第607号 奄美のクロマグロ 

2013年9月28日 (土) ─

 国交相時代に所管していた奄美群島振興開発特別措置法(通称「奄振」)が来年度に時限を迎えようとしている中、かねてより首長からの依頼を受けていたこともあり、閉会中のこの時期を利用して奄美大島に視察に行ってきました。 

 奄美群島は定義により行政資料でもその数はまちまちですが、奄美大島を含む10前後の島嶼で構成されています。その中で今回は大島と加計呂麻(かけろま)島を訪問しました。 

 特に大島海峡をはさんだ加計呂麻島は湾が入り組んでおり、極めて優良な漁場として養殖が盛んにおこなわれているところです。

◆マグロ増養殖センター 
 今回はクロマグロの増養殖に取り組んでいる独立行政法人水産総合研究センター西海区水産研究所奄美庁舎まぐろ増養殖センターに伺いました。 

 マグロ養殖と言えば近大マグロが有名です。2002年6月に和歌山県串本町の近畿大学水産研究所大島実験所で、クロマグロの完全養殖が実現しました。 

 そして現在奄美では近大や水産総合研究センターのほか、多くの事業者がマグロの増養殖研究、開発を行っており、その水揚げ量も日本一です。 

 増養殖センターでは、まず生け簀(す)での餌やりを視察しました。湾内の直径40mの生け簀でマグロに餌を与える様子は圧巻の一言でした。何しろ250㎏のマグロが100kmの高速で泳いでいるのです。餌のサバを目指して水中から飛び出すその瞬間、思わずのけぞりました。 

 しかし、その速さゆえに生け簀のフェンスへの衝突事故も絶えません。250㎏に育った巨大マグロはさすがに力が強く、フェンスを突き破って外洋に逃げてしまうことも少なくないそうです。 

 マグロは一度に1000万~2000万の卵を産むそうで、センターではこれらを採取して屋内水槽で稚魚からの飼育を行う方法を取っています。 

 マグロは高速で回遊することでエラに酸素を送り、呼吸している為、文字通り「止まると死ぬんじゃ」状態なのですが、孵化したての稚魚はわずかの間は睡眠を取るために止まっているそうです。ただ、止まると稚魚は沈んで水槽の底に溜まってしまうので、約半数がこの段階で窒息死します。また、魚食性が高くプランクトンは食さないので、共食いをして残った稚魚も相当数が淘汰されます。

◆いかに多くを成長させるか 
 こうした過程を経て稚魚が成魚になる確率は、現在では自然界の状況とほぼ同じです。ただ、自然界では食物連鎖を保つためにこれでもよいのですが、養殖事業は立ち行きません。いかに多くの稚魚を成魚にまで成長させるかが課題です。 

 現時点では成魚になるのが0.1%ほどだそうですが、5年後の研究成果で1%を目指し、さらにその5年後には5%を目指すことにより、マグロを日本の食卓から失わせない努力が積み重ねられています。 

 マグロの稚魚はそれこそパッと見で1cmほどのメダカのようでしたが、動きは俊敏でその中の出来るだけ多くが外洋を駆け巡る数百㎏のマグロへと成長するよう心から願いをこめました。日本の食資源の確保のための漁業の未来の姿を奄美群島瀬戸内町の加計呂麻島で見た想いでした。(了)

 

スタッフ日記「オリンピックのご近所へ」 
 以前スタッフ日記で書いた話ですが、一人暮らしのアパートにネズミやハクビシンが出没しました。東京なのに、です。 

 部屋の中を駆け回られたり、いつの間にかお米を食べられたりとその頃ですら大変だったのですが、事態は一向に改善しませんでした。 

 7月参議院選挙の最中にはたったのひと月だというのに①枕元のお菓子が違う部屋の冷蔵庫の裏で散乱②ネズミがカップラーメンをかじる音で目が覚める③仕事を終えて帰ってきて部屋の扉を開けたらネズミ3匹とご対面、など、言えるだけでもこれだけの事件がありました。 

 どうにか戦おうと思いましたが、結果はことごとくの惨敗です。遂には根負けし、追い出される形で人生8回目引越しをしました。すごい敗北感です。 
といっても、引越し先は歩いて10分程の所です。使う駅も変わりません。新宿御苑という大きな公園もすぐなので、先日の休みには秋晴れの空の下、近くのデパ地下でお弁当を買って持ち込み、昼寝がてらのんびりとしてきました。 

 そんな便利な場所ですが、大通りから1本入れば昭和の風情を残す町並みが広がっています。その中の1軒、築50年近い木造アパートの2階が新居になりました。 

 そして実はすぐに明治神宮球場や国立競技場が見える、東京オリンピックの会場予定地のご近所でもあります。ニュースを見ているとすごい建物がたくさん出来るようですし、レトロな町がどう変わっていくのか、ワクワク半分、工事や騒音などの心配半分、というところです。今後のスタッフ日記でもレポートしていきたいと思います!(SCハマー)

第607号 奄美のクロマグロ