第513号 民主主義の限界?!
欧州金融危機に対してのEU全体の対応は10月26日のEU首脳会合による決定でとりあえずのめどがつきました。
◆金融危機に対する包括案
目の前のギリシャ危機に関しては第2次支援プログラムでギリシャ国債を保有している民間の金融機関や投資家へどのくらい関与してゆくかが焦点でした。7月に行われたユーロ圏首脳会合では、民間投資家が保有しているギリシャ国債を4つに区分し、いずれも現在価値ベースで21%減価するプランが示されていました。
しかし、今回は元本の削減比率を50%とする、と呼びかける合意がなされただけでした。しかも、この50%は国債の「額面」に対してのものなので、7月合意の「現在価値」の21%減価と比べて、投資家のリスクが高くなったのか、低くなったのか、もしくは同じくらいなのか現段階でははっきりしません。ここは今後詰めてゆかねばならない点でもあります。
そして、最も関心の高かったEFSF(欧州金融安定基金・金融不安に陥った国を支援するために創設された基金)の融資枠再拡充については、EFSFが国債の部分保障をする事と、特別目的事業体(SPV)を創設し、官民の金融機関、投資家の資金を広く取り込んで国債を引き受ける事の2つの方法が示されました。ここでも問題は、EFSFの部分保障で果たして「官民の金融機関」の協力が得られるか、ということです。SPVの発行する債券の内、劣後債(利回りが高いが、高リスク)はEFSFが、優先債(格付けが高く、低リスク)は「官民の金融機関・投資家」が引き受けることを想定していますが、そううまくいくでしょうか。
詳細は11月に確定するようユーロ圏財務大臣会合に要請するということでまだ不透明な部分はありますが、とりあえずは前進したように思われました。
◆ギリシャの混乱と民主主義
ところが、11月1日、ギリシャのパパンドレウ首相は突然これらの支援策について国民投票をする事を明らかにしました。その後、発言撤回が報道されるなど、政府の状況は混乱の極みです。ギリシャの情勢悪化や政権の不安定さが露呈する中、政権が責任を持って判断しようとしないこうした状況について、実は私は民主主義が限界に来ている、または岐路に立っている事を感じずにはいられません。
弱い政権基盤において、大衆討議に近い国民的議論を求めることを理解できなくはないのですが、一方でそのことが欧州全体に与える社会的コストの大きさをよく考えなければなりません。独仏両首脳がパパンドレウ首相の対応に激怒したとの報道を耳にすると、これまでEUを率いてきた努力と苦労を理解しつつも、特に、政権基盤の弱い独などはことさらに反応してしまうのだろう、という想像ができます。
私は国民投票という直接民主主義的手段を否定はしませんが、直接/間接を問わず、民主主義とは相当の(時間も含む)コストとリスクを国民全員が分かち合う覚悟が必要な事を肝に銘じなければなりません。政権運営の困難さから、決断と行動を恐れ、国民に委ねてしまう、というのは民主主義の本来の姿ではないと感じます。
混沌とした時代だからこそ、人類の英知である民主主義について国民全員が覚悟を持って臨み、かつリーダーとしてその先頭に立つ勇気が求められています。 (了)
スタッフ日記「職住接近」
この度、28歳になりました。馬淵事務所に初めて関わったのが19歳だったので、もう9年になります。そして最近引っ越しをしました。大学入学、就職等、数えてみるとこれが人生8回目の引っ越しです。
「窓からの風景がいい」、「忙しくて料理出来ないから台所は狭くてもいい」等、引っ越しをする際はそのときの状況によっていろいろ考えるのですが、毎回共通している条件が1つあります。それは「職住接近」、出来るだけ職場の近くに住むようにしています。
前の日遅くても、次の日早くても、すぐに職場に行けるという安心感がいいのです。都内近隣の方の通勤時間は平均1時間くらいだそうですが、田舎者の私はとてもあの満員電車は耐えられません。
ただ、探すとなるとやはり東京、それも都心のど真ん中。なかなか条件をクリアする部屋が見つかりません。広さ等が同じ条件だとすると家賃は奈良や大阪の倍くらいの感覚です。
それでもなんとか見つけたのが、築48年、今時珍しい「○○荘」という木造2階建てのアパートです。すごい交通量の道路から道一本入るだけで歴史のありそうな閑静な住宅街が広がっており、いやぁ、東京でも探せばこんなのあるんだなぁ、としみじみ。
今回は坂の上なので行きは下るだけ、自転車で14分、帰りは坂をえっちらおっちら上がりながら大体22分くらいで着いてしまいます。今は部屋に寝に帰るだけの生活、日によっては始発終電もありません。ですが、新しい環境、都会の中の古い東京をしばらく楽しんでみようと思います。(SCハマー)