第650号 原発汚染水が凍らない 

2014年8月2日 (土) ─

 東京電力福島第1原発の配管用トンネルにたまる汚染水の抜き取り作業が難航しています。

◆福島原発最大のリスク 
 福島原発のタービン建屋から港湾へとのびる配管用トンネルには、今も約1万トン超の高濃度汚染水が溜まったままとなっています。汚染が高濃度で、かつ、海に近い場所にあることから、「福島第1原発で最も懸念されるリスク」(更田豊志・原子力規制委員)とされ、また、事故発生当初、大量の汚染水が海に漏れたルートでもあるため、私も、その危険性を度々指摘してきました。 

 リスクを取り除くため、東電は、建屋と配管用トンネルの接合部で汚染水を凍らせて流れを止め、トンネル内の汚染水を抜き取る作業を進めています。東電は、建屋と配管用トンネルの接合部に、冷却液を流す凍結管と、セメントと粘土をつめた袋を並べ、接合部に「氷の壁」をつくる作業を、4月下旬から開始しています。しかし、3ヶ月たった今も、水が凍ったのは一部にとどまり、氷の壁は完成していません。 

 トンネルの汚染水抜き取りは、原発サイト全体を氷の壁で囲み地下水の流入を防ぐ「凍土遮水壁」設置の前提条件となっており、抜き取り作業の難航は、今後の汚染水対策全体に重大な影響を及ぼす恐れがあります。 

 東電は、汚染水が凍らない原因として、汚染水に「流れ」があり、それが凍結を妨げているとしています。しかし、原子力規制委員会は、流速は大きいところで毎分1~2ミリ程度であり、流れは僅かとして、この説明に懐疑的です。東電は、1日5~10トン程度の氷やドライアイスを汚染水に投入し、水温を下げ凍結しやすくする等の追加対策を行っていますが、極めて原始的なこの方法が功を奏するかは、現時点で未知数です。

◆意思決定プロセスの問題点 
 配管用トンネルに「氷の壁」をつくり流れを止める方法は、東電が社内で検討し採用したものですが、その検討が十分であったのか疑問を持たざるを得ません。23日の原子力規制委の検討会では、東電から、社外も含め熱流動や地盤凍結の専門家など、より多くの専門家を関与させるべきだった旨の反省の弁があったと聞いています。私は、今回の問題の本質はここにあるのではないかと考えます。 

 ディベート技術の1つとして、「悪魔の代弁者」(Devil’s Advocate)という言葉があります。これは、会議等において、多数派に対してあえて批判や反論をする役割を担う人のことを指します。会議では、同調圧力が生じることがあり、反論を述べることが難しくなります。そこで、あえて反論を述べる役割の人をおくことにより、議論を機能させるという方法です。 

 有名な例では、1962年のキューバ危機の際、J.F.ケネディ大統領が、CIAや国防総省が強硬論を主張する中、弟で司法長官のロバート・ケネディに「悪魔の代弁者」の役割を演じさせ、ソ連との全面戦争への突入という選択を回避したことが挙げられます。 

 原発事故対応という未知の作業に取り組む際には、多面的な検討が欠かせません。「役所以上に役所的」と評されることがある東電だからこそ、社内という閉じられた世界での検討だけでなく、異なる立場・観点から徹底的に検証を行う「悪魔の代弁者」型の意思決定プロセスの活用が必要と考えます。(了)

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スタッフ日記「ヒートアイランドを駆け抜ける」 
 東京の都心部というのは案外狭いもので、山手線の東西、東京駅から新宿駅まで直線で結ぶと約6kmしかありません。これはだいたい近鉄奈良駅から菖蒲池駅間と同じ距離です。これだけの中に皇居、各種中央省庁を始めオフィス街、更に意外にも住宅街も数多く存在しています。 

 私の住まいのある新宿御苑近くから国会までは今乗っているスポーツ自転車だと大体13分もあれば到着します。 

 通勤の途中には新宿御苑、赤坂御用地などがあり、その脇を通り抜けるときに感じる爽やかな空気を大変気持ちよく思っているのですが、一旦オフィス街の赤坂や渋谷に道をそれると状況は一変します。 

 何しろ暑いのです。クーラーの室外機から出る熱気が蒸し蒸し、むわぁーっと立ち昇り、まさにヒートアイランド!という感じなのです。 

 真冬の日の出前の寒い中よりもこのヒートアイランドの暑い中の方が自転車に乗るには何倍も辛いものがあります。 

 帰り道ならばどんなに汗をかこうと帰ってシャワーでも浴びて着替えたらいいや、と気楽な気持ちでいられますが、出勤時はそうもいきません。 

 早朝からシャワーを浴びるような場所はなく、しかもすぐ仕事に入れるようスーツに革靴なので、汗まみれではお話になりません。着いてすぐに顔を洗い、車のエアコンを全力でまわして汗を止めようとする毎日です! 

 まさにこれから夏本番、奈良も連日30度越えの日々だと聞いています。しっかりビタミン、塩分補給して楽しい夏をお過ごしください!!(SCハマー)

第650号 原発汚染水が凍らない