第686号 国民不在の日米合意

2015年5月9日 (土) ─

 4月27日、日米両政府は日米ガイドライン(日米防衛協力の指針)の改定に合意しました。30日未明には安倍総理がアメリカ連邦議会で演説し、安保関連法案整備をこの夏までに成就させると明言しました。

◆政府独断の表明
 これまでのガイドラインでは、日米の防衛協力の範囲は日本の周辺に限られるとされてきました。日米同盟は、あくまで日本及びその周辺地域の平和と安全の維持に寄与することを目的としてきたのです。

 しかし、今回の政府合意では、日米防衛協力は日本の周辺に限定されず、日本の平和と安全に重要な影響を与える事態が発生したと認定されれば、日本から遠く離れた中東のような地域においても、自衛隊が米軍の後方支援を行う事が可能となります。世界中で防衛協力を展開できるという点で、従来からの日米同盟の性質を根本的に転換する合意と言えます。

 このような国民の生命と安全の保護に直結する重要な外交的転換とそれに伴う法整備については、国民に対する詳細な説明と徹底的な国会論議が必要です。

 本来、政府間の交渉である外交は内閣の事務とされていますが、憲法上微妙な問題をはらむ今回のような場合には国会における事前の議論が必要です。また、立法は当然国会の専権事項であり、法律は国会審議を経て成立するものであるため、あらかじめ政府が法案成立とその時期を他国に約束すべきものではありません。

 ところが、政府は今回の日米合意を受けて、連休明けにも予想される安保関連法案の国会審議において、国際約束があるのだから、国会でもそれに合わせて法案を整備すべきという、主張を行うことが予想されます。これは国会のもつ立法権を大きく侵害するものです。政府には、外交交渉を理由に、国民の中に反発もある安保関連法案審議を優位に進めようとの意図があると思われますが、そのような国民不在の強引な進め方には断固とした態度で臨む必要があります。

◆情報公開と徹底的議論を
 政府の独断的な政策表明は防衛だけではありません。安倍総理は環太平洋パートナーシップ協定(TPP)について、アメリカ議会演説で、「日米間の交渉は出口がすぐそこに見えている。米国と日本のリーダーシップでTPPを一緒に成し遂げましょう」と述べていますが、TPPの交渉経過や内容はほとんど公開されておらず、国会での実質的な議論が行えない状況です。

 交渉ごととはいえ、我が国の貿易のあり方を大きく転換するTPPについて、国会への情報提供を行わないまま、政府が独断的に合意することは許されません。立法府、そして国民が議論し、判断するための情報公開がなされるべきです。

 このような政府の独断的姿勢に対しては、情報の公開と国会での徹底的議論を求めることで歯止めをかけていきます。4月24日には民主・維新両党で、TPPなどの通商交渉における情報開示を義務付ける法案を政府に提出しました。安保法制整備に関しても、十分な情報提供と質疑時間を要求します。

 もちろん私は質疑の先頭に立ち、立法府としての国会の役割を果たします。(了)

 

スタッフ日記「便利な時代」
 最近は何事もスマートフォンひとつで調べることができる便利な時代です。指先ひとつで地図を出せば、行きたいところまでの交通手段は勿論、その道のり、渋滞予測までも瞬時に調べてくれます。たとえ見知らぬ土地であってもこの機能をフル活用すれば、美味しいお店を食べ歩くことができる、それが私の常識でした。

 先日のゴールデンウィークに北海道から友人が大阪にきました。登山用の大きなバックパックを背負い、右手には行き先を書いた画用紙を持った旧友の姿は、以前よりもたくましく見えました。

 この便利な時代にあえて、ヒッチハイクの旅にこだわっていると友人は話してくれました。計画通りにはいかない、だけどそんな旅先での出会いを大切にすることで、地元の人しか知らないまちの歴史や地元通なお店を知ることができる。人の温かさにダイレクトで触れ、その人を知ることがその土地を知る近道だからガイドブックなんていらない、と。

 そんな友人が提案した大阪観光は、サイクリングで観光地を回らないか、というものでした。電車かタクシーで、と考えていた私には全く想像もしていなかった旅となりました。

 歩くことでまず頭の中の地図が平面から立体になり、風をきる心地よさ、新緑の香り、街の音を感じることでその土地の情報が身体全体に流れ込んできます。車や電車移動ではないため、自然と地元の方の話を聞く機会も多くなり、いままで以上に充実した時間を過ごすことができました。

 物事の視点を少し変えることで、普段は通り過ごしていた大切な何かに気付かされた連休でした。(特命係長)

第686号 国民不在の日米合意