第918号 保守主義と消費税減税
29日、私が共同代表を務める消費税減税研究会は、中島岳志東京工業大学教授を講師に招いて勉強会を行いました。
◆政治学から考える消費税
今まで、研究会では経済学や財政学が専門の先生をお招きしていましたが、中島先生は政治学がご専門で、政治の対立軸として消費税をどう考えるべきかについてご講義頂きました。
まず、中島先生は政治の大きな対立軸として、リスクを個人化していくか、それとも社会化していくかを挙げられました。これは、雇用や収入、年金といった生活上のリスクを、個人が自己責任で引き受ける小さな政府を目指すか、それともセーフティネットを充実させる大きな政府を目指すかの対立です。
税との関係で言えば、リスクの個人化は、所得税の累進性を和らげ、富裕層や大企業の税負担を減らしていく反面で、生活に余裕の無い方にも、自己責任・自己負担の名の下に、消費税増税などで負担を求める方向に進みます。安倍政権の経済政策はこれに当たります。
◆保守とリベラルの対立は誤り
そして、2番目に挙げられた対立軸が、リベラルとパターナルの対立です。
リベラルとは、個人の自由に価値を置く思想で、パターナルとは政府による統制や個人への介入の必要性を重視する思想です。ここでのポイントは、リベラル=左翼=革新、パターナル=右翼=保守という構図にはならないということです。
保守とは元来、人間が不完全な存在であることを前提に、互いの意見に耳を傾け、生活を守るために緩やかな変革を求める思想でした。パターナルは逆に、全体主義で国民を上から統制する独裁と馴染む考えです。保守はむしろリベラルに近く、パターナルとは対立します。
数々の疑惑に誠実に答えず、他人の意見には耳を傾けずに、憲法改正により統制的な社会に進もうとする安倍政権は、保守というよりはむしろ、パターナルな性格を持った政権だということでした。
◆無党派層の支持を得るために
野党はこの2つの対立軸で、安倍政権と真逆の方針を採れば、政権交代を狙えるというのが、中島先生のご意見です。日本では、いわゆる無党派層が5割存在し、その多くはリベラル保守で、厳格な自己責任社会を必ずしも望まない有権者です。しかし、野党が現実的な対案を示し切れていない現状では、その層が期待を持って投票するような政党は存在しません。よって、何も変わらないという有権者の諦めから投票率が下がり、その結果、組織票に支えられた与党候補が勝利する構図が続いているのです。
だからこそ、野党は5割の無党派層に響く政策として、庶民の生活を守るための穏健な改革の必要性を訴えるべきです。所得の高い層や巨額の利益を上げる大企業にしっかりと応分の税を納めてもらい、逆に庶民の生活を直撃している消費税を減税するという、リスクを個人に押し付けない再分配の政策を掲げるべきなのです。
経済を上向かせることだけではなく、政治的にも、消費税減税が大きな意義を持つことをあらためて認識した、大変興味深い勉強会でした。
スタッフ日記「節分」
2月3日は「節分(せつぶん)」ですね。節分とは本来、「季節を分ける」つまり季節が移り変わる節日を指し、立春・立夏・立秋・立冬それぞれの前日のことで、1年に4回あったものでした。ところが、日本では立春は1年のはじまりとして、とくに尊ばれたため、次第に節分といえば春の節分のみを指すようになっていったようです。
立春を1年の始まりである新年と考えれば、節分は大晦日(おおみそか)にあたります。平安時代の宮中では、大晦日に陰陽師らによって旧年の厄や災難を祓い清める「追儺(ついな)」の行事が行われていました。室町時代以降は豆をまいて悪鬼を追い出す行事へと発展し、庶民にも定着していきました。
子どもの頃、楽しみにしていた年中行事の一つとして、私も妹達と一緒に豆まきをして、鬼役の父に豆をぶつけていました。自分の年の数だけ豆を食べると病気にならず健康でいられると言われ、その時は自分の分はあっという間に食べ終えて、祖母のたくさんの豆が羨ましかったことを想い出します。
また、太巻きずしを恵方をむいて、一言もしゃべらず丸ごと一本食べ終わると幸せになれるとも言っていました。これは関西地方の一部で続いていた習慣だそうですが、平成10年に大手コンビニエンスストアが全国販売する際に「丸かぶり寿司 恵方巻き」の名前で販売したことで、恵方巻きという名前と習慣が日本各地に広がったようです。
最近、新型コロナウイルスによる肺炎など、心配なこともありますが、これからも健康に幸せにすごせますように。
願いを込めて「鬼は外」「福は内」。2020年の恵方は「西南西」だそうですよ。(まぁちゃん)