第973号 原発事故10年を迎えて

2021年3月6日 (土) ─

 3月11日、東日本大震災から10年の節目を迎えます。地震と津波、そして原発事故による甚大な被害は、今なお被災地を苦しめ、復興は道半ばです。

◆福島第1原発の現状
 2月13日に発生した最大震度6強の福島県沖地震は、震災の記憶を呼び起こすものでした。この地震により、10年前に事故を起こした福島第1原発1号機と3号機の原子炉格納容器水位の低下が確認されており、外部への影響はないと説明されておりますが、何らかの損傷が生じている疑いがあります。

 今回の地震で、事故から10年を経てもなお、紙一重の状態にあることを改めて思い知らされることになりました。

 また、福島第1原発では、今なお汚染水が大量に発生し続けており、私が長年効果に疑問を呈し続けてきた凍土遮水壁方式では、根本的な解決にはなり得ないことが明らかになっています。敷地内に敷き詰められた処理汚染水保管タンクも増加を続け、水をどう処理するのかを含めて、汚染水問題の解決の目途は立っていません。

 さらに、事故を起こした原子炉格納容器内の燃料デブリは、ようやく今年中に取り出しを開始するとのことで、最終的に廃炉が完了するまでいったい何十年かかるのか、全く見通せないままです。

◆緊張感欠く原発運営
 問題は廃炉作業だけではありません。昨年、新潟の柏崎刈羽原発では、社員が他人のIDカードを使って中央制御室に不正に侵入する事件が発生しました。しかもこの不正が原子力規制委員会に報告されたのは4か月後のことでした。

 緊張感を欠く東京電力の姿勢もさることながら、事実上骨抜きになっている規制委員会の監視、本来東電に国会で徹底的に説明させるべき重大事案にもかかわらず事態を軽視する政府与党と、原発運営自体が緩みきっている状態です。

◆今だからこそのエネルギー議論
 こうした厳しい廃炉の現実と緩みきった原発運営を、事故10年の今だからこそ、改めて問い直さなければなりません。

 菅政権は、温室効果ガス削減のための脱炭素社会の実現、カーボンニュートラル政策をエネルギー政策の目玉として掲げていますが、心地よい言葉だけが先行し、現実の困難な問題には目を背けていると言わざるを得ません。

 震災10年の節目を迎え、大きな余震も起こった今、現実の危機である廃炉や汚染水処理をどうするのか、2030年度でも原発の発電比率を2割強と見積もる中、再稼働や新規建設、安全のための管理体制をどう考えるのかという、困難な問題こそ先送りにするのではなく、地に足をつけた議論を徹底的に行い、答えを見出していかなければ、日本のエネルギー政策の軸は定まらないと思います。

 私は、この10年間、原発事故当時は与党の立場で首相補佐官として現場対応にあたり、野党となってからは、予算委員会や経済産業委員会で、新規建設は行わないとしながらも一定の原発比率を維持しようとする政府の原発政策の矛盾や、電力会社経営陣の不正事件などを質し、風力発電の強化などを提言してきました。現場対応にあたった身として、事故の教訓を踏まえたエネルギー政策の構築を私のライフワークと捉え、困難な問題を直視し、エネルギー政策の軸となり得る提言を続けていきたいと思います。

 

スタッフ日記 「青天を衝け」

 NHK今年の大河ドラマ「青天を衝け」がスタートしました。2024年一万円札の肖像画が、福沢諭吉から渋沢栄一に代わる人物としてよくご存知だと思います。

 江戸時代末期の名主(農民)の子から武士に取り立てられ、維新後、明治政府の大蔵省にて造幣、戸籍、出納などの政策立案に関わり、退官後、銀行、商工会議所、証券取引所など会社、経営団体の設立経営に関わったほか、福祉事業、医療事業、実業教育、女子教育や理化学研究所の研究事業支援、国際交流、民間外交の実践などにも尽力し、その功績を元に「日本資本主義の父」と称されています。

 2月28日、みずほ銀行のシステム障害が大きく報道され、それも「青天を衝け」放送直後のことでした。たしか現みずほ銀行は渋沢栄一が設立を指導した第一国立銀行の流れを汲む銀行だったなと不思議な思いを感じたものでした。

 議員活動も深川区会議員を15年間、区会議長も務められたそうです。その人気は高く、明治23年7月の第1回衆院選では、立候補していないにも関わらず東京5区で94票の有効票を獲得し次点となったとの話もあります。同年9月には勅選で貴族院議員に選ばれたにもかかわらず、12月の本会議に出席したのみで、以降一切議会には出席せず翌年には辞任したとのこと。また、明治34年井上薫に組閣の大命が下った時、渋沢に大蔵大臣としての入閣を求めたが辞退され、渋沢が蔵相でなければ首相を引き受ける自信がないと辞退し井上内閣は幻に終わっています。 

 色々な逸話を持つ渋沢栄一がどのように画かれるか、一年間大河ドラマを楽しみに見たいと思います。 (スギ)

第973号 原発事故10年を迎えて