私募債スキームの見直し
水曜日の原賠機構法改正案質疑では、民主党の申し入れに沿った法案ということで、申し入れ事項の確認を大臣答弁で押さえることを中心に行った。
しかし、一点だけ、申し入れ事項とは別の観点での質疑を行った。それが、この日記でも記した原賠機構法附則6条2項に関する事項だ。
この附則6条2項は、民主党政権下の国会審議で野党自民党からの要求によって付加されたものである。
附則6条2項(抜粋)
「~当該資金援助を受ける原子力事業者の株主その他の利害関係者の負担の在り方等を含め、国民負担を最小化する観点から、この法律の施行状況について検討を加え、その結果に基づき、必要な措置を講ずる」
一言で言えば、東電の「株主責任、貸し手責任」を二年以内に見直すという規定だ。
原賠機構法の支援スキームによって、東電は債務超過による破たんを免れ、賠償を行いながらも存続することが可能となった。
しかしながら当時、東電の経営陣の退任や役員報酬の減額等はあったが、株主や社債権者、金融機関等の利害関係者は、東電が損害賠償を果たすに当たってのリスクを十分に引き受けていないという強い批判があった。
そこで、この附則の6条2項で「国民負担の最小化」のために「利害関係者」すなわちステークホルダーの負担の在り方について見直し作業を行うことが定められたところである。
しかし見直し検討期限の二年はゆうに過ぎたが、今回の法改正ではここには触れていない。
そのうえで、この「国民負担最少化の為に株主・貸し手責任を問う」、こととは正反対のことが行われているという指摘がなされているのが、私募債スキームだ。
昨年10月に会計検査院が指摘して明らかになった銀行からの東電への融資の仕組み。公債を発行できない東電が、信託銀行に私募債引き受けをしてもらうことにより資金を調達、銀行はその信託銀行に融資するという仕組みだ。これにより、銀行はそれまでは無担保融資だった貸付が信託銀行の私募債発行に対する融資ということで一般担保付社債へと置き換わることになる。
一般担保付社債とは電気事業法37条に定められた電力債のことで、全ての債権に優先する債権だ。つまり銀行は賠償債務より優先する債権を持つことになりリスク回避が可能になる。
この私募債スキームは、昨年の会計検査院の指摘以前に、2012年の7月、河野太郎議員が当時の枝野経産大臣に質問している。賠償債務を劣後させる私募債スキームの実施は、ステークホルダーの責任を果たさせることと正反対になる可能性があり断固阻止すべきと迫った。経産大臣としては民間の個別の融資に対して政府が強制力を持つものではないとの立場であり、政権が変わった今もそれは変わらない。
しかし、その後この私募債スキームは実行され、銀行の無担保融資のうち7264億円が私募債に置き換わった。昨年10月以降は再三国会でも指摘をされ、今年1月策定の東電・機構による「新・総合特別事業計画(以下「新総特」)」では、「今後新規に契約される融資について、できるだけ早期に私募債形式によらないことにするよう、機構及び東電との間で真摯に協議すること」とされている。
この4月末には東電への無担保融資約1040億円の返済期限が到来する。ここで、「新総特」に示されているように私募債スキームを使わせないことになるかどうか、金融界でも注目の集まるところである。
そして、こうした私募債スキームについて大臣として銀行に行わせないようにする、という意思の確認と「新総特」に書かれている「できるだけ早期」とはいつかということを今回改めて質した。
茂木大臣からは、「しっかり履行が確保できるように、国としても厳しく注視をし、また必要な対応をとってまいりたい」との答弁と東電が公社債発行を目指している2016年度末というのも一つの期限ではないかとの僕の問いに「これは一つのめど、タイミングにはなってくるものだと当然考えられると思います」との答弁を得た。
これは、経産大臣として私募債スキームを終わらせる時期を明示した答弁であり、附則の6条2項の本来の趣旨であるステークホルダーの責任を明確にさせていくということをしっかりとやっていくことの方向性を確認する答弁だ。
僕自身は2011年代表選以来、法的整理の必要性を訴えてきた立場だが、あらためてこうした国民負担の最小化のためのステークホルダーの責任を軽視するようなことがあってはならないことを質疑の中でも強く主張したところでもある。
4月末、貸し手責任を負う「4メガ+2信託」の動向を注視していく。