4号機の耐震性への懸念について
福島第一原発の4号機の耐震性への懸念がまた最近、示されているという。
僕が補佐官当時、5月末までに、部材の健全性を目視により確認した上で、シミュレーションにより耐震評価を行い、東北地方太平洋沖地震本震と同等の余震が生じた場合でも、理論上の耐震性が確保されていることを確認している。
特に当時、4号機建屋が崩壊しつつある、などという話がネット上にも流れ、「傾きだしているのでは?」などとの問い合わせが殺到した。
あわてて現場では、爆発により崩壊している建屋架構のレーザーによる三次元測量を実施し、元の図面とのひずみまでをチェックし、さすがに崩れているという事実はないことを確認した。
しかし、当時のこの評価はあくまでシミュレーション上のものである上、近づくことさえできないエリアもあり、建屋内の部材内部まで直接健全性を確認できないことから、かなりの不確実性をもった評価であるものであった。
そこで、米国NRC等の専門家の助言を得つつ、鋼鉄製の支柱及びコンクリートにより、4号機燃料プール底部の補強工事を7月末までに完了させた。
これにより、ここ1年程度想定される余震対策として必要と考えられる耐震性は確保されたと考えている。
しかし一方、4号機燃料プールの底部や側壁は、事故発生直後から海水などをプール内に注入した結果、通常よりもコンクリート等の部材の浸食が著しい状況にあり、特に底部のコンクリート破損による水の漏出が懸念される。
4号機燃料プールには、1~3号機の燃料プールと異なり、大量の使用済みではない燃料が存在することから、地震などにより大規模に破損し、冷却機能が損なわれた場合、広範囲にわたる被害を再発しかねないほどのリスクが存在する。
そのことを考えると、4号機燃料プール内の燃料については他の安全な場所への移送を早急に実行すべきだ。もし技術的に早期の移送が困難であり、その実施が何年も先になる場合には、直下型の地震に対するリスクが増大することから、これへの対応を検討すべきである。
具体的には、燃料プール底部の補強工事のような応急措置ではなく、建屋全体の耐震補強を検討すべきだ。
そのころ、考えていたのは燃料プールより下の階について、地下も含めてコンクリートの注入により固めてしまう方法だ。建屋下部の応力を受け持っている部材(建屋側壁など)について、全面的に補強工事を実施することも考えられる。
いずれにしても簡単ではないが、こうした抜本的な対応についても、検討しているのだろうか。