第514号 TPP決着はまだ先

2011年11月12日 (土) ─

 野田総理は11日夜、APECでTPP交渉参加に向け、協議に入ることを表明しました。

 この間、経済連携PT(プロジェクトチーム)総会で計23回、約50時間の党内議論が行われました。

 野田総理の会見は本来10日の予定でしたが、与党・政府三役会議の結果、1日延期となりました。これは、11日朝から衆参予算委で集中審議が予定されており、国会の議論を踏まえて決断したい、という総理の意向を踏まえてのことであると報道されています。

 一方、9日のPTでの結論は「ハワイAPEC に向けての提言」と題し、「政府には(中略)慎重に判断することを提言するものである」とまとめられました。結果的に政府=「総理の判断」に下駄を預ける形となりましたが、私はこのPTの結果については議論のあるところです。

◆懸念されること
 現時点でTPPは交渉参加を表明してから結論を導き出すのに、最低でも数ヶ月を要する工程となっています。12日から始まるハワイでのAPECで参加表明を行うことが日米関係の改善や双方の政権運営にとって望ましいことや、また、今日までの水面下での外交交渉の過程でこのタイミングを外すことはできないとする外務省の言い分もわかりますが、危険水準にある円高や、欧州経済危機のように目の前の危機とは違い、TPPの交渉参加の表明については実は時間的な余裕があります。 そうした観点から、もう一度経済連携PTの結論を見てみると「ハワイでのAPECに向けて」というタイトルとなっており、このハワイのAPECを外すことで提言を受け入れることが予想されました。結局時間をかけたにもかかわらず、中身の話よりも「参加か不参加か」という二項対立の提言と受け止められたのではないでしょうか。

◆日本が取るべき対応
 では、どのような中身とすべきだったのでしょうか。私はこの与党内議論の方向性を、TPP参加交渉も含め、米国の外交交渉を行う際のカードとするような、戦略的な取り組みが当初からPTに求められるべきではなかったかと思っています。米国は議会の圧力を盾に、普天間問題やこのTPPについても厳しい交渉を行ってきます。世界中の国々がタフな交渉の1つの手段として「政府と議会、あるいは与党の対立」をうまく利用しています。言い換えれば、与党PTにおいては、具体的な交渉品目や規制緩和の条件など事細かに詰める作業を行い、それを与党が政府に突きつける、という絵姿を示すべきです。それにより、ある意味「政府も与党との取りまとめに苦労している」というエクスキューズ(口実)と併せて真摯な取り組み姿勢を相手に示すことができるのではないでしょうか。こうした立ち回りの仕方にも、もうひと工夫必要だったかもしれません。

 我々が対峙すべきはもはや党内や国内ではありません。「国益を守る」とは国外からの略奪、はく奪を防ぐことです。私自身は代表選挙の時からTPPについては「慎重に考えるべき」と言い続けてきました。しかし、野田政権は9月の最初の日米首脳会談で、日米関係の維持のためにTPP参加はやむを得ないと判断し、結果、現在の局面となりました。いま、行うべきは、こうした現実の中でいかに交渉を有利に運ぶか、ということに特化したしたたかさではないかと思います。(了)

 

スタッフ日記「Si Puo Fare(やればできるさ!)」
 先日、イタリア映画を観ました。邦題は「人生、ここにあり!」。原題は「Si Puo Fare」。イタリア語で「やればできるさ」という意味です。

 舞台はミラノ。とある場所に労働組合活動家のネロがやってくるところから始まります。その場所とは精神病院の元・患者たちの協同組合。イタリアでは1978年に「バザーリア法」という法律により、精神病棟が閉鎖され、患者は社会の中でケアが行われるよう取り決められていたのです。

 実はネロは少々熱血がすぎていわゆる「左遷」をされて来たのですが、ここでもその熱血ぶりは健在。「みんなで知恵と力を合わせれば、この社会で堂々と生きていくことが出来る」とぶち上げ、皆で事業を起こし、社会に打って出るよう提案します。そこでみんなで話し合って、紆余曲折の末に始めるのが、「床貼り」の仕事なのですが、病院を出て自由に過ごすどころか、様々な症状を抱え、無気力に過ごしていた元・患者たちはトラブル続きです。

 ところがある日、失敗を繰り返して材料が足りなくなるというハプニングがおきます。パニックになる元・患者たち。そこに1人が廃材をぶちまけて、そのハプニングから寄木細工で床を貼るというアイデアが生まれ、彼らの仕事に芸術性が生じると同時に、取り巻く環境が少しずつ好転してゆきます。そして同時に彼らもぶつかり合いながら人間性を取り戻してゆくのです。

 どんな人間だって、どんな事だって「Si Puo Fare(やればできるさ!)」、この物語は私たちにそう優しく呼びかけます。(チュウ)

第514号 TPP決着はまだ先