第508号 原発の冷温停止

2011年10月1日 (土) ─

 冷温停止とは、通常運転中の原子炉であれば「原子炉の水温が100℃未満の安定した状態」を指します。原子炉では水を循環させ、そこに浸かっている燃料棒を冷やすのですが、その水が100℃以下でコントロール出来ているということです。

 しかし、事故を起こした原子炉の「冷温停止」には定義がなく、燃料を完全に水で覆う「水棺」が出来ず、水をかけて冷やしている状態は本来の冷温停止状態とは異なります。

◆曖昧な定義づけ 
 このため、政府・東電統合対策室では、事故の収束に向けた道筋の中で「冷温停止」について新たに以下のように定義づけました。
(1)圧力容器底部温度が概ね100℃になっていること
(2)格納容器からの放射性物質の放出を管理し、追加的放出による公衆被ばく線量を大幅に抑制していること

 政府が目指す目標である以上、国民が安心できる定義づけが必要ですが、この2つがそれに当てはまるとは思えません。

 そもそも、メルトダウンして、燃料はどこにあるのか不明です。そこに水をかけて発生した水蒸気の温度を測ったところで、温度が100℃以下になるのは当然なのです。例えば沸騰した鍋で、水面で発生した水蒸気は100℃ですが、上るにつれて周りの空気で冷やされ、温度が下がります。それと同じことが原子炉の中でも起こっているのです。現在は本来あるべき「水の温度」ではなく、圧力容器の外に落ちている燃料棒から発生し続ける「水蒸気の温度」を測っているに過ぎず、意味がありません。まずは現在のサイト内の状態を明らかにした上で、対策や目指すべき状況を明確に定義するべきです。
また、放射性物質の空中や地下への流出量や、サイト内の空気や地下水の汚染の程度すらわからない状況で、放射性物質の放出が管理できているとはいえません。本来こうしたことがわかった上で「冷温停止」がどういうものなのか定義すべきではないでしょうか。

 私は国民を安心させるため、現在の状況を明確にした上で、下記の2点を条件とするよう改めるべきだと思います。

(1)溶けた燃料が100℃以下に安定的に冷却されている状態
 現在行っているのは、「元々燃料があったはず」で今は何もない所の「水蒸気の温度」を測っているだけで、燃料が本当は何℃なのかはわかっていません。溶けて圧力容器から落ちた燃料の場所を特定し、燃料自体の温度を測定するべきです。

(2)放射性物質の外部流出が抑制された状態
 圧力容器内の放射性物質は、事故直後のベント(排気)や水蒸気爆発で大量に空中に拡散し、今は冷却水に洗われて地下に流出し続けています。空中・地中への放射性物質の流出量のモニタリングを実施し、情報公開した上、抑制されているのか客観的に判断する必要があります。

 現実的には地下水による汚染拡大の抑制が困難なので、上記の定義による冷温停止の年内実現は難しいと思われます。にも関わらずあいまいな定義づけで「冷温停止をした」と国内外に発信することは、逆に日本政府の信用を失う結果になりかねません。 

 定義次第で達成できるかどうかが変わるような姿勢は即座に改めるべきなのです。(了)

スタッフ日記「無役、の日々」
 民主党代表選が終わってひと月が経ちました。代議士はもちろん、私達スタッフ一同も、力不足で結果が出せなかったことに対して反省すると同時に、色々な方のご協力や応援の声、メールなどに支えられ、励まされて堂々と選挙が出来たことを大変ありがたく思っております。 

 現在の代議士は、民主党の一議員として日々を過ごしています。 このことについてご心配のお声を頂くことも少なくありませんが、私は必ずしも悪いことばかりではないと思っています。 

 本会議や委員会への出席は変わりありませんが、その合間に役所からレクを受けたり、有識者の方と会ったりしながら、自らの政策、そしてこれからの日本に必要になるであろう政策のための勉強をしています。政権交代以降、ありがたいことに国交副大臣、国交大臣、民主党の広報委員長、原発担当の首相補佐官、とお役目を任せていただき、まさにフルスロットルで息つく暇なく走ってきました。その一方で、なかなか落ち着いて勉強の時間が取れなかったのも事実です。311以降の国難によって国の形そのものが大きく変わるかもしれない、という中で、もう一度自分の考え方を見つめなおせる時間が取れるのはきっとプラスになると信じています。

 それでもやっぱり応援して下さる方が心配に思う気持ちもよくわかります。だから、そんな時は代議士の説明として昔からよく使っているこんな言葉でお返事をするようにしています。
「大丈夫です。代議士は逆境にあればあるほどファイトが出るタイプなんです!」(シズ)

第508号 原発の冷温停止