第470号 新防衛大綱

2010年12月24日 (金) ─

 日本の防衛力の在り方の基本方針となる「防衛計画の大綱」が6年ぶりに閣議決定されました。また、南西地域の島しょ部に沿岸監視部隊の配置を盛り込んだ今後5年間の防衛費の総額などを定める中期防衛力整備計画(中期防)も同時に発表されました。最大の特徴は1976年に大綱が始まって以来、ソ連邦崩壊による冷戦終結後も維持されてきた「基盤的防衛力構想」に代わり「動的防衛力」を基本概念に据えたことです。背景には中国や北朝鮮をはじめとした東アジアの防衛環境の急速な変化や我が国の厳しい財政状況があります。

◆安全保障環境の変化
 今回の大綱では中国について「地域・国際社会の懸念事項」と明記しました。防衛白書によると中国の本年度予算は昨年度の当初予算額と比較すると、約9.8%の伸びとなり、21年連続二桁の伸びは下回るものの、依然として高い伸び率を維持しています。公表国防費の名目上の規模は、過去5年間で2倍以上、過去20年間で約18倍の規模にもなっています。我が国防衛費が8年連続で減少しているのと対照的です。

 量だけでなく質も向上しています。中国は1991年にはほとんど保有していなかった新型潜水艦は33隻(総数は約60隻)に、第四世代戦闘機(日本の主力戦闘機のF15などもこの範疇にはいる)の数は383機に増えています。さらに中国の空母保有の動きも懸念材料です。複数の軍高官が空母の保有に肯定的な発言を行っており、報道では数年内に就役予定とされています。

 このような情勢を受け、特に中国への対応については米国の期待も大きく、特に対潜水艦能力の向上を求めているとも報じられています。2006年には沖縄近海と伝えられる海域に中国のソン級潜水艦が米空母キティホークの近傍に浮上する事件も起きており、米国空母が日本防衛に参加するのに支障が生じることとなれば大変大きな問題です。

◆動的防衛力へ
 新防衛大綱では、「今後の防衛力については、防衛力の存在自体による抑止効果を重視した、従来の「基盤的防衛力構想」によることなく」「即応性、機動性、柔軟性、持続性及び多目的性を備え、軍事技術水準の動向を踏まえた高度な技術力と情報能力に支えられた動的防衛力を構築する。」としています。「基盤的防衛力構想」は、自衛隊を全国に均等配分する根拠とされ、特にソ連の侵攻を想定し、北海道に多数の戦車を配備するなど、現実にそぐわず、硬直化が批判されてきましたが、今回はその放棄を謳っています。厳しい財政状況の中で平成14年度から平成22年度まで防衛予算は8年連続で減少しており、限られた予算を効率的に使う意味もあります。世界的に見ても不安定要因の多い東アジア地域の安全保障環境を踏まえた大綱の改定は、これまでよりも現実の脅威に対応したものであり評価できます。 (了)

 

スタッフ日記 「ラグビー」

 「おっ!」いつも通る駅の構内に、青空を背景にした高校ラグビーのポスターが!あーもうすぐ今年もラグビーの季節が始まる!そう思うと、急に胸の中に新鮮な風が吹いてきます。  

 先日、遠方の知人の訃報と、その身内の青年のとても厳しい状況の話しが舞い込んできた。そしてその事を僕に知らせてくれた友人がこのところ心を病んでいるという。世の中は厳しく、人は必ずしも強くない。いつも難しい顔をしている人、一見にこにこと穏やかな表情で生きている人、実はみんな色々な悲しみや悩みを抱えながら生きている。昨年の総選挙から一年と少し、「民主党には、ほんまだまされた!」「お前ら詐欺師や!」という罵声に、もともと楽天的な僕が頑張って反論を試みても、ついつい心がうつむいてしまいそうになる。

 そんな時思うのは、ひょっとすると僕たちはみんながラガーマンなのかもしれないということ。希望も喜びも苦しみも悲しみも、苦悩や時に怒りさえ抱いて、それでも未来に向け走っているのかもしれない。だから、こけてもボールつないで前へ走る。ただみんなで前へ走る。とにかく、パスしてスクラムしてタックルしてボールつないで全員で走る。ボールを追いかけて逆に走る時もあるけど、それでも又、前へ走る。助け合って励ましあってあきらめずに走る、立ち止まる時もこける時も、もうあかんと思う時もあるけど、でもまた走る。そうすれば必ずみんなで喜ぶことができる大きな希望につながっていくと信じている。だからラグビーってええなぁって思う!皆様の新しき一年が良き年となることを祈っています。(チュー)

第470号 新防衛大綱