第821号 仮想通貨にみる課題

2018年2月10日 (土) ─

 コインチェックが運営する仮想通貨市場から、ハッカーによって忽然と5 8 0億円分もの仮想通貨「N E M(ネム)」が消えました。ハッキング行為であれば犯罪であり、仮想通貨預金者並びに市場運営会社であるコインチェックも被害者となりますここで、仮想通貨市場の危険性と、当該運営会社のずさんな管理体制並びにコンプライアンスの問題が指摘され、金融庁の業務改善命令、報告徴求、立ち入り検査と、続けざまに当局による監視が高まっています。

◆ガバナンスと価値創造
 ハッキング行為を安易に行わせてしまったリスク管理の甘さは、事業者に反省すべき点があり、制度は必要に応じ改善を図るべきものです。一方で、「イノベーション」と「リスク」は切り離すことが
できません。センセーショナルな事件から安易にバランスを失した規制強化の方向に向かい、同社に限らず、社会における新たな価値の創造の芽を潰してしまうことには私は反対です。

 仮想通貨市場は、昨年改正された資金決済法によって法的に位置づけられ、これまでの財務省お墨付きの「全銀協システム」で守られてきた既存の金融機関による送金決済などの集中
管理システムとは異なる分散型システムを利用しています。これにより、いつでもどこでも安価に利用できる決済システムが可能になるという、画期的な意義を持っていました。もちろん、預金者保護の為の事業者登録制度等の法規制が設けられました、昨年の立法時に既に存在していたコインチェックのような市場運営会社には、一定の猶予期間が与えられていました。

 その「猶予期間」に発生した今回の事象は、「新たな価値創造システム」に熟度を高めるまでに、技術革新とガバナンスが釣り合わない状態で動いてしまった結果ですが、今回の一件で、仮想通貨自体が怪しげなものであるものと扱われてしまうのも少し、極端な気もします。

 国や中央銀行のお墨付きによる「集中管理型システム」の既成概念を超えて、世界ではイノベーションによる「分散型のシステム」により、今までの資金決済時に発生していた手数料が限りなくゼロに近づく方向に向いています。今回のNEM(ネム)通貨流出で、分散型システムの崩壊、もしくは行き過ぎた規制強化が進むと、世界の潮流から日本はまたもや遅れ、更なるがら化が進む恐れがあります。

◆規制とイノベーション
 仮想通貨に対する危険性と規制の必要性が叫ばれ、分散型システムによる仮想通貨市場を一気に収縮させてしまう可能性すらあります。これを見ると2007年の「3K法案」と呼ばれた市場を縮小させてしまった法律を審議していたころを思い出します。確認検査の厳格化を求めた建築基準法、グレーゾーン金利廃止の貸金業法、販売規制に繋がった金融商品取引法の三法改正は、社会問題を受けての業法改正でありましたが、結果、霞が関が乗り出したことにより、規制強化が行われ、経済活動そのものを低下させてしまう事態が生じました。

 イノベーションによって生み出される「新たな市場」はリスクを避けては通れません。当然、市場の健全化は図られなければなりませんが、決済システムの手数料収入がゼロになる可能性に怯える既存銀行が再び、国のお墨付きの名の下に旧態依然の「レガシーシステム」を国民に押しつける状況を長らえさせるだけとならないように、イノベーションと規制のバランスに注意を払っていくのも政治の大切な役割だということを強く主張して参ります。

 

森ちゃん日記「進む少子化でこその教育」
 先日、地方紙のコラムで少子化における学校のありに関する記事を目にしました。自治体に一つの小中学校しかない小規模校では、他学年との交流があり、学校が一つの家族のような雰囲気で、教職員の立場からも一人一人の生徒に目が届きやすいメリットが挙げられていました。しかし、デメリットとして、学校生活における子供たちの立場が変わらず、幼少期より少人数のために小学校へあがっても明るい子、静かな子、発言力のある子、大人しい子などの個性や互いの関係性が変わりにくいことが挙げられていました。 私は、1学年1クラスの小学校へ通い、そのまま全員が同じ中学校へ通う環境だったため、前に挙げられた一長一短はよく理解できます。学校の先生が生徒一人一人をよく知っている分、逆に窮屈と感じる子もいたかもしれませんが、私としては、核家族化が進む中では、昭和の下町に住むオッチャンが近所の子どもを叱る、そんな窮屈さも時には必要だと感じています。個性や人との関係性とは、そういった日常生活での繋がりや人間関係でこそ育まれ、何が正しく、間違っているかの本質を身に付けていく事ができるものであり、学校が担う社会的役割も変わってきていると感じました。

 地方では、少ない子どもたちの学び場を地域が支えていかなければいけない時代、少子化で学校が統廃合される中で、教育の効率や職員の人員、予算よりも子ども達一人一人が個性や人間力を身に付けられる環境を地域と連携して作り上げていくことが重要です。

 奈良県においても、小規模校対策として、1学級の児童生徒数が10人前後の県内南部、東部の学校を中心に、タブレットPCなどのICT機器を活用して、異なる学校の教室と連携して授業を行うなど、少人数クラスだからこそできる協働学習に力を入れています。

 今後、地域主体となった街づくりによって、学校のあり方を考えていくことが少子高齢化の解決のヒントだと感じています。地域住民が積極的に教育の現場に参加することで地元の歴史・文化を感じてもらい、地域で未来の宝を支えていくことができるのかが重要です。

第821号 仮想通貨にみる課題