第464号 不動産と成長戦略

2010年11月13日 (土) ─

 11月2日、国土交通省に「不動産投資市場戦略会議」が設置されました。利用されずに半ば廃墟となったビルなど、都市が老朽化(歴史的町並みを保存するなどの例外はありますが)することでその魅力が失われれば、都市としての競争力も奪われていきます。特に大都市は、これまで国の成長の牽引役としての役割を果たしてきました。ソウル、シンガポール、上海、等のアジア都市は国を挙げて競争力向上の取組みを推進しており、国としての都市戦略がなければ、少子高齢化もあいまって東京でさえ活力が失われ、国の成長の足を引っ張ることになりかねません。

 日本の不動産の市場規模は2300兆円とも2400兆円ともいわれています。日本の不動産のうち事務所、店舗、工場などの法人が所有する不動産は約490兆円、このうち賃貸オフィス、賃貸商業施設などの収益不動産は約68兆円、このうち証券化された不動産が約25兆円、その中でJリート(日本版不動産投資信託)は3兆円から7兆円に過ぎません。米国リートの時価総額が2008年4月時点で34兆円であることを考えると適正な規模とは考えられません。またリーマンショック後、アジア諸国はV字回復し欧米市場も底を打っているのと比べると日本の低迷は際立っています。例えばJリートは低金利の現在でも3%から6%程度と相対的に高い分配利回り(株式における配当利回りに相当)を期待できる商品であるにもかかわらず、市場は低迷したままです。

 不動産投資市場が成長しない理由はいくつか考えられますが、長期資金とリスクマネーの供給能力不足、特に現行金融システムにおける需給のミスマッチが一つの理由として挙げられます。これは銀行からの融資など間接金融に過度に依存した日本の不動産開発における金融システムも背景としてあります。銀行の資金調達は期間が短い預金である一方、運用は長期のローンであり、期間のミスマッチが存在するのです。デベロッパー等はリファイナンスできなければ開発・運用は行き詰まってしまいます。また、このような資金供給能力に不備がある不動産金融市場の下では投資家は運用会社の資金の調達能力にしか注目しなくなり、運用会社の独自性は発揮されません。

 これらの金融の問題を解決しなければ都市の魅力を高めるためのプロジェクトは動かず、日本の経済も活性化しないでしょう。アセットファイナンス(不動産証券化などの資産担保型金融)などの市場型間接金融や株式・債券などの直接金融による資金供給を制度的に担保し、これに内外の資金を呼び込む総合的な方策が求められます。

 不動産投資市場戦略会議では、不動産投資市場全体を見据えたグランドデザインの見直しを進め、短期的な課題に加えて長期的な展望をもった戦略を議論することになります。不動産投資市場の活性化は内外の民間資金の活用によりなされるものであり、財政出動によらない経済対策となります。借金が1000兆円を超える現下の日本の状況を考えると成長にとって不可欠の施策と考えられるのです。(了)

 

スタッフ日記「天気予報DE考える」

 10月は20日ほど衆議院議員の補欠選挙の応援に行ってきました。北海道です。

 大体ひと月くらい季節が進んでいるとは聞いていたものの、行ってみたら朝晩は4~5℃、寒い日は最高気温ですら10℃以下の「真冬ではないですか!」と言いたくなるような気温で、冷え性の私としてはなかなか処しがたいものでありました。

 そんな中、気がついたことがあります。朝のニュース番組、特に民放の全国ネットの番組では、各地のお天気情報の前に東京のスタジオ付近からお天気お姉さんのリポートが入ります。
ある朝のリポートはこんな具合でした。「現在の渋谷の気温は15℃、今日は20℃までしか上がりません。肌寒い一日です。」

 私は思わず「いやいや、20℃もあれば万々歳でしょ。こっちなんて10℃以下だし!」と手を止めてテレビに突っ込みを入れてしまいました。そんな話をしていたら、地元のボランティアの方に言われました。「そうよ~、私たちは毎回テレビを観ながらそう思ってるのよ。」

 ずっと南関東で生まれ育つとテレビはいつもキー局なので、そんな所に違和感が存在しているなんて思ってもみませんでした。お天気リポートだけではなく、新橋のサラリーマンインタビュー、渋谷の若者インタビューも私にとっては当たり前です。でも、日本の中には「そうではない人」の方が圧倒的に多いはずで、些細な事ながら「ちょっとマヒしているかもなぁ」と思った次第です。 (シズ)

第464号 不動産と成長戦略