第838号 覚悟なきエネルギー政策

2018年6月9日 (土) ─

 先月16日、経済産業省の有識者会議が、今後の我が国のエネルギー政策の方針を示す、「エネルギー基本計画」の改定案をとりまとめました。

◆「覚悟」定まらぬ基本方針
 改定案は、風力などの自然エネルギーの導入を進めていくことを掲げているものの、国際的に自然エネルギーの価格が下がり、普及が進んでいるという状況変化にかかわらず、3年前に示された従来の導入目標を据え置いています。

 一方、原子力発電についても、2030年の発電比率を電力全体の2割程度とする従来の目標を維持しています。原子力発電の割合を10年後も2割に維持するためには、全国で30基台半ばの原発が必要であると、3年前私が国会質問を行った際、当時の宮沢洋一経産大臣は答弁しました。

 しかし、現在、再稼働している原発は8基に過ぎず、今後既存の原発が老朽化していくことを踏まえると、政府の目標達成には必然的に新規の原発建設や建て替えが必要となります。それにもかかわらず、改定案では今後の新規の原発建設や建て替えには触れておらず、老朽化した原発の再稼働だけで2割以上の発電を賄おうという、現実性や安全性の観点から疑問符のつく、問題先送りの改定案となっています。

◆エネ政策は徹底した「現実主義」で
 これまで、私のエネルギー政策の基本的方針は、徹底した「現実主義」にあります。エネルギーは、経済や国民生活のインフラであるとともに、国の安全保障とも密接に関わる国の重要政策です。それゆえ、「原発推進」対「原発反対」といったイデオロギーの対立のような議論にしてはならず、政治が覚悟を決め、冷静に現実を見据えた責任ある議論を行って行く必要があります。

 仮に原発を維持するのであれば、再稼働や、新増設をどうするのか、そして、核のゴミ(バックエンド)をどうするのか、その具体的方策に向き合わねばなりません。また、自然エネ推進にしても、その導入のためのインフラ等の費用負担をどうするのか、天候によって変動する電源をどう活用していくのか等々、ひとつひとつの課題に向き合わねばなりません。

◆現実的な脱原発依存
 福島第一原発事故以来、私は、「現実的な脱原発依存」を進めるべきと繰り返し述べてきました。自然エネは、昨今、国際的にも、導入価格が下がり、主力電源としての地位を築きつつあります。

 一方、我が国では、送電線の容量等の問題から、特に東北北部地域や北海道の風力導入が遅れるなどの深刻な問題が生じています。送電線の建設には多額のコストと年数がかかります。日本では「まず送電線整備→自然エネ導入」との考えがこれまで取られてきましたが、欧州では、費用と時間がかかる送電線の建設ありきではなく、「運用」すなわち、今ある送電線をIT技術などを駆使していかに上手く使うか工夫するという政策が進められています。

 政治が「覚悟」を決めれば、現状に囚われることなく、エネルギーに関わる産業界や技術者の英知を結集し、まだやれることは数多くあるはずです。その「覚悟」とリーダーシップが今の政権には見られないことに私は歯がゆさを感じます。

 

森ちゃん日記「地元による防災意識」
 5年に一度開かれる国内外の消防・防災の最新技術を展示する東京国際消防防災展2018が先日開催されました。

 身近な災害グッズから消防車両までが展示され、専用ゴーグルに映される立体的な映像から災害を疑似体験できるVR防災体験車などが注目されました。また、2017年3月の改正道路交通法の施行により、普通免許で運転できる消防ポンプ自動車も3.5t未満に引き下げられたことに対応する、国内初の小型ポンプ車が発表されるなど、人手不足が問題となりつつある消防団の活動にも関心が集まりました。

 いまや、火災だけでなく災害時の救助・救命など活動の場が広がりつつある消防団ですが、平成元年には、全国に100万人とされた消防団員の数は、現在は85万人となっています。人口減少が進む地方では、消防組織だけの活動では間に合わず災害の対応を消防団に依存している地域も少なくありません。一方で、都市部では勤務先が地元地域と離れた場所にあるため緊急時に出動できないなど、他府県へと通勤する消防団員への負担も大きな壁となっています。自主防災におけるIT活用と若者確保の視点からも、県外就業率が高い奈良県において、地元のまちを地元で守るため、奈良で働く場の創出こそ地域を守ることへと直接繋がると強く感じています。

第838号 覚悟なきエネルギー政策