第492号 第一原発サイト入域

2011年6月11日 (土) ─

 先週、菅内閣不信任決議案が衆院で否決されました。一方、それに先立ち菅総理は「この大震災に取り組むことが一定のめどがついた段階で」、「若い世代の皆さんにいろいろな責任を引き継いでいただきたい。」と直前の代議士会で発言し、世に「総理の退陣表明」と受け止められました。その後、正確な退陣時期などについての与野党からの発言もあり、紆余曲折、予断を許さないとも巷間言われておりますが、一国の総理が退陣を口にしたとの報道で永田町の空気も変わりつつあります。

 これから、どのような政治状況が生まれるかは現時点でも明確ではありませんが、震災復興と原発事故対処は待ったなしの状況は変わりません。とりわけ、私の担当である原発対応は来たる6月17日のロードマップ2カ月経過の見直しに向けてさらなる検討を重ねています。ただいたずらに時間をかけて、先延ばしにするのではない、実質的な対策の検討・実施を進めてまいります。

◆福島第一原子力発電所入域
 そんな中、サイト入域が決まりました。発災後、福島第一発電所事故現場は厳重な警戒の下、政府側といえど立ち入りは厳しく制限されてきました。発災後3カ月を迎えて大きなリスクイベントの可能性は減ったとはいえ、炉心が安定冷却の状態でない限り、現時点においても災害継続の状態であることは否定できません。こうした中で、日々厳しい作業環境を乗り越えて従事する現場の皆さんの安全を確保しながら、対処策を検討し提言していくのが私たち中長期チームの役割でもあります。だから、何よりも現場での確認が重要になります。サイトでは1号機から4号機に至るまでの原子炉建屋並びにタービン建屋回りの検討施策の実現性を確認する作業を行うことになります。

◆地下水遮へい壁の境界確認
 まず、チェックしなければならない項目の一つに、地下水汚染の防止と汚染水の海域流入を防ぐ原子炉建屋を取り囲む連続地中壁の境界(バウンダリ)の決定があります。建屋内にある汚染水と地下水が混ざり、そして地下水の流れに沿って海域にまで漏出することを防ぐために、地下にカーテンのような遮へいの壁を造る大工事ですが、重要なことはどこを境界にするかです。また、工法を勘案しながら他の工事との干渉も考慮しなければなりません。ただやみくもに着手すればよいものではありません。

◆カバーリングと耐震補強
 更に確認すべきは、間もなく本工事に入る1号機を覆う巨大なカバーの工事現場です。高線量地帯であるため、できる限りの無人化施工計画を進めてきましたが、まだ冷却中の炉を覆う工事でもありますので、失敗は許されません。これも現地での作業性の厳しいチェックが求められます。またその強度が不安視されていた4号機の燃料プールの補強は間もなく鋼製支柱がプールの底に取り付けられるので、これにて余震による崩壊は防ぐことができるようになります。この4号機では建屋内に入りプール補強施工状況の現認をする予定です。もちろん、高線量下では十分注意し、事故の無いようにしたいと思います。永田町は揺れていますが、現場は今も動いています。現場を一番に考えられる政治家であり続けたいと思っています。(了)

 

スタッフ日記「普通の生活の中の幸せ」
 普通の生活を送れることは、幸せなことです。でも、日々の生活の中では、ついついそのことを忘れがちです。

 十数年前の夏、私は突然ある病気が見つかり入院し、約二カ月間の検査入院の後、手術をしました。おかげさまで手術は成功し、今も健康に生活を送ることが出来ています。
でも病気がわかった時、最初はどうしてこんなことになったのだろう、なんで私だけ。と世界で一番不幸になったような気持ちでした。毎日嘆いてばかりいました。そんな私に、病院の先生方や看護士の方々は、やさしくお世話して下さいました。家族や、友人達も毎日のようにお見舞いにきて、励ましてくれました。

 それまで気付かなかった人の優しさや、自分がいかにたくさんの人に支えられて生きていたのかを知りました。もちろん病気にはならない方がいいですし、またなりたいとも思いませんが、大切なことに気づくよい機会を与えてもらったと思っています。

 人はいろいろな出来事に直面して、おちこんだり不安になったりします。それでも悪いことばかりではないと思います。悪いことの中にもよいことが必ずふくまれていると思います。嘆いてばかりいないで、起こったことをありのまま受けとめて、少しでも良いところを見つけていくことができたら、少し前向きになれると思います。 

 今大震災や、原発の事故により多くの方々が被災され、つらく不安な生活を送っていらっしゃいます。皆さんが一日も早く、安心して前向きに生活ができる日がくることを祈っています。(まーちゃん)

第492号 第一原発サイト入域