第1058号 防衛費アップ、必要?不要?
日本代表の大健闘もあり盛り上がっているワールドカップの裏で、臨時国会は10日に会期末を迎え、防衛費の増大と安全保障のあり方が大きな問題として浮上しています。
◆防衛費年間3兆円アップか
今回、岸田総理は来年度から5年間の防衛費について、総額約43兆円を確保する方針を示しました。これは今までの防衛費の1.5倍にあたり、単純に計算すると1年あたり3兆円程度の財源を新たに確保しなければなりません。
国の予算は100兆円超なので、全体の3%程度にあたり、かなりの大盤振る舞いです。消費税1%分の国の税収が、だいたい2兆円強であることを考えても、その巨額さが分かるでしょう。
中国の軍備増強、北朝鮮ミサイル発射など、日本を取り巻く安全保障環境の変化が防衛費増大の理由とされていますが、ここは単に雰囲気だけで突き進むのではなく、財源、軍事情勢それぞれで、前提となるファクト(事実)をしっかりと踏まえた議論が必要です。
◆財源は!って言わないの?
これほどまでの予算確保には、当然ながら財源議論が必要です。
今まで、少しでも減税を主張しようものなら、政府与党から「財源はどうする!」「子どもたちに借金を残すのか?」という猛烈な反論が寄せられて来ましたが、不思議なことに今回、財源が具体化されないまま、とにかく防衛費増額ありきで議論が進んでいます。
国の予算には上限があり、切り分けるパイは限られています。しかも防衛費は、減税や給付が消費を活性化させ、経済成長を促して税収として戻ってくるのとは性質が異なります。
防衛費を大幅アップさせるならば、どこかを削るか、それとも国民負担を増やすのかのリアルな議論が必要になるのです。
ところが岸田総理は現時点で、2027年度に1兆円程度増税する検討を指示したに過ぎず、年平均3兆円の防衛費増額に見合う財源は示されていません。他に歳出改革や、剰余金を活用して財源にするともされていますが、そんなに簡単に兆単位のお金がひねり出せるならば、それこそ減税の財源が無いという議論は成り立ちません。
◆中国軍の実情
軍事的な実務面からも検証が必要です。例えば、今にも中国が台湾に攻めてくると言う人がいますが、戦力を分析するとありえない話です。現状、中国軍は極めて貧弱な海上輸送能力と上陸能力しか有しておらず、長大な海峡をわたって台湾に上陸占領することは不可能なことは専門家には周知の事実です。
中国の脅威を喧伝してきたアメリカでさえ、オースティン国防長官が、台湾への「侵攻が差し迫っているとは思わない」と発言しているのです。これがリアルな見方です。むしろ現実的には、ネットを通じた民意操作など、軍事力を行使しない形でのアプローチに警戒すべきなのが現状です。
◆あおり運転の国防費議論
軍事の世界では常識とされている実情を踏まえず、恐怖を掻き立て、イメージだけで防衛費増額を推進する、これは「あおり運転の国防費増額論」と呼んでも過言ではありません。
私は本当に必要なら防衛費を増やすこと、国防を強化することは必要だと考えていますが、事実に基づかない憶測で、財政との関係で本当に必要な費用を精査もせずに総額だけ増やすことには疑問を持っています。日本にとって必要な防衛費は何か、その精査こそが今後の国会審議で重要です。
スタッフ日記「2022年師走」
11月は各地の紅葉だよりが聞かれたものの、日によっては25度を超えるなどわりと温暖な日々を過ごしていました。
しかし月が替わると急に寒気の到来です。北海道では大雪注意報の発令、札幌など平地でも積雪の便りが届きました。
奈良でも氷点下近くまで温度が下がり、今年初めて車のウインドガラスが凍結しました。近くの田畑では一面霜が降り真っ白に輝きました。
寒い季節の到来です。かつてはスキーシーズンの到来と、信州、北海道かな、それとも海外に行こうかな、などといろいろ計画を立てたものです。でも今はいけません。夜になると寒い寒いと炬燵で丸くなる生活です。
それに引き替え熱く盛り上がっているのが中東カタールで開催されているFIFAワールドカップサッカー、日本の活躍は予選ラウンドでドイツ、スペインを逆転で破り予選1位で決勝に勝ち上がり、連日ドーハの歓喜とマスコミに取り上げられています。
残念ながら決勝トーナメント初戦で前回大会準優勝のクロアチアに延長を含め120分1対1のドロー。PK合戦で惜しくも破れ悲願のベスト8への進出はかないませんでした。夜の0時のキックオフ、終了は2時半を過ぎていました。これで私の睡眠不足も終了です。
しかし、日本のサッカーがここまで強くなったのがと感じさせる大会でした。私も炬燵で丸くなりながら4試合、楽しく力強く応援させていただきました。
次回の開催はカナダ。メキシコ、アメリカ3カ国16都市での共同開催となり、出場国も32か国から48か国と増えるそうです。試合数も増えますが次回こそは、ベスト8以上を目指し、ガンバレ日本!!(スギ)