第958号 「第3波」への備え

2020年11月14日 (土) ─

 新型コロナの感染再拡大が急激なスピードで始まっています。1日の新規感染者は1500人を超え、夏のピーク時をも上回る勢いです。真冬に向けてさらなる感染拡大が予想される中、われわれはどう備えるべきでしょうか。

◆なぜ検査は広がらない?
 急激な感染拡大を受け、厚生労働省に検査の現状と今後の方針を確認しました。現状のPCR検査は、多くが行政検査で行われています。行政検査の例として、保健所や医療機関に体調不良で相談した方に対し、コロナ感染の疑いがあるとして検査を実施する場合があります。この場合、費用は公費負担となります。

 一方で、無症状などで感染の疑いが一見認められない場合は、無料で検査は受けられず、希望する方は、自費で民間検査を受けることになります。行政検査のキャパシティは限られており、民間検査を利用する場合は2~4万円とされる検査料を自腹で払わなければならないというハードルの高さが、検査の拡大を阻んでいるのです。

◆Go To 検査体制を
 国は、インフルエンザとコロナの流行が重なることが予想される冬場に向けて、検査の最大能力を上げる方針を示しています。現在の検査数の最大能力は11月8日時点で1日あたり79,366件ですが、真冬にかけてこれを1日あたり20万件に上げることを目標にしているとのことでした。

 しかし、最近の実際の検査数は、週の中で最も多い日でも2万件台にとどまっており、検査数の少ない日曜日(8日)はわずか8,410件でした。検査数の最大能力と実際の検査数に開きがあることが日本の特徴で、これでは検査能力は「絵に描いた餅」に過ぎません。

 国は行政検査のキャパシティを考慮し、必ずしも欧米諸国のように検査数を増やせるだけ増やすという方針は採っていません。そこには検査は行政主体で、民間検査は補助的に、という行政優位の発想が垣間見えます。この検査対象を絞り込む基本的発想を転換し、いつでも誰もが検査を受けられる体制を整えることが、感染への不安を和らげると思います。

 そのためには、2万円から4万円かかる自費検査の一部公費負担などで、「Go To 検査」と言えるような支援を整備することが、最も重要だと考えます。

◆楽観論は許されない
 世界的にはコロナ新規感染者、死者は連日のように過去最高を更新しています。確かに日本では欧米に比べ感染者、死者ともに少ないのが現状ですが、それが今後も続く保障はありません。今の状況をもって「日本では大丈夫」とか、「結果オーライ」という根拠の無い楽観的な見通しを持つべきではないと思います。

 また、感染拡大を、市民が街中や店で油断してマスクを外しているから、といった安直な理由と結びつけ、行政としての対応を怠ることも許されません。

 検査の充実はもちろん、経済的犠牲を余儀なくされる事業者への一定の経済的保障措置とセットになった、感染防止の強い措置の法制化等も速やかに検討する必要があるでしょう。コロナはまさに、今ここにある危機なのです。

 

スタッフ日記 「アメリカのフェスティバル」
 先週来、なかなか決まらないアメリカ大統領選挙の開票結果に釘づけになっていました。

 その後、バイデン候補が当選確実と報じられ、勝利宣言も出されましたが、トランプ現大統領は敗北を認めず徹底抗戦の構え、何やらもう一悶着ありそうな気配です。

 この間、街に繰り出して音楽を奏で、踊りを踊り、バイデン氏を祝福する民衆がいれば、トランプ氏のための集計やり直しを求めるデモなどもあり、とにかく大統領選挙が国民に深く根付いている印象です。

 日本では政治の「政」はまつりごとと読み、祭政一致の「祭りごと」から出たことばだそうですが、アメリカ大統領選挙を見ていると、まさに大きな民衆のお祭り=フェスティバルそのものに見えます。日本の選挙と違ってエキサイトする人が多いのも、自分がフェスティバルに参加しているという意識が強いのが原因でしょうか。時々、行動がエスカレートすることもありますが、熱狂的なデモや盛り上がる集会は政治フェスティバルの楽しみになっていると思います。

 ひとり一人が参加意識を持って主体的に政治にアプローチする、それこそが民主主義の姿なのかも知れません。そう考えて今回の選挙を見ると、アメリカの民主主義は決して弱くなっているわけではないと思います。

 アメリカ国民の分断ばかりが注目された選挙でしたが、案外フェスティバルが終わって皆が冷静になれば、新大統領の下で結束していくことも十分可能だと思います。

 穏やかな「祭りの後」が訪れればと思っています。(アタリ)

第958号 「第3波」への備え