原発再稼働統一見解について

2011年7月11日 (月) ─

 政府は原発再稼働に関する統一見解を発表した。これは、さすがに厳しい意見を言わざるを得ない!

 統一見解の【現状認識】については特に、疑問を強く持つ。見解では安全性の確保について、今日までのあり方を一切反省せず、肯定する言葉がいきなり続いているのである。いわく「現行法令にのっとり安全性の確認が行われている。」「従来以上に慎重に安全性の確認が行われている。」等々。

 残念ながら、今回の見解には福島第一原発事故を踏まえた反省はどこにも見られない。

 原発の「安全」という言葉について、福島第一の事故前後で全く意味が異なっていることを認識すべきである。特に、福島第一が収束になかなか向かわない中、なぜ他の原発を再稼働させるのかという国民の当たり前の疑問を真摯に受け止めるべきだ。

 事故の原因はなんだったのか、事故前の安全対策及び体制のどこに不備があったのか、発災後の事故対応についてどこが問題だったのか、ということを国民の前に明らかにし、反省することからスタートすべきである。

 反省無き【現状認識】、さらには「国民、住民の十分な理解が得られているとは言い難い」と国民の理解不足を【問題点】としているこの「見解」は、依然として国民の認識と大きく異なっていると言わざるを得ない。

 更に、【解決手法】についても課題が残る。評価の関係者は原子力安全委員会、保安院、事業者の三者でしかない。原子力村と称される構成員の三者で評価した結果で安心する国民がどれだけいるのだろうか。

 確かに現時点では制度上、権限を持つのは保安院。しかし、今後評価体制をどのようにするのかは中長期的に課題としなければならない。

 評価手法、評価の結果を客観的に監視する当事者でかつ責任を持った機関を設置するとともに、その結果について、やらせのない手法でパブコメなどを実施すべきである。

 また、再稼働に関して国民が懸念を抱いている点は、立地条件、形式、老朽化の状況などに応じて、当然原発ごとに異なる。このため、全原発一律の評価項目、評価手法とせず、各原発毎の特性を考慮するほか、評価実施項目、手法について、最低でも立地都道府県から評価実施前に意見を聞く必要がある。

 第1次評価についてはどの程度安全の余裕があるのかという「安全裕度」をストレステストにより評価することとなっているが、このことは、既存の評価手法、安全基準による評価で安全だということは既に確認済みであることを前提としている。

 国民は、本当に再稼働させてもいいのか、厳格な安全の確認を求めている。再稼働については、「安全裕度」ではなく、福島第一の反省を踏まえ、安全基準を見直した上で、「安全」そのものを再評価すべきなのだ。

 また、福島第一原発事故が深刻化した原因は、原子炉建屋という安全上重要な施設が被災しただけでなく、タービン建屋や送電線であるなど、それ以外の施設が被災したことが大きな要因となっている。

 今回の1次評価の対象は、安全上重要な施設を主に対象とすることになっているが、発電所内の施設全体、広域的な送電網も対象とする他、非常時の危機管理体制などソフト面も対象とすべきである。

 訴え続けているように、ストレステストでは、安全確保にはならない。もちろん電力危機への認識も重要である。だからこそ、原子力への信頼回復のための安全の徹底が求められている。

 そのうえで、しっかりとした再稼働のためのプロセスを早く示す必要がある。形だけの安全評価ではなく、再稼働を控えた各原発ごとの安全上の課題を早急に整理し、国民や地元が納得する形で対策を行うことが求められている。

原発再稼働統一見解について