第1067号 「ルフィ」の衝撃

2023年2月11日 (土) ─

 いま世間を震撼させている「ルフィ」強盗の件は、フィリピンにいた「ルフィ」と名乗る主犯格と見られる男ら4人が日本に移送されましたが、さらなる黒幕の存在の可能性も指摘されており、これで一件落着とはいかないようです。

◆逮捕者60人超
 今回逮捕された者は60人を超えるといわれています。関連の強盗は当初14都府県で30件以上とされていましたが、改めて精査すると、さらに広域で多くの事件が発生しているようです。

 もともと「ルフィ」らのグループは特殊詐欺事件(オレオレ詐欺など)に手を染めていましたが、詐欺に引っかかる人が少なくなってきたためより直接的に金銭を奪う強盗に移行したと言われています。

 フィリピンから移送された4人はあくまで指示役で、実行犯の多くは匿名性の高いアプリを用いて募集された「闇バイト」の若者たちで、高額報酬のアルバイトを募集しているので行ってみたら仕事は強盗だったというケースもあるようです。

 「初めまして」の人たちと強盗や殺人を犯す心理は理解しがたいですし、そもそも「闇(=合法ではない)バイト」に応募すること自体がけしからん事ですが、実行犯たちが逃げられなかった背景には、巧妙に個人情報を握られて脅される悪質なシステムがありました。

◆フィリピンの不思議
 今回のケースで特徴的なのは、指示役が海外、しかも入管の収容所にいたことです。

 私たちは脅しといえば対面で、時には暴力を用いながら直接、と考えがちですが、今回は指示役が国外におり、しかも外に出る自由を奪われているのにも拘らず、脅しのシステムが成立していました。

 この背景にはフィリピン行政の深刻な汚職体質があるとされています。実際今回の収容所内では職員にお金さえ積めば刑務所内でも自由に振る舞え、スマホもパソコンも使い放題だったようです。

 容疑者4人は気に入らない者、意に添わぬ者を暴力で支配し、王様のようにふるまっていおり、その様子は黙認されていました。その結果、収容所内で今回の事件に加担した者がまだいるという話もあり、さらなる捜査が待たれます。

 また、近いところでは積水ハウスの地面師事件の犯人や、六本木男性襲撃事件の犯人の元関東連合の男など、多くの犯罪者がフィリピンに逃げ込んでいます。汚職が横行しているうえに犯罪者を迅速に引き渡す条約が結ばれていないフィリピンは、犯罪者にとってまさにパラダイス同然だったのでしょう。

◆警察は放置していた?
 ところで、2年半前にはこの「ルフィ」の件につながる収容所の犯罪ヒエラルキーについて頻繁に通報・相談していた人がいたにも拘らず、警察が黙殺してきたという報道があります。

 もしもこれが本当だとしたら、犯罪の取り締まりという本来業務がないがしろにされていたと言われても仕方ありません。

 証言者は「海外だから捜査できない」と言って警察が取り合わなかった、と話していますが、フィリピンが犯罪者の温床となっているのは前々から知られていることで、警戒心の薄さは厳しく非難されるべきです。

 また、インターネットが発達した昨今では、海外を経由して日本国内で犯罪が行われることも珍しくありません。

 ありとあらゆる手段で法の網をかいくぐり、日々手法をアップデートさせる犯罪者たちから国民を守るためにどうすればよいか、警察だけでなく、我々政治家も本気で考えなくてはなりません。

 

スタッフ日記「誉れ高き天平美人 吉祥天女像」

 最近、よく幼少の頃を思い出します。聞くところによると、歳をとった証拠だということですが、そうでしょうか?

 子どものころ、私の家では何か事ある事に、ご先祖様をお祀りしている仏壇に手を合わせ、お供え物をして、今日あった事を報告し、また感謝の気持ちを伝えていました。いわば、仏壇は家の中心のような存在でした。

 その仏壇も私が小学6年生の時に新しい仏壇に入れ替え、以前より金箔を施した大きな仏壇が備え付けられました。

 古い仏壇はお寺さんがねんごろにご供養した後、お焚き上げとなりましたが、その仏壇には1枚の絵が描かれていました。

 絵の中の仏さまはふくよかなお顔、ぽっちゃりとした優雅な体つき、左手には如意の宝珠を持ち、華やかな衣を身につけていました。小さいながら、綺麗な人が描かれているな、と拝みながらいつも眺めていたものでした。

 成人してから、その絵が薬師寺の「吉祥天女像」というのだと知りました。

 国宝で天平時代の日本最古の美人画、美と幸福の女神とされ、修正会のご本尊として今なお信仰を集めている、その絵がまさしく私が小さい頃に拝んでいた実家の仏壇の絵と全く同じだったなんて、夢の様な気持ちでした。

 縁とは、不思議なもの。幼かった頃に心を熱くしていたものに再び出会う事となり、今も吉祥天女画像の写真を雑誌などで見る度、実家の仏壇との不思議なご縁を感じます。(ムーミンママ)

第1067号 「ルフィ」の衝撃