第854号 安倍外交の現状を問う 

2018年9月29日 (土) ─

 安倍総理は、自民党総裁選で勝利し、従来の安倍政権の政策が継続されることになりました。一方、対アメリカ、対ロシアといった主要な外交関係で譲歩を余儀なくされるなど、国益を損ないかねない「外交の失敗」が目立ちます。

◆日米通商交渉での譲歩 
 安倍総理は、26日に開かれたトランプ大統領との首脳会談で、農産物などの輸入に関する物品貿易協定締結の交渉を始める合意をしました。アメリカは、この交渉中は、日本から輸入される自動車に高い関税をかける措置は行わないと表明しましたが、関税をカードに日本に譲歩を迫る姿勢は明確になり、今後は要求がエスカレートする可能性も高いと言えます。日本政府は、アメリカのTPPへの復帰に期待し、穏健な形で多国間の自由貿易体制を構築しようとしてきましたが、アメリカの強硬な態度により、二国間の貿易協定の交渉を行わざるを得ない形になり、対米貿易ビジョンは危機に瀕していると言えます。

◆米国を読み間違えるな 
 また、アメリカが中国からの輸入品に対して、高額の関税を課す措置を発動し、中国も対抗措置を取ったため、米中間の通商対立が激化しています。米中対立に関しては、「日本は両国の対立の間で漁夫の利を得ることが出来る」、「アメリカが中国に対抗するため日本を頼りにし、安全保障や通商の面で優遇するだろう」といった楽観的な主張も見られます。 

 しかし、トランプ政権の強硬な姿勢に垣間見えるのは、かつての米ソ冷戦時代の共和党大統領に見られた、世界での「資本主義陣営の利益」を守るための同盟国重視・自由貿易重視ではなく、あくまで「アメリカ一国の利益」の重視です。その理由は、トランプの支持層にあります。トランプ氏を大統領に押し上げた支持層は、自由貿易によって職を奪われた、もしくは今後奪われると考える層であり、必ずしも自由貿易を党是とする共和党を伝統的に支持していた層ではありません。こうした層がトランプの強硬姿勢を支持しているために、一定以下の支持率にはならないのです。トランプは今後も再選のため。そうした固定支持層に配慮した政策を進めることが予想されます。 

 そうだとするならば、アメリカ第一主義の矛先は中国のみならず、日本など他の主要貿易相手国に向けられるのは必定です。日本に対して自動車関税の上昇をちらつかせ、農産品の輸入拡大を迫った日米首脳会談は、まさにその先がけです。今後も更なる譲歩を求められるのは確実です。

◆行き詰まる安倍外交 
 安倍政権の経済政策の本質が、輸出大企業の収益改善による波及への期待にある以上、今後予想される米中、日米貿易対立により大きな修正を迫られるのは明らかです。他にも安倍外交は、先日の日露首脳会談で領土問題を棚上げにした平和条約の締結をプーチン大統領に提案されて、何も反論出来ず、領土問題が全く進展しないなど、行き詰まりを見せています。総裁に再選されて任期は3年ということですが、外交の面から綻びを見せて崩れることは十分考えられると思っています。(了)

 

森ちゃん日記「自治会が担う役割とは」 
 奈良弁護士会は、地元神社の氏子に限り自治会の構成員としているのは不合理な差別的取扱いで人権侵害にあたるとして、天理市の自治会に対して是正勧告を出したことを発表しました。自治会費を納めていても、氏子以外は地元の集会や神社の祭りなどに参加することを認めず、さらに市が配布している広報や回覧板も届けていなかった事が明らかとなりました。

 本来、自治会の役割とはその公共的な立場から、広く住民に対し行政サービスの周知やまちづくりの基礎となるべき住民の声の受け皿としての機能を果たすべきです。昨今は都市部から地方へと移住する若年層を取り込もうと、様々な取り組みが行われている中で、閉鎖的な村意識がかえって人口減少を推し進めている形になっているのではと疑問を持ってしまいます。 

 以前に地元の宮司より、ここ数年は神社の催事に子ども達が参加することも増え、新興住宅にはない歴史、文化を感じ、発信する場として住民の方にも受け入れられてきたのでは、という話を聞きました。守り続けてきた伝統と文化を継承しながら、排除するのではなく、地域が主体となってその受け皿とならなければ、住む地域や場所によって、暮らしに差が生じてしまう、そのような事はあってはなりません。

第854号 安倍外交の現状を問う