第853号 総理を選ぶということ 

2018年9月22日 (土) ─

 自民党総裁選は安倍総理553票(得票率68.5%)、石破元幹事長254票(同31.5%)で、安倍総理の勝利となりました。私は党員ではないので選挙権はありませんし、ましてや対峙してきた政権与党の党首選ですので関係ありません。しかし一方で、総理大臣を選ぶ選挙ですから、国民として無関心でいるわけにはいかないと思っています。

◆圧勝シナリオの誤算 
 安倍総理と石破元幹事長の一騎打ちとなった自民党総裁選は、当初より安倍総理圧勝が囁かれていました。選前予想では7対3もしくは8対2で安倍勝利ともいわれ、国会議員の票読みでは、主要派閥の支持を早々に取り付け、また、政敵となる可能性のある岸田政調会長の取り込み、野田総務大臣への抑えつけによって立候補を断念させ、8割方を確保する勢いでありました。

 確かに選挙結果を見れば、国会議員票は安倍総理が329票(81.8%)と石破元幹事長が73票(18.2%)と圧勝でしたが、全国の党員投票結果は一転して拮抗する結果となりました。今回の総裁選挙では議員票と全国党員票のポイント数を405票ずつ同数とする制度になった模様です。 

 従来のような、県連組織に配分する票や県連が総取りとなる仕組みを改め、公職選挙のように党員票を各候補者得票に合わせて配分するなど、オープンな制度になっていると思いますし、この点はかつての民主党代表選挙より党員サポーターや地方議員の声が直接的に反映できる公明正大な制度になっていると思います。そして、この全国党員票は安倍総理が224票(55.3%)、石破元幹事長が181票(44.7%)と、両者が激しいつばぜり合いをしながらの闘いだった様子が見てとれます。

 発表された都道府県別の得票を見てみると、安倍総理が制したのは37都道府県、石破元幹事長は10県でした。しかし、この全国党員票の結果が果たして、巷間言われるような「地方の反乱」だったのでしょうか?

◆地方の反乱か? 
 どの程度の比率を拮抗とするかは、議論のあるところかもしれませんが、55対45の結果は惜敗率にすると82%。通常の総選挙では比例復活も可能な圏内であり拮抗と呼んでも差し支えは無いと思われます。 

 一騎打ちの闘いであれば、勝者から見れば1ポイント相手に取られれば2ポイント縮まることになり、たちまち逆転される可能性のある闘いがこのあたりだと考えて良いでしょう。この観点から見てみると、安倍総理が55%以下の得票率となった都道府県は首都圏を除くと、21道府県になります。更に首都圏内でも55%以下は5県あり、これを勘案すると26道府県になります。もちろん、安倍総理の中央集権的な手法への反発ということで「地方の反乱」と呼ばれる側面はあるとは思いますが、全国的に首都圏も含む6割弱の地域で総理への反発が自民党員内でも拡がっている結果だと思われます。

◆総理を選ぶということ 
 本来ならば、総理を選ぶということになる与党党首選挙が、広く公平な選挙でなければならないのは言うまでもありませんが、政党内選挙と言うことで公職選挙とは違い、法的規制はありません。しかし、与党の選挙には仮に党員でなくても、どのような主張を繰り広げるかを国民として、しっかりと見つめなければならないことを改めて申し上げたいと思います。(了)

 

森ちゃん日記「広域的な災害対策を」 
 先日、条例で定められている奈良市消防局の正規職員412人に関して、その雇用者数が38人少ない体制が常態化している人数不足の現状が問題視されました。職員の平均年齢も41.5歳と高齢化しており、消火活動から災害における救助活動に至る現場で、人口減少に伴う若者の雇用促進の問題としてだけではなく、人命救助に直結する大きな問題として今後の対応が急がれます。 

 県内では、平成26年より奈良市と生駒市を除く、県内11の消防本部が統合され、37の市町村を管轄する県広域消防組合本部が中心組織として各行政と連携を図ってきました。現状として、奈良市は独自路線をとっている形ですが、今後、災害の大規模化と住民によるニーズの多様化の視点からも、奈良県全体として考えた時、広域的な体制が望ましいとされる議論が必要なのかもしれません。 

 北海道地震を教訓に、停電、断水などのライフラインにおける災害対策は、広域的な視点からリスクを考慮する必要があります。他府県に依存度が高い電力供給の県内バランスをどのように維持すべきか、また、浄水場などの水道施設における土砂災害などへの対策の見直しなど、隣接する地方自治体との連携を含めた広域的な新たな枠組みの議論が、時間が許される今こそ必要とされています。

第853号 総理を選ぶということ