第1029号 子ども子育て政策の未来

2022年4月23日 (土) ─

 今国会の大きなテーマの一つである子ども子育て政策について、19日、「こども家庭庁」設置法案が衆院で審議入りしました。

◆子ども政策の統合を
 子ども子育て支援の充実は長年にわたる日本の大きな課題です。しかし、今日まで、子ども子育て政策の所管は、少子化対策や子どもの貧困対策等を内閣府が、幼児教育や初等中等教育を文部科学省が、児童虐待防止や障害児支援等を厚生労働省がそれぞれ所管しており、各省の省益も絡んでちぐはぐな政策が繰り返される縦割り行政の際たるものとなっていました。

 政府が設置を目指す「こども家庭庁」は、このうち内閣府と厚生労働省の業務を引き継ぎ所管する予定ですが、子どもにとって大事な教育に関しては、文部科学省がそのまま所管することとされています。

 子どもへの支援は、誕生から保育、幼児教育、義務教育、そして18歳の成年を迎えるまで一つの線として捉えなければならず、教育も含めた子ども総合政策を担う省として再編されなければならないと考えています。

◆大胆な支出が重要
 さらに必要なのは、単に省庁の統合だけではなく、実効性を持った政策の確保、つまり予算の大胆な投入です。

 日本の子ども施策の予算は、GDP比で1.6%程度であり、欧州主要国の半分程度に留まっています。役所の職員だけを確保しても、肝心の予算を確保しなければ支援は進みません。予算を少なくともGDPの3%以上に倍増させなければなりません。

 さらに、児童手当を高校3年生まで延長するなどの具体的で即効性のある支援策、10年間で子どもの貧困率を半減させるなどの明確な数値目標の設定を行わなければ、今までと同じく効果が不明瞭な施策が繰り返されていくだけになります。

 われわれは政府案に対して、教育も含めた総合的な子ども政策を担う省の設置や大胆な予算投入、具体的な支援策を盛り込んだ法案を提出しています。

◆「増やす」以外の目的も必要
 子ども子育て支援の充実は緊急の課題ですが、とにかく子どもの数を増やしさえすれば良いという発想のままでは限界が生じると思います。日本のみならず世界の多くの先進国では出生率が減少しています。特に東アジア地域での減少率は大きく、韓国、台湾は世界でも最低レベルの出生率であり、中国でも出生率が急激に低下し、将来的に人口の維持は困難になるという予想が立てられています。

 これは都市部への人口集中、子育て費用の増大、大家族制から核家族制への転換の影響など様々な原因が考えられますが、大きな時代の流れではこの傾向は続き、少子化と人口減少は進んでいくものと考えられます。

 もちろん、子どもを産みやすい環境を整備することは重要ですが、子どもの数を増やすことだけではなく、生まれてきたひとりひとりの子どもへの成年までの支援を手厚くし、教育機会を保障し、親の収入などによる格差をなくしていくことが、子ども政策としてより必要になると思います。

 子どもを「数」で見るのではなく、ひとりの人間として尊重する社会へ進むため、行政の姿勢も転換が求められています。

 

スタッフ日記「国民のしもべ」

 ロシアによるウクライナへの侵攻が連日ニュースで流れ、あまりの惨状に言葉を失うことも少なくありません。ウクライナのゼレンスキー大統領が世界へ向けて発信するメッセージも悲痛なものが多く、胸が痛みます。

 ゼレンスキー大統領の元々の職業はコメディ俳優。

 国民的な人気を誇り、脚本を書くこともあったということですから、日本で言うと大泉洋さんと三谷幸喜さんを足して2で割ったような感じでしょうか。

 そのゼレンスキー氏が主演をしたのがドラマ「国民のしもべ」。普通の数学教師がふとしたきっかけであれよあれよという間に大統領になり、国民の人気を得てゆくお話ですが、このドラマをきっかけに本当に大統領にまでなるのですから、まさにドラマのような話が現実になったと言っても過言ではありません。

 その「国民のしもべ」、現在英語版はありますが、日本語版はありません。ただ、私はいつか日本語版も見られたらいいと思っています。

 ウクライナ語版の冒頭を見るだけでも面白そう、というのもその理由ですが、何より私たちはウクライナの「日常」をあまり知りません。どんな風景でどんなものを食べ、どんなことわざがあって、どういう生活をしているのか、大ヒットしたドラマであれば、そうしたことが垣間見えると思うのです。

 今、たくさんのウクライナ難民の方が来日されています。彼らを「戦争に巻き込まれたかわいそうな人たち」ではなく、一人ひとりの人間として、普通の友人として知るためにも、ぜひ見てみたいと思う今日この頃です。(シズ)

第1029号 子ども子育て政策の未来