第826号 権力集中による森友問題

2018年3月17日 (土) ─

 財務省が森友学園との国有地取引に関する決裁文書を書き換えていたことを認めました。

◆国民欺いた政府
 森友学園問題は、国有地取引について、「政治の何らかの関与によって」、巨額の不正な値引きが行われたのではないかという疑惑です。それに関して国会に提出された資料が改ざんされていたということは、疑惑に対する今までの政府の説明・答弁の信用性を失わせるものであり、国会、ひいては国民全体を冒涜するものです。

 また、昨年の衆院総選挙は、森友学園問題を含めた公金の使われ方が大きな争点でした。与党は選挙で森友学園問題の潔癖を主張していましたが、国民に文書が改ざんされた事実が隠されたまま選挙が行われていたことは、選挙で得た信任の正当性を揺るがすものです。

◆「官僚の責任」で終わらせてはならない
 国民を欺いた重大事案にもかかわらず、政府や与党内には、今回の改ざんを当時の事務方の責任者であった佐川宣寿前国税庁長官の指示で行われたこととして幕引きを図ろうという動きが見られます。

 しかし、政治の関与が疑われ、総理の身辺にまで疑惑が及んでいた本件について、当時、財務省理財局長だった佐川氏の独断で全ての改ざんが行われ、隠ぺいされたというのは不自然です。問題を官僚の責任にすり替えてはなりません。佐川氏の国会招致は当然として、文書改ざんと、それとセットになった土地の値引き売買のプロセスに関与した人物を国会に呼び、証言を比較して矛盾が無いかを一つ一つ検証して真実を解明していく必要があります。

◆問題は「権力の集中」
 今回の改ざんは、財務省の組織に問題があるとして、歳入庁を新設するなどして財務省を解体するべきだという意見も出て来ています。しかし、私は単に省庁の組織を組み換えるだけでは今後も同じ問題が繰り返されるだけであると考えています。今回の事案は、「権力の集中」とそれによる弊害を是正するシステムの欠如、ひいては、この国に内在する中央集権的な思想の是非そのものが問われていると感じます。

 つまり、国政について情報をオープンにして与野党が国会での議論を通じて国民の間にコンセンサスを形成していくというプロセスではなく、与党の長年にわたる長期政権の下、政府と中央省庁が独占的・裁量的に情報を管理・操作し、世論を誘導することで政策を進めてきた我が国のあり方そのものの問題が現れたのが今回の事案だと考えます。

 「癒着」、「隠ぺい」、「忖度」といった不正は、集中する権力が生み出すしがらみに他なりません。

 安倍政権と自民党が目指す政策さらには憲法改正は、このような権力集中の負の側面に対処する観点が欠けているばかりか、むしろ、今までの中央集権をさらに強める方向であることは明らかです。それでは今回のような不正は無くなりません。「権力や情報の分散」「生活者、地域からの政治」を、これからの我が国の進む道として掲げる野党を創り、自民党に対峙していかなければと考えています。(了)

 

森ちゃん日記「今問われる政治主導」
 梅の花も満開を目の前に、これから訪れる春を感じる季節となりました。しかし、心穏やかでないのは、連日ニュースで取り上げられている国会の紛糾した光景を目にするためでしょうか。

 今回の書き換え問題では、官僚による責任か、それとも政治家によって大きな力が働いたのかが大きな焦点となっており、一刻も早い真相究明を望むのは勿論ですが、責任の所在が明確にされない点に、何が本質的な問題とされているのか立ち止まって考えてみたいと思います。現状のままでは、政治に対する信頼は失墜し、いくら若者に政治への興味を呼びかけても、政治家と官僚が国民に見えない形で政策決定が行われているから何も変わらない、と指摘され、政治離れが進むのは目に見えています。求められているのは、国民の代弁者であり、国民によって選ばれた政治家の真摯な行動であると感じます。

 民主党政権が誕生し構築した新たな制度として、予算編成の企画・立案を官邸主導によって決める国家戦略会議と、予算などを国民参加型のオープンな形で精査する行政刷新会議の2つのトップダウン型の政治主導による専門機関が挙げられます。政権交代によって、政党が強大な力を背景に官僚組織と強い繋がりを持ち、部門会議を中心としたボトムアップ型の政策決定の過程が官僚主導で進められてきたことを問題視し、開かれた場で責任の所在を明確化にし、従来の政策あり方に対する課題を解決する目的で制度化したものでした。従来型の政策決定過程では、各省と族議員による既得権益ばかりが優先され、公平性のもとに公の利益を鑑みることが考慮されにくく、今回のような一部の利益のみを追求した仕組みとなってしまいます。政治家が責任を持って、国民に開かれた形で、真摯に説明できる政策決定過程の構築により、責任ある政治への第一歩を進むべきだと感じます。

 政治家が強いリーダーシップを発揮するのと同時に、信頼できる政治家による、信頼ある政治を取り戻すために、政治主導のもとで国会が運営されることを強く願います。

第826号 権力集中による森友問題