第878号 元号「令和」

2019年4月6日 (土) ─

 1日、新しい元号が「令和」に決まりました。

◆奈良と元号
 「令和」は、奈良時代の歌人である大伴旅人が作者とされる万葉集の文章を出典として考案されました。そもそも日本で最初の元号である「大化」は、西暦で言うと645年の飛鳥時代に制定されたものであり、奈良は日本の元号の故地でもあります。「大化」から1400年近くを経て、新しい元号が、飛鳥出身である大伴旅人の文が出典とされ、奈良県にゆかりのあるものと決まったことについて、大変喜ばしく考えています。万葉の響きを持つ「令和」は、未来の奈良に馴染んでいくことでしょう。

◆国書漢籍論争は不要
 「令和」の選定に関しては、日本の国書である万葉集からの出典であることが強調されました。今まで使われた247の元号は、確認できる中では全て漢籍からの出典であったのに対し、初めて日本の古典に出典を求めたことは、元号の伝統の上で問題はないのかという指摘があります。逆に、ことさらに元号選定を現時点の政治情勢とリンクさせて、増大しつつある中国の影響力を排除するものだとして積極的に評価する一部の声も聞かれます。

 しかし、「令和」の出典となった万葉集の「初春令月、気淑風和」に関して、漢籍の詩文を集めた文選の中に「令月」という表現が見られ、気淑風和についても類似表現があることが指摘されています。国書である万葉集も、その修辞表現のオリジナルを探っていくと漢籍に由来することは明らかであり、ことさらに漢籍が排除されているわけではなく、元号出典の伝統上も十分許容できる範囲にあると思います。ただ、今回、そうした背景が十分説明されず、あくまで出典が国書であることだけが強調されたため、国書か漢籍かの二者択一の出典論争を引き起こしてしまったのは、政府の説明不足だったと思います。国書を直接の出典としつつも、漢籍も尊重した伝統的な範囲内の元号であることを今後発信していくべきだと思います。

◆元号の伝統と憲法の調和
 今回、元号の決定の際は、発表前に、宮内庁長官が天皇陛下と皇太子殿下に元号の報告を行ったことが公表されました。皇太子殿下は「分かりました」とうなずかれたと言います。元号は、現行憲法下では、法令に従って制定されますが、古来、元号は天皇が制定してきたという伝統があります。伝統と憲法の調和という点で、事前の報告と了承が明確にされたことは、評価すべきことだと考えます。

 また、「令和」の意味について、「令」という文字は、善き意味があるというものから、命令などを想起させるという否定的なものまで様々な意見が出ています。しかし、国民主権の下での元号の意味は、為政者によって示されるものではなく、国民がその社会とともに形作っていくものだと思います。「令」がどのような意味を持つ時代となるかは、今後の我々次第です。私も国民の代表の国会議員として、「令和」を善き時代とするべく、決意を新たにしています。(了)

第878号 元号「令和」