入れ措置は市場に資金を供給するため量的緩和と同様の効果がありますが、今回増加したのは5兆円にとどまります。さらに、「買入れの開始から1年後を目途に」「5兆円程度となるよう買入れを進める」としており、市場への資金の供給に一定の時間を要することが読み取れます。

 また、「物価の安定が展望できる情勢になったと判断するまで、実質ゼロ金利政策を継続する」としていますが、デフレが充分克服されない段階でゼロ金利を解除しないことが肝要です。デフレ克服前にゼロ金利を解除した前例があるからです。日銀は2000年8月に、「デフレ懸念の払拭が展望できる情勢」に至ったとの判断からゼロ金利の解除を決定しました。しかし、この時、政府はゼロ金利解除が時期尚早と考えており、景気の先行きにはまだ不安があるとして日銀に議決延期請求を提出していたのです。日銀はそれを強引に否決し、その結果、景気は再び悪化しました。このころ森政権は景気対策として10兆円を超える財政出動を行っており、政府は財政政策というアクセルを踏み、一方、日銀はゼロ金利解除というブレーキを踏むというちぐはぐな対応となってしまったのです。このため、財政が悪化する一方で景気も悪化していきました。

 日銀による金融緩和を進めるという姿勢は評価できますが、市場はしっかり見ています。円高・デフレを是正しない限り、株価の堅調な上昇は見込めません。更なる量的緩和と本ニュース457号で述べた非不胎化政策が求められます。(了)

 
 
スタッフ日記「かわいらしい手紙」

 先日、事務所の机の上にかわいらしい小さな手紙が一枚、見ると、子どもの字で差出人の名前があります。あれっと思いながら開けてみると、丸っこい字で、「ありがとう」の言葉、中学校を無事に卒業できたことのお礼が。瞬間、記憶がはっとつながって、とても幸せな気分になりました。

 2年ほど前、縁があり、子どもさんのいじめの相談に乗ったことがあります。僕は要領を得ないまま、子どもさんを交えた親子と学校関係者の話し合いにほんの2回ほど同席させていただきました。学校での席上、そこには子どもの受けた痛みに自分のこと以上に傷ついているお母さん、なんだか自分の手の届かないところで大人同士がぶつかっている事に戸惑っている子ども、そして学校で起きたことに心を痛めながら難しい年頃の子どもの世界との接点やコミュニケーションに苦労されている教育現場の先生方、出口のない重苦しい空気に部屋全体が包まれていました。そもそも自分がその中にいることへの違和感を気にしながら、子ども同士の関係の中に大人が入ることや、子どもを預かっている学校と家庭のコミュニケーションの難しさの中で、みなで色々な話をしたことを今もよく覚えています。

 無事の卒業を告げるかわいらしい手紙に、こちらも幸せな気持ちになれたそんな瞬間でした。(チュー)

第459号 ゼロ金利の中身