第1043号 全数把握、やめて大丈夫?

2022年8月27日 (土) ─

 コロナ感染拡大のピークが全く見通せない中、岸田総理の感染が発表されました。さすがに休暇中にゴルフを行っていたことを絡めて感染を批判するのは無理がありますが、誰が感染してもおかしくない状態であることが印象づけられた格好となりました。

 市中では、発熱外来にかかれない、という声が多く上がっています。感染者の増加に加え、職場などに提出する療養証明書を求める人たちが殺到し、窓口はパンク状態です。

◆迷走する全数把握方針
 この医療崩壊状態に手を打つべく、岸田総理は24日新たな方針を発表しました。

 その中で一番大きいのは、全数把握の見直しです。これは、感染者総数の把握自体は続けるが、感染者の詳しい情報報告については重症化リスクの高い方などに限定し、全数を把握することはやめるということです。感染者の詳しい情報を医師が報告することが負担となっていたので、現場の作業負担が減ることはメリットです。

 しかし、これは「とりあえず」の対処療法としては有効ですが、感染者が安心して医療を受けられるための抜本的対策とは程遠いものです。

 政府は24日に、全数把握をやめるかどうかの判断は「各自治体に任せる」という実質的な丸投げ方針を示しましたが、都道府県ごとに判断がバラバラになり、却って対応が難しくなるとの批判を受けて、早くも翌25日には全国一律に行う調整に入ったと報道されています。

 必要なことは、今後の感染防止をどのように進めて行くか、今後詳しい情報報告から漏れる感染者も含め、適切な医療をどのように確保するかといった、全体を見据えたコロナ戦略を示すことなのです。

◆2類or5類はナンセンス
 感染拡大が止まらない中、コロナの感染症法の分類を、2類相当から5類相当に落とせ!という声も大きくなってきています。ただのインフルエンザ扱いにすれば良いという考えです。

 しかし、真夏にこれだけ多くの人が高熱で苦しむ季節性インフルエンザなど今まで見たことがありません。5類に下げればワクチンやPCR検査が有料化される可能性があるため、高額な医療費を避けるために受診控えが発生し、感染が広がる恐れがあります。

 後遺症の問題も深刻なため、ただのインフルエンザ扱いをするというのは、今の段階では慎重であるべきです。

2類→5類引き下げ
<メリット>
・医療現場のひっ迫の軽減
・濃厚接触者の待機がなくなり経済が回る?
<デメリット>
・検査もワクチンも有料化?受診控えで感染がさらに広がる恐れ
 
 私は2年前に流行長期化の兆しが見られた時から、コロナ独自の分類を作ることを提案してきました。いまだ終息が見込めず、さらなる長期の対応が必要な中で、2類、5類という従来からの区分で議論の幅を縛っていては本質を見失います。

 自治体任せではなく、国が責任をもって向き合うためにも今すぐ国会を開き、詳細な議論を行わなくてはなりません。

 

スタッフ日記 「3年ぶりの開催」

 奈良の夏の風物詩として定着しつつある「なら燈花会」をはじめとして、今年8月、9月には、3年ぶりとなる夏まつり、地蔵盆などの開催がありました。

 コロナ感染の観点からも開催を見送るイベントが多くある中で、屋外での飲食ブースを制限して、缶ジュースや子ども用ゲームを中心とした夏祭りには、それでも多くの子どもたちが例年以上の賑わいを見せていました。

 特に、今年はコロナ対策として、イベント主催者が作成した感染防止安全計画をもとに、イベント概要が分かる資料を提出し開催するという一連の事務作業は、自治会活動が活発でない地域にとっては、至難の業です。

 3年間の空白からもう一度開催を目指すには高いハードルがあり、今年も開催を見送ろうとの地域の決定に、このまま夏祭りや地域のイベントが無くなってしまうのではないか、といった心配の声も少なくありません。
 一方で、古くからの伝統行事が続く寺社仏閣を中心とした催事は、過去3年間に規模を縮小してでも開催されていることが多く、歴史が連面として受け継がれていく、その伝統を重さを感じる瞬間でもありました。

 開催されている自治会地域以外の子どもたちが、ネットやSNS等の横のつながりを通じて多く集まっている状況からも、子どもたちが楽しみに待ち望んでいたことが手に取ってわかりました。コロナ対策を万全にした上であれば開催できるという今年のガイドラインを見本に、地域の繋がりの場を一つでも継続し、来年こその開催につなげていくことができれば、と切に願っています。(特命係長)

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