第491号 原発収束に向けて
総理補佐官就任から二カ月が過ぎました。国交省大臣時代の政務三役と違って、組織を持たないスタッフ職として原発対応チームリーダーに就くことへの戸惑いもありましたが、自らの責任と権限を明確にしながら助言機能を果たすべく取り組んでいます。地元奈良に戻れない中、多くの方から「まぶちさんの今の状況を教えて!」との言葉をいただきます。限りある紙面ではありますが、お伝えしたいと思います。
◆中長期対策チームリーダー
福島第一原発の事態収束は、大きくは「①炉の安定」、「②放射線の除去」、「③封じ込め」の三つのステップがあると考えています。発災当初、水素爆発が発生し、更に最近明らかになりましたが炉内は燃料メルトダウンの状況となっていました。こうした中、統合本部が取り組んできたのは、さらなる爆発を防ぐための水冷却でした。とにかく爆発や再臨界を防ぐためにひたすら冷却機能の回復に取り組んでいたのです。そのうえで建屋周辺に飛散した放射性物質の除去作業が始められました。
また、冷却水の漏えいも明らかになり、その止水や汚染水除去も大きな課題となりました。そんな中、私が補佐官と同時に任命されたのが統合本部の中長期対策チームリーダーでした。これは、上記のような発災後の事態対処とは異なり、将来における炉の封じ込めを前提とした最終処理の検討です。もちろん、海に通じる地下水汚染の封じ込めも必須だと判断し、その施策検討も同時に行っています。
◆メディア対応
対策を検討する統合本部はその後、統合対策室と改称されました。そのうえで東電、経産省保安院、文科省、原子力安全委などがばらばらに行う会見情報を一元化する目的で統合会見が毎日開かれるようになりました。これは、細野総理補佐官が担当することになりました。
従って、統合対策室の広報対応はすべて細野補佐官の担務です。当然、中長期対策チームの内容についても細野広報担当補佐官から発信されることになりますので、私がメディア対応することはありません。多くの方から、「テレビで見ない」とのご意見をいただくのですが、一元化による広報担当の仕事であると私は理解しています。
◆補佐官という仕事
私は、一年四か月、国交省で副大臣、大臣を務めさせていただきました。組織を束ねる長としての仕事は、当然、責任と権限に基づいた判断と指示でありその結果はすべて負うべきものとして職に就いてきました。今回、補佐官としての仕事を引き受けたとき、総理が判断される時に助言する立場として、徹底的に黒子に徹する、と決意いたしました。最終的な判断は総理でありその全てに責任を負う総理が的確に事を進められるよう、検討を行う私の仕事は、大臣時代と違って決して派手さはありませんが、大事な役割だと肝に銘じています。
事態対処とは違う、中長期対策の名の下、炉の封じ込めは、廃炉と同時に人類がかつて経験したことのないような高レベル放射性廃棄物の処理という難題に直面します。それこそ、世界中の英知を結集して取り組まなければ解決されないような課題ではありますが、全力で取り組んでまいりたいと思います。(了)
まぶち@国会「党首討論(トーシュトーロン)」
党首討論は毎週水曜日の午後、衆参両院の国家基本政策委員会の合同審査会にて首相と野党各党首で行うことを原則としています。しかし、本会議や予算委員会などに首相が出席した週は党首討論を開かない事が与野党間で合意されており原則通りには実施されていません。
予算審議と違い、首相も野党党首に逆質問することが認められており、野党はただ政権批判をするだけではなく、討論に際して代案を提示する必要があります。
党首討論はイギリス議会におけるクエスチョンタイムをモデルとしており、1999年7月に国会審議活性化法の成立によって国家基本政策委員会が設置され、同年11月10日に初めて小渕恵三内閣総理大臣と鳩山由紀夫民主党代表によって行われました。これは大臣に代わって官僚が答弁を行うという従来の政府委員制度を廃止し、用意された原稿などを用いず議員同士が直接、自由に討論する事を狙いとしています。
この制度の生みの親は自民党幹事長時代の小沢一郎氏と言われています。党首討論の時間は45分と短く、発言できる野党の資格も院内交渉団体であり党首が国会議員として国家基本政策委員会に所属している事や、連立政権においては首相以外の与党党首は参加しない等、全政党・会派の参加を認めておらず、また、首相の逆質問がほとんど出ない等、予算審議との違いが不明確で制度を生かしきれてないと指摘されています。