第465号 一票の格差

2010年11月20日 (土) ─

 今年7月の参議院議員選挙で最大5倍となった「一票の格差」について、選挙の平等を保障した憲法に違反するとして選挙の無効を求めていた2件の判決が東京高裁であり、「合憲」と「違憲」に判断が分かれました。ただし、合憲とした判決も不平等の実態を厳しく批判し、国会に速やかな改善を促しています。

 参議院選挙における一票の格差是正が国会に求められることになりそうですが、他方で、戦後、日本国憲法を制定するに際し、参議院の選挙制度について
吉田内閣の当初案では「地域別又は職能別に依り選挙せられたる議員」としており、参議院に「地域代表」の側面を期待していたことも明らかです。また、2009年9月の最高裁判決も合憲とする理由として「都道府県が、歴史的にも政治的、経済的、社会的にも独自の意義と実態を有し一つの政治的まとまりを有すること」を挙げ、選挙制度について基本的に国会の裁量に委ねることとしています。地域代表としての側面と一票の格差のバランスを調整する必要がありそうです。

 また、参議院については従来から、「良識の府」「理性の府」「抑制と均衡」といった役割が期待されてきましたが、衆議院のみならず参議院でも二大政党化が進行するに至った今、参議院に求められる役割についても、改めて問い直す必要もありそうです。

 衆議院で二大政党化が進行した原因は小選挙区制が導入されたためですが、参議院でも二大政党化が進行しました。これは参議院の選挙制度に一因があります。参議院の選挙制度は比例代表制と選挙区選挙が組み合わされた制度となっており、96議席が比例代表、146議席が選挙区選挙となっています。選挙区選挙は1人区が29、2人区が12、3人区が5、5人区が1となっています。このうち1人区と2人区は事実上2大政党に有利であり、少数政党から当選することは極めて困難です。つまり、結果としてほとんどの選挙区では2大政党に所属している議員が当選してくることになるのです。

 また、1人区は小選挙区制であり、選挙戦は激しいものとなりますが、一方で2人区はほとんどの選挙区で民主と自民の2大政党が議席を分け合うことになります。このため2人区で2大政党のいずれかから公認されれば当該選挙区民の判断に関わらず、民主・自民の両方が当選する確率は極めて高くなります。一方、3人区や5人区は事実上中選挙区制となります。こう見てくると選挙区によって全く異なる選挙制度が採用されていると言えなくもありません。有権者一人一人の票が平等に扱われることは民主主義の基本です。憲法第14条第1項は全ての国民の法の下の平等を定めています。住む所によって選挙制度や票の価値が変わることは本来、法の下の平等に照らして問題なしとしないでしょう。

 選挙制度の改正は現職議員の当落や政党の思惑が絡み容易ではありませんが、「参議院にどのような役割を期待するのか」という本質論に則り、法の下の平等も勘案しながら、採用すべき選挙制度を吟味する必要があります。(了)

 

スタッフ日記「フリーマーケット」

 ここ数年、春と秋の年に2回妹とフリーマーケットに参加しています。きっかけは、捨てることのできない数々の品物の処分に困っていたからです。回を重ねるたびに値段の付け方や売れ筋の品物、並べ方など工夫をするようにもなりました。

 車いっぱいに荷物を詰めて会場に着くと、待ちかねていたようにお客さんがやってきます。大体最初に来るお客さんは、フリマの達人です。目的の品物をいち早く見つけると他の品物には目もくれず次の店に向かいます。不思議なのは決して新しい物が売れるとは限らないのです。壊れていたり、おまけに付いていた小物などに興味を示す人が意外に多いのにはビックリです。人間は人それぞれの考えがあるように、自分の持つ品物にも好みがあり絶対に売れないだろうと思っていた品物が売れる時はフリマの醍醐味を感じます。

 この間、実家にあった古い食器をならべていると、「これは凄くいいものだから売らないで大切にしなさい」とわざわざ言ってくれた女性もいました。フリマでは、ほとんどの方が値引き交渉をしてきます。ここからが売り手と買い手の駆け引き開始です。でも、もともと使わないから持ってきた物なので結局のところ買い手が有利となります。会話をするせいか、ほとんどの人が「ありがとう」と言って買っていかれます。

 持ってきた荷物が帰るときにグ~ンと減っていると本当に嬉しくなります。

 でも、毎年2回もしているのに一向に減らない我が家の不用品。家の中も私自信もすっきりとダイエットしたいものです。(エバ)

第465号 一票の格差