ギリシャ危機の実感

2011年9月24日 (土) ─

 ギリシャ危機(デフォルト)がいよいよ現実のものとなりそうな気配だ。

 今回の危機自体は、ユーロ圏固有の問題が根底にあると思っている。通貨統合の結果、財政政策は各国固有、金融政策は各国共通となり、自国に見合った経済対策が打てないジレンマの中で、景気回復が不十分なまま財政赤字が累積し、南欧諸国の国債金利が上昇している。

 ギリシャの10年物国債の金利は現在20%超。欧州では過日EU財務大臣会合が開かれ、ガイトナー米財務長官も招かれた。しかし、ガイトナーの提案は否定され、ギリシャ支援については第二次ギリシャ支援で打ち出された政策を繰り返すのみ、ECBのトリシェ総裁も具体案に踏み込むことはなかった。

 欧州の銀行間市場では、短期資金のやり取りが止まっているという報道もなされており、かなり危ない状況である。

 このままの状況が続くと、ギリシャ破綻が他の南欧諸国に飛び火し、これらの諸国の金融機関と、南欧諸国の国債を保有している独仏伊の大手金融機関の経営危機が表面化するだろう。

 米国の民間部門が発行している資産担保証券(ABS)の6割を保有しているのは欧州金融機関なので、「ギリシャ破綻→独仏伊大手金融機関経営危機→ABS投売り」となれば、米国にもダメージが及ぶ。これは当然ながら米国の資産価格停滞につながる。

 更に、欧州の金融機関はドル建てのCPを発行して短期資金の調達をおこなっているが、このCPの買い手は米国のMMFである。米国のMMFは状況の悪化を見てドル建てCPの購入を減らしているので、欧州金融機関はECBによるドル資金供給に頼り、更に足りない分を手持ちユーロ資金をドルに代えて工面している。昨今の為替レートでユーロが急落しているのはこれらの影響もあると思う。

 欧米の金融機関は以上の形で、密接に繋がっていますので、ギリシャのデフォルトが明らかになれば、欧米金融危機に繋がる可能性が高いといわざるを得ない。

 これを是正するには、

(1)一時的にギリシャを離脱させて債務処理を進め、債務不安を解消させる
(2)ECB及びドイツ・フランス・IMFが更なる財政支援を行うことを表明する

という策しかない。

 市場は口先だけで何もしない現状に失望している。これを打開するような大胆な策を打たないと厳しい状況だ。

 さらに、日本への影響も懸念される。例えば倒産したリーマン・ブラザーズ証券の欧州部門を買い取った野村證券の株価は下落している。金融機関への影響は欧米と比較して大きくないだろうが、株価下落、円高、欧米経済の低迷の影響が日本経済に大きな影響を与えると考えるべきだ。

 このままだと「復興増税・消費税増税により景気が悪化したのは同時期に生じた世界金融危機が原因だ」という話になりかねない。

ギリシャ危機の実感