第774号 「天下り」を断ち切れ!

2017年2月4日 (土) ─

 先月、文科省の元幹部官僚が、同省人事課のあっせんで私立大学の教授に就任していたことが発覚しました。

◆温存される天下り
 国家公務員法は、省庁職員による職員やOBの、民間企業への再就職のあっせんを禁じています。今回は、助成金の権限を持つ文科省の人事課が、私立大学に対し幹部職員の再就職のあっせんを行っており、違法行為であることは明らかです。

 しかも、天下りのチェック役である再就職等監視委員会の調査に備え、文科省と大学側とで口裏合わせ用の虚偽の想定問答を作っていたという悪質なケースです。

 これは単に文科省だけにとどまる問題ではなく、他省庁でも同様のケースが疑われています。

◆政官業癒着の構図
 補助金支給などで影響力を持つ省庁が、民間企業や独立行政法人等とつながり、天下りポストを用意させ、政治はそれを黙認する代わりに業界を集票マシーンとする、いわゆる「政官業の癒着」は、既得権の温床であり、公正な競争を阻害する悪習と言われ続けてきました。

 天下りが横行する状況は、本来行政のチェック役を担わなければならない政治の機能不全でもあります。

 自民党を中心とする長期政権では、政策遂行が省庁に丸投げされてきました。その結果、民間企業や独立行政法人に対する官僚の影響力は強まり、癒着の関係が構築されました。

 しがらみのない立場からこうした「政官業の癒着」を断ち切り、既得権の温床を打破することは、私が政治活動を始めた当初から今日までの最重要テーマです。

 政権交代前、私が取りまとめた「天下り根絶法案」は、天下り禁止期間を離職後2年間から5年間に拡大するなど、より実効性の高いものでした。結果、2009年度に1413件だった天下りが民主党政権下の2010年度には733件と半減しました。 しかし、2015年度にはその数が1668件に増加しています。安倍政権の下で、旧態依然とした天下り体質が復活し、温存されている状況といえます。

 こうした癒着を断ち切るためには、何より政治と行政の間の緊張関係、つまり、政権交代によって与党と行政官庁の関係の固定化を避け、常に監視が及ぶ体制を作る必要があります。

 それにはまず、改革勢力を結集させ、政権交代可能な政治的構図を作ることが必要です。現在、選対委員長である私の使命は、選挙態勢の構築ですが、その究極の目的は、政治活動の原点である「既得権の打破」なのです。

◆既得権を打破するために
 官僚OBの再就職自体は、憲法上の職業選択の自由の保障もあり、一律に規制することが困難です。

 しかし、少なくとも、採用プロセスが公正であるかをきちんと把握できる制度は必要不可欠です。また、再就職のプロセスに透明性を持たせ、監視を強化することも重要です。

 政府は、今回の事件に対し、文部科学事務次官を更迭することで実質上の幕引きを図ろうとしている感がありますが、この問題をたびたび繰り返されてきた「トカゲのしっぽ切り」で終わらせてはなりません。

 天下りそのものが持つ構造的な問題を指摘して、既得権打破に向けての取り組みを続けて参ります。(了)

 

スタッフ日記「早春を告げる」
 若草山の山焼きが先日無事に執り行われました。一説によると、若草山を巡る寺社の争いを「焼き払う」ことにより和解させたのが始まりだとのことですが、観光行事としても100年以上も続く古都奈良の伝統行事は、北海道出身の私には大変重みを感じるものでした。

 私たち消防団は、日の入りのまだうっすらと明るい頃に出発式を終え、各配置場所へ向け山を登り始めます。

 約300人もの団員が編上げ靴にヘルメット、手には松明と竹ぼうきを取り、急斜面を登る姿に、これから始まる催事のスケールの大きさをひしひしと感じました。

 私は、所定の配置に着き、45度はある急斜面に構えながら、奈良の夜景を背中に見下ろす形で合図の時を待っていました。

 いよいよ点火の瞬間。各松明から、草地へと火が放たれます。炎は瞬く間に一面へ広がり、周囲3800m、標高342mの若草山はたちまち火に包まれました。山の輪郭をはっきりと写し出し、冬の冷たい夜空をオレンジ色に染める光景は壮大です。

 今年は天候にも恵まれ、各所で4、5mほどの高さの火柱ができ、近づけないほどの熱さに圧倒されるほどでした。

 先輩から「向こうの点きが悪い、山頂へ移動するぞ」と言われ、松明の明かりだけを頼りに、足場の悪い急斜面を四方からの火を避けながら向かいました。熱さと緊張で背中にはびっしょり汗をかいていました。最後は残り火の点検と消火活動を徹底し、下山しました。

 混沌とした世界情勢のなかで、山焼きを通じて人々の平安を願う祈りがこの奈良から世界へ発信されることを祈っています。(特命係長)

第774号 「天下り」を断ち切れ!