第724号 同一労働同一賃金
22日、安倍総理は所信表明演説で、「同一労働同一賃金」に取り組む旨を表明しましたが、その捉え方には注意が必要です。
◆成長を妨げる労働環境
同一労働同一賃金とは、同じ労働に対しては正社員、非正規社員などの雇用形態の区別なく、同じ水準の賃金が支払われることです。基本的人権の1つとされ、EU諸国やアメリカでは労働形態によって大きな賃金格差が生じないように制度設計が図られています。
ところが、年功序列や終身雇用を前提とした賃金制度の企業が多い我が国では、正社員と派遣労働者等に対する賃金を同一に揃えている企業は現状でほとんどありません。
これにより生まれるのは、賃金の格差です。特に非正規の比率が高いのは若年層なので、この格差は消費の減退だけでなく、出生率の低下ともつながり、経済成長を妨げる原因の1つとなっています。我が国の労働者の4割は非正規雇用で、その約7割が年収200万円以下という調査もあることを考えると、この賃金格差は早急に是正しなくてはなりません。
◆消極的な安倍政権の姿勢
しかし安倍総理の演説とは裏腹に、政府与党の取り組みは、極めて消極的と断じざるを得ません。
民主党と他の野党は昨年の国会で、派遣労働者の同一労働同一賃金実現をめざす法案を提出しましたが、与党は、原案の「待遇の均等」という文言を、「均等な待遇及び均衡のとれた待遇の実現を図る」と修正し、可決してしまいました。
一見、微修正に見えますが、バランスが取れていれば良い、という意味の「均衡」という表現では、正社員と派遣社員の同一賃金が確保されるとはいえません。つまり実質的に野党側からの提案の、その最も大事な部分を骨抜きにしたも同然です。
そうした経緯があるにもかかわらず、安倍総理が唐突に同一労働同一賃金に言及したのは、参院選に向けて争点化を避けるのと、有権者へのパフォーマンスのためと考えられます。
◆求められる政労使の合意
政府与党は消極的ですが、民主党は同一労働同一賃金の実現を着実に進めます。その1つの参考となるのがオランダです。
1980年代、失業者の増加と、労働時間の長時間化が問題となったオランダでは、政・労・使の間で協議が行われ、フルタイム労働者とパートタイム労働者の均等待遇や、どのタイミングでどちらを選んでも不利にならない、選択や転換の自由まで保障する改革が進められました。
そして、政府が財政支出の削減と減税に、労働者団体側が賃金の抑制に、使用者側が雇用の維持と労働時間短縮にそれぞれ努めた結果、経済成長と財政健全化を達成しました。
社会環境が違うため困難はありますが、日本の雇用制度の特徴を踏まえながら同様の改革を進めれば、例えば正社員は賃金がやや減少するものの、労働時間が減少し、そして非正規労働者は賃金が上昇するなど、それぞれにとってのメリットが生じます。
こうしたモデルも参考にした上で、かつ政・労・使の合意形成も図りながら、活力ある社会を築くための労働環境の整備を進めて参ります。(了)
スタッフ日記「ひな飾り」
幼いころ、母が急に入院をして、父と兄弟だけでデパートに行ったことがあります。
目的はデパートのレストランで食事をすること。それだけでも非日常で舞い上がったのですが、帰り際に通りかかった催事コーナーで沢山並んだ雛飾りに一気に心を奪われました。
初めて一緒にデパートに来た父への甘えもあって、「買って、買って、買ってー!」と泣きじゃくり、床に寝ころび、大暴れして、粘りに粘りました。やがて父が根負けをして、我が家初の雛段飾りを購入するに至ったのです。
それからは、毎年2月になると雛壇を飾り付け、3月3日の夜に自分で片付けていました。「3日のうちに丁寧にきちんと自分で片づけないとお嫁に行けなくなるよ」と言われていたからです。また、「お雛様を毎年箱から出して飾ってあげないとお嫁に行かないで家に居つく」とも言われました。その話を信じて言われた通りにしていた私は、そんなに早くお嫁に行きたかったのでしょうか(笑)。
なんとなく信じてきた、雛人形にまつわる話ですが、調べてみると「きちんとした娘にしつけたいから、片づけが面倒な雛人形を自分で片付けさせる」「早く幸せになって欲しいから、早く飾りだして、早くしまう」=「早く片付く(嫁に行く)」などのちゃんとした意味がありました。我が家だけのおどし話ではなかったようです。
ですが現在は、家のスペースの問題や余裕の無さから、うちの娘の雛人形は大分前から納戸に入ったままです。だから、娘はまだ家に居座っているのでしょうか?やっぱり迷信であって欲しいと願う、今日この頃です。(チョロ)