第663号 「看板」政治と対峙する

2014年11月1日 (土) ─

 先週、小渕前経産相、松島前法相の女性2閣僚が辞任しましたが、今回の騒動は、その根底にある、安倍政権の「看板」頼みの政権運営という側面を改めて印象づけました。

◆本質に目を向けない政権
 私が党選対委員長として陣頭指揮をとった7月の滋賀県知事選での自民党の敗北は、「女性」「地方」という視点の欠落によるものだったといえます。だからこそ安倍政権は、来春の統一地方選に向け、この2つのテーマを「看板」に掲げ、臨時国会に臨んだと思われます。

 確かに「女性」や「地方」は今の日本が抱える重要課題です。しかし、政権は、「看板」を掲げるだけで本質をとらえていません。とにかく女性閣僚の数を増やせばいいという「看板」作りに終始した結果が、今回のダブル辞任劇です。今回の辞任劇は、本質に目を向けずに政権運営を続けてきた側面が、象徴的に表に出たとも言えます。もう一つの看板である「地方」に関しても同様です。

◆内容がない「地方創生」
 「地方」について、衆参両院に地方創生特別委員会が設置されはしたものの、中身のある議論が交わされているとは言いがたい状況です。政府が今国会に提出した地方創生の基本法案も、検討組織と戦略策定を定めただけの単なるプログラム法に過ぎないものです。

 最近、石破茂地方創生担当相は「新たな交付金が必要だ」と言い始めましたが、そもそも、民主党政権が導入した、地方の裁量が大きい「一括交付金」を廃止したのは、他ならぬ安倍政権です。今さら交付金が必要と言い出すのには、何か裏があるのではないかと考えざるを得ません。

 では、なぜ自民党は、自ら廃止した交付金の話を持ち出したのか。そして、石破氏の考える交付金と、民主党政権時の一括交付金の違いは何か。

 石破氏の考える交付金は、実は、ソフト事業限定の「ミニ交付金」で、公共事業に関しては旧来の制度、すなわち、中央省庁が使途を定めて交付する「ひも付き補助金」が維持される見通しです。自民党内に跋扈する「国土強靱化族」の圧力に屈し、大きな絵を描いているように見えて、ふたを開けてみれば「ミニ交付金」。それが実態と言えます。総額は100億~200億円程度になりそうですが、その程度の額では地方創生などおぼつかないことは明らかです。

◆「新・一括交付金法案」提出へ
 一方、民主党政権で行った「一括交付金」はそれとは似て非なるもので、地方にとって自由度が高いことが特長です。例えば、道路整備に使われていた予算を学校の耐震補強に使うなど、公共事業も含め、その地域の実情に応じて自由に使うことができるものです。

 民主党は、政権時に導入した一括交付金を、政権運営で得られた教訓を踏まえバージョンアップした形で復活させる議員立法を、今国会に提出します。原案は私が作成しましたが、ごまかしの交付金制度ではない、真の地方創生に資するものだと自負しています。

 今国会も折り返しを過ぎました。本質を見極め、看板だけの政治と対峙し、今国会を「看板倒れ」にしない。それが野党第一党の私達の使命です。(了)

 

スタッフ日記「クリフハンガー!」
 私の家の近くに大山(おおやま)という山があります。

 江戸時代には仲間と連れ立ち、この大山に登るのが庶民の一大レジャーで、「大山詣り」という落語があるくらいですから、その人気の程が伺えます。

 現在でも若い人から年配の方、昨日までオムツをしていたようなちびっこまで、多くの人で賑わっています。とくに紅葉の美しいこの時期は、私も登りたいと思うのですが、なかなかその勇気が出ません。実は遭難しかけたことがあるのです。

 元々私は方向音痴で、地図があっても迷うほどです。大山に何度か登った際も、来た道を引き返せた試しはありません。でも、ちゃんと下山はできていたので、安心していました。

 だけど、その時は違っていました。気づいたら、大きな岩だらけの所におり、見回しても道はありません。遠くでかすかに「ケーブルカーは最終です」というアナウンスが聞こえました。「昼のおにぎり、残しとけばよかった…」こんな状況でも真っ先に浮かんだのは食べ物の事、というていたらくでしたが、既に夕暮れ、季節は秋。風も冷たくなってきました。早く何とかせねばなりません。

 学校にあった登り棒すら登れたことがない運動音痴なのに、意を決して目の前の岩に手をかけ、足をかけ、時には滑り落ちながら、格闘すること数時間。気分はシルベスター・スタローンの「クリフハンガー」でした。ようやく道らしい道に出て、真っ暗な中に中腹の神社の明かりが浮かんだとき、涙が出そうになったのは言うまでもありません。

 登りたいのは山々なのですが、あのときの事を思うと、あんまりにも高い山のように思えて、お散歩気分ではもう登れないのです…。(シズ)

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