第827号 問われる「政治家の矜持」

2018年3月24日 (土) ─

 財務省による森友学園関連の公文書改ざん問題について、政権は「官僚の責任」として逃げ切りを図っています。この問題を通じて、政治家の責任の取り方・政治家の矜持(きょうじ)が改めて問われていると感じます。

◆「政治主導」と「責任」
 戦後の55年体制・自民党の長期政権のもとで、与党政治家は地元への利益誘導や選挙対策に集中する代わりに実務を官僚に委ね、官僚は終身雇用のキャリア制度の中で与党族議員と深い関係を構築し、信頼とポストを得ていくという、「共依存」の関係が構築されてきました。

 そのような「族議員」「利益誘導」が跋扈(ばっこ)する政治や行政を是正し、政治と官僚の悪しき「共依存」の関係を断ち切るためには、情報公開や国会による行政のチェック機能の強化を進め、政治家が責任をもって主体的に立法と政策立案をリードすること(=政治主導)が必要です。

 挫折に終わったものの民主党政権はそうした「政治主導」への挑戦であり、それは時に長年築き上げられた既得権や省益と対立するものでした。

 2012年の自民党への政権交代後、安倍政権もまた「政治主導」を掲げましたが、その実は歴代自民党政治の持つ「共依存」の体制を温存したまま、新たに内閣による官庁に対する人事の統制を組み込み、権力集中を進めるものでした。

 政治主導による「権力集中」は、適正なチェック体制、そして「権力」を負託される政治家が「責任を取る」仕組みが働かなければ、単なる「独裁」と化します。その意味で、政治家の「責任」は「政治主導」と表裏一体にあります。

◆ 求められる「政治家の覚悟」
 政治家として私が大切にしている言葉の一つに、聖武天皇の「責めは、われ一人にあり」があります。聖武天皇は、天変地異や風水害、飢饉(ききん)、疫病などの災厄が起きたとき、為政者として全ての責任を背負われた。私はこれこそが政(まつりごと)をつかさどる者の姿勢だと信じています。

 今回の改ざん事件について、本来財務省トップとして責めを負うべき麻生財務大臣が、まるで他人事のように佐川前国税庁長官に責任を負わせ、自らは追及から逃れようとしています。

 このような姿勢は、「政治主導」のもと、政治家に求められるはずの「責任の取り方」として大きな問題があると考えます。そして何より、政(まつりごと)を国民から負託された政治家としての姿勢・覚悟として大いに疑問を持たざるを得ません。

 文書改ざんについて、文書の内容に目が行きがちですが、むしろ重要なのは本来あるはずの決済文書の「表紙」です。そこには組織の中で誰までが決済したかの記録があるはずです。財務省はその「表紙」をまだ公開していません。

 「誰が主導」し「誰の」「何を」守ろうとしているのか。真相の解明と、そして政治の責任の取り方。今回の事件を通じて政治家の矜持が改めて問われていると感じます。(了)

 

森ちゃん日記「教育の地方分権化」
 時代の移り変わりが激しい現代社会では、働き方や教育に求められる価値観すら変わりつつあります。新たな技術開発が急がれているAIの人工知能によって、これから先の日本ではどんな世界が広がるのか教育の視点から考えてみると、一斉に足並みを揃えて一つの答えを求めてきた情報処理型の教育が見直される時代へと変革していくのでは、と感じています。

 かつて、江戸時代には、地方において藩校が置かれ、地域による独自の教育が根付いていました。各地で伝統と歴史が育まれ、規範によって重んじられる価値観が存在し、いま叫ばれている地方分権の教育版が確立されていたことに気付かされます。今では、その価値観が「県民性」として残り、さまざまな観点からテレビなどで取り上げられることがあります。

 20年後には、今ある仕事の半分がなくなるとも言われる中、AIなどの新テクノロジーが担う情報処理能力が飛躍し、あらゆる分野で活用されれば、既存の職業もさまざまに変化し、求められる人材像にも変化が現れてくることが予想されます。

 教育における独自性と希少性が重要度を増す中で、今まで推し進められてきた情報処理型社会へ向けた教育から、あらゆる情報を編集する能力を養う教育へと変わり、さまざまな答えに柔軟に対応できる人材が求められていくと考えています。

 奈良独自の取り組みとして、奈良市の一条高校では、想像性を重視し、休日に「よのなか科」と呼ばれる授業を通じて、保護者や地域の住民が参加できる取り組みを行っています。特に全国でも珍しく、授業で生徒全員がスマートフォンを活用し、授業中の生徒からの回答を瞬時にデータ化することで、生徒自身が教室で議論されるテーマについて、小さな社会として教室を捉え、全体の統計を理解しながら授業を進める事が可能となりました。

 働き方改革で議論される、少子高齢化による人手不足で台頭するテクノロジーを、地域独自の教育で活用していく教育改革の行く先に期待したいです。

第827号 問われる「政治家の矜持」