「イスラム国」非難の国会決議

2015年2月5日 (木) ─

◆卑劣なテロ行為を断じて許さない
 2月1日、過激派組織「イスラム国」と称する「ISIL」は、拘束していた湯川遥菜さんに続いて、後藤健二さんを殺害したとする映像をネット上に公開した。そしてさらに昨日未明、ヨルダン人パイロットの殺害映像がネット上に公開された。

 岡田代表は、既に日曜日の段階で以下のコメントを発した。
○シリアで拘束されていた後藤健二氏が殺害されたとの報に、痛切な悲しみと強烈な怒りを禁じ得ない。
○湯川遥菜氏に続き、後藤氏についても最悪の結末を迎えたことは痛恨の極みであり、ご親族に心より哀悼の誠を捧げたい。
○過激派テロ組織、ISIL(イラクとレバントのイスラム国)による蛮行は絶対に許されず、いかなるテロ行為も容認することはできない。
○政府に対しては、日本国民の保護に万全を期すことを求める。
○このような事態が二度と起こらないよう、今回の事件への対応を検証することが必要である。このため政府にはこの間の経緯について、可能な限り最大限の情報を国民に公開するよう求めたい。

 ISILは国家ではないテロ組織だ。

 故に、行政国家としての対処は防御と自国民の保護に収れんする。テロ組織に対して、事前の犯罪行為の抑止が極めて困難であることは言うまでもない。残虐・極悪・非道の行為は断じて許せず、我が国としても諸外国と連携し、テロ組織による被害を未然に防ぎ、決してテロを許さない姿勢を堅持しなければならない。

 しかし、一方で、このような状況のもと、立法府としての対応は、いかなるものが求められるのか。

◆テロ非難の国会決議
 ISILの邦人拉致事件に対しては、国会で非難決議が行われた。テロ組織の非道な行為に対して立法府として非難決議を国会が行うことは当然だ。しかし今後の国際テロに対する日本国の姿勢のみならず、立法府が国内法整備に関わる事柄を含めて決議を行う場合には、慎重でなければならない。

 例えば非難決議に「国連安保理決議を遵守」すると記せば、場合によっては国内法整備の責任を負うことになりかねない。昨年の9月24日に採択された「外国人テロ戦闘員に関する安保理決議2178」を例とすれば、それにより「渡航又は渡航の企画、かかる渡航に対する資金提供、渡航の組織化、便宜供与等を国内法で犯罪化」することが求められることになりかねない。これは、憲法で認められる海外渡航自由の制限等、私権制限の法整備が安保理決議に基づき求められ得ることを意味する。

 また、「テロと闘う国際社会との連携」と表現すると、立法府として「闘い」に力点が置かれたと解釈される可能性があり、むしろ国連安保理決議の原文にあるように、「暴力的過激主義に係わる取組」に関する国際社会との連携という表現がより適切だ。

 このように、猛々しい言葉に流れがちな状況であればこそ、立法府の決議として慎重さ求められる。また、今後対処に当たる政府においては発信は慎重でなければならないのは言うまでもない。

◆冷静かつ実効的な対応を
 テロ組織への対処は与野党一体となって全力をあげて取り組まなければならない。今回の政府の対応については情報公開と事実の検証は必要だが、現在も危険地域に在留する邦人はISILから標的化されている可能性は極めて高く、今現在も事態は継続中だと考えるべきだ。

 野党として、質すべきは質し、協力すべきは協力し、実効的なテロ組織への対処と邦人の安全確保に努めるべきだ。決して感情に任せることなく、冷静かつ実効的な対処を検討していく。

「イスラム国」非難の国会決議