第855号 憲法改正と衆参ダブル選

2018年10月6日 (土) ─

 自民党総裁に再選された安倍総理は内閣改造と自民党人事を行いました。新たな大臣と自民党役員の顔ぶれを見ると、各政策の遂行については熱意は感じられず、一方、憲法改正の実現に向けた布陣のみ手厚くする総理の意図が垣間見られます。

◆「身内配慮」の内閣改造 
 今回の内閣改造で安倍総理は、麻生財務大臣、菅官房長官といった第2次安倍政権発足以来の盟友に加え、茂木経済再生担当大臣や世耕経済産業大臣という腹心を留任させて、内閣の骨格を維持する一方で、12名を初入閣させました。初入閣の12名は自民党内の各派閥に配慮して、当選回数の多い未入閣議員を多く起用した形で、必ずしも各分野のエキスパートと言われる人材で固めたわけではありません。

 石破議員の健闘を許した総裁選、そして野党系候補に惨敗を喫した沖縄県知事選の結果を受け、山下法務大臣の抜擢人事はありましたが、総理としては党内融和と安定的な政権運営を優先した人事と言えます。

 また、来年に控える消費税増税と景気対策、総理が3年以内に行うとする社会保障改革についても政権のスタンスは明確ではなく、基本は従来の路線の継承であり、抜本的改革に消極的と見ざるを得ません。

◆憲法改正には手厚く 
 一方、総理自身の悲願とされる憲法改正には手厚く布陣をひいているのが、自民党人事から見て取れます。党役員人事で、憲法改正推進本部長には下村博文元文部科学大臣を、改憲案を了承する総務会会長には加藤勝信前厚生労働大臣を、筆頭副幹事長には稲田朋美氏を起用しました。いずれも政権発足以来、安倍総理を支える側近達です。党内派閥に配慮して「順番待ち」の議員を多数起用した大臣人事とは異なり、改憲自民党案を確実にまとめ上げるため腹心を積極的に登用しているところに、憲法改正は譲れないという総理の意図が感じられます。 

◆衆院解散総選挙も視野に
 憲法改正には国会議員をまとめるだけではなく、国民投票での承認が必要です。イギリスでEU離脱を国民投票に問うたキャメロン前首相は、敗れて退陣しました。安倍総理にとっても、憲法改正を国民に問い、否決されることは即退陣を意味します。総理にとっては決して負けられない勝負であり、与党の持つ選挙組織をフル回転させて勝利するために、憲法改正の国民投票と参議院選挙の「ダブル選挙」、そして場合によっては同時に衆院の解散総選挙にも踏み切る「トリプル選挙」の可能性はゼロとは言えません。

 自民党選挙対策委員長に、総理の最大の盟友とも言われる甘利明元経済再生担当大臣を起用したことは、このトリプル選挙に向けての布石と捉えることもできます。トリプル選挙になった場合、政権選択と今後の国家の100年の姿を同時に国民に問う非常に重要な選挙となります。 

 私も、自らの憲法観を有権者の皆様に直接お伝えし、一丸の会浪士44名の仲間と共に、会の代表としての使命を果たすためにも、来る衆院選に向けて全身全霊で邁進して参ります。(了)

 

森ちゃん日記「自然と共生する心」 
 北海道胆振東部地震から1ヶ月、震源地の厚真町では仮設住宅の建設が進み、今日も全国から集まった災害ボランティアの方の力を借りながら、少しずつ復興へと歩み始めています。 

 北海道は、豊かな大自然に囲まれる土地柄という反面、厳しい自然と常に対峙しなくてはならない所です。それは、自然災害とも常に隣合わせと言えるかもしれません。買いたい物をすぐに買いに行ける、そんな便利な土地ばかりではありませんが、それを不便さとして捉えるのではなく、当たり前のものとして受け入れる習慣が日常生活に溶け込んでいる気がします。

 今回、被災した郷里に帰って感じた被災者の方の優しさは、大自然と正面から向き合い、生かされていることに感謝する、共生の心だったのかもしれません。誰かに求める事を控え、誰かのせいにするのでもなく、厳しい環境だからこそ、そこで起こりうる天災に対して、ある意味で諦めてしまうことに慣れているようにも見える姿勢は、まぁ、しょうがないから頑張るしかない、と私には強さとして目に映りました。

 避難所で疲れ切っているはずの祖母が私に笑顔を見せて「婆ちゃんは大丈夫だから何も心配はいらないよ、浩行は奈良でしっかりと頑張りなさいよ。」その言葉は何よりも力強く、私を勇気付ける言葉でした。

第855号 憲法改正と衆参ダブル選